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千葉医学雑誌

千葉医学雑誌一覧
 
千葉医学 71 (1) :1-96, 1995

講座
幕末における千葉県の医療制度に関する考察U:佐倉藩の医療制度改革2
 石出猛史
 
原著
マルチウェルプレート内短期培養によるヒト骨髄造血能の測定
 平澤 晃

リンパ球反応性を持つマウスモノクローナル抗DNA抗体の特異性の解析
 瀧澤史佳

全身性エリテマトーデスの腎組織像と血清C3値を指標としたステロイド療法
 杉山隆夫

小児集中治療室(PICU)における小児外科患児の現況
  江東孝夫 真家雅彦 村松俊範 岡田忠雄 羽鳥文磨 片山正夫

千葉大学医学部附属病院に於ける卒後初期研修の間題点:卒後臨床研修に関する平成4年度医学部4年生に対するアンケート調査から
  田辺政裕 高橋英世

症例
Dihydropyridine proischemiaに関する考察
  石出猛史 豊崎哲也 依光一之 大沼徳吉 並木隆雄 増田善昭 舟波 裕 洪 有錫 沖田伸也 鎗田 正

話題
千葉大学医学部建物内壁に用いられている貨幣石大理石について
前田四郎

学会
第839回千葉医学会例会,第8回神経内科例会
第858回千葉医学会例会,第9回神経内科例会
第877回千棄医学会例会,第10回神経内科例会
第890回千葉医学会例会,第11回神経内科例会
第870回千葉医学会例会,第10回千棄精神科集談会
第893阿千葉医学会例会,第28回肺癌研究施設例会
第5回小児成長障害研究会
第11回千葉糖尿病研究会
第1回,第2回千葉県輸血懇話会

編集後記

 
   
  幕末における千葉県の医療制度に関する考察U:佐倉藩の医療制度改革2
石出猛史  千葉大学医学部内科学第三講座


天保年問に始められた佐倉藩の医療制度改革は,数年を経た後の嘉永に入って見直しが行われた。その内容は,漠蘭融和・医学所における漢方医学の診療開始・種痘事業の開始などである。また,引き続いて蘭医学の修業者も送り出された。医学所では学生が就学に励むように,教授に入門する形式をとった。医学所における診療の開始にあたっては,藩医の若い子弟が積極的に採用された。医学所における診療は,当初は藩士を対象としたものであったが,後には種痘事業の開始に伴って,広く開放されるようになった。
 
   
  マルチウェルプレート内短期培養によるヒト骨髄造血能の測定
平澤 晃  千葉大学医学部内科学第二講座


マルチウェルプレートを用い支持細胞を含む液体培養を行い,個々の骨髄の造血因子に対する細抱増殖を測定し,迫血能を評価する方法を検討した。骨髄単核細胞を、96穴マルチウェルプレートを用い10%FCS加IMDM中で37 ℃,5% CO2下で培養した。この培養に刺激因子としてrhGCSF10ng/ml,rhGM−CSF 100U/m1,rhIL‐3 100U/mlをそれぞれ添加し,造血細胞の増殖を、MTTアッセイを用い5日後に吸光度で測定し,造血因子を添加していないコントロールに対する細胞増殖の比を吸光度の比として測定しResponse Index(R.I)とした。正常骨髄細胞7例の検討では,R.Iの正常値は1.56±0.19(rhG‐CSF),1.74±0.22(rhGM-CSF),1.71±0.38(rhIL‐3)であった。なおこの培養条件でrhGM一CSF添加時に観察される96時間後の3H一TdRの取り込みの増加は,抗hGCSFにより一部中和され,この培養系においてin vivoで予想される2次的なCSFの産生が行われていることが確認された。再生不良性食血忠者の検討では治療前2例ではR.Iはほぼ1.0であり,治療により造血能が改善した5例では,R.Iはほぼ正常に改善していた。骨髄移植後回復期早期患者9例での検討では,CFUGM数は未だ正常に回復していなかったが,R.Iは正常であり,造血因子に対する骨髄の反応は正常と考えられた。その理由としては内因性の迭血因子の産生増加,造血細胞の造血因子に対する反応性の増加が考えられた。このように,本測定法により個々の骨髄の造血因子に対する増殖反応性が簡便に短時間で測定でき,有用な方法と考えられた。
 
   
  リンパ球反応性を持つマウスモノクローナル抗DNA抗体の特異性の解析
瀧澤史佳  千葉大学医学部内科学第二講座


SLEでみられる抗DNA抗体は,DNA,RNA,燐脂質,プロテオグリカン,免疫グロブリンや細胞膜などと多彩な交差反応性を持つことが知られているが,その産生機構は未だに明らかとはいえない。本研究者は,一本鎖DNAおよび二本鎖DNAと交差反応性を有するマウスモノクローナル抗DNA抗体(抗ss/dsDNA抗体)が,マウスT細胞株細胞膜蛋白と特異的に反応することを偶然に見いだした。そこで,モノクローナル抗DNA抗体のリンパ球系細胞への結合性をフローサイトメトリーで観察し,また対応抗原の分子量を求めた。抗ss/dsDNA抗体の多くは,マウスT細胞株,Pre B細胞株,B紬胞株,マイトジェン刺激幼若化脾細胞と結合したが,形質細胞株や非刺激脾細胞に対しては結合活性を示さず,活性化したリンパ球上に出現する分子へ結合するものと考えられた。抗ssDNA抗体は,いずれの細胞に対しても結合活性を示さなかった。この反応は,dsDNAにより容量依存性に抑制され,抗原結合部位を介して特異的に結合しているものと考えられた。また,細胞もしくは抗体をDNase Iで前処置しても結合活性に変化はなかった。Western blottingの結果,抗DNA抗体が結合するEL‐4細胞膜上の対応抗原は46kDの分子と同定された。リンパ球表面上の抗原が抗DNA抗体産生を誘導したり,他の原因によって誘導された抗体産生を協調的に刺激するか否かは今後の検討課題であり,対応抗原のさらに詳細な構造を明らかにすることは,抗DNA抗体の産生機構や病態への関わりについて多くの知見を提供するものと思われる。
 
   
  全身性エリテマトーデスの腎組織像と血清C3値を指標としたステロイド療法
杉山隆夫  千葉大学医学部内科学第二講座


全身性エリテマトーデス(SLE)の生命予後に最も関与する臓器病変はループス腎炎であり,腎組織像,特に予後不良とされる増殖性腎炎の確認が治療上必要とされている。しかし,SLEの診断時におけるWorld Hea1th Organization(WHO)分類による組織型の頻度は不明であり,腎生検の適応もまだ確立しているとはいえない。本研究は,SLEの診断時に増殖性腎炎(V,W型)を予測する因子を検討するため,臨床所見と腎組織所見とを比較し,腎生検の適応につき考察した。また,血清C3値の正常化を目標としたステロイド療法を行い,その予後を検討した。SLE息者139名の診断時に臨床的な腎症の有無に関わらず腎生検を施行した。ループス腎炎のWHO分類による腎組織はI型8.6%,U型32.4%,V型22.3%,W型25.2%,X型l1.5%であった。尿所見陰性群33例のなかにはI型が7例,U型が19例,V型が4例,W型が1例,X型が2例存在した。増殖性腎炎(V,W型)の予測において,持続性血尿(≧5RBC/HPF)の存在は感度,特異度はともに86.4%であり,他の検査所見より優れていた。この結果,持続性血尿を示すSLEは腎生検の適応であると考えられた。血清C3値の正常化を目標としたステロイド療法の結果,死亡率は10.8%であり,5午生存率は94.1%,10年生存率は87.4%,15年生存率は85.7%と良好であった。また,生存者124例で,腎機能不全を示したものは1例のみであり,血清C3値を指標とした治療の有効性が確認された。
 
   
  小児集中治療室(PICU)における小児外科患児の現況
江東孝夫 真家雅彦 村松俊範 岡田忠雄 羽鳥文磨1) 片山正夫1)  千葉県こども病院外科 1)同・麻酔集中治療科


1989年4月,当院で小児集中治療室(PICU)が開棟して以来,1993年12月までの4年9カ月の間に119人の外科患者をICUにて集中治療した。これは全収容患者695人の17.1%を占めた。その年齢分布は,乳幼児が71例と一番多く,次いで,1カ月未満の新生児23例が新生児集中治療室(NICU)と併用利用した。新生児では先天性食道閉鎖症.横隔膜へルニア,胸部疾息,消化管穿孔,腹壁破裂等の重症疾患と先天性心疾患を合併する患児を入院時より収容した。これら新生児患児のICUでの人工呼吸管理は平均13日で,心疾患を伴った症例ほど長かったが,乳児以上の10日に比べて有意に長くはなかった。乳児以上では,上部消化管疾患が一番多かったが,そのうち胃食道逆流現象(GER)26症例のうち22例がPICU治療を心要とした。これは本症例の25例が脳性麻痺(CP),精神発育遅滞(MR)を伴った重症精神運動機能障害児で,原病としての神経疾患のみならず,度重なる嘔吐による誤飲性肺炎,咽頭喉頭の機能異常や,亀背,側彎症による極めてリスクの高い呼吸循環障害を合併しているためであった。このGER症例のICUでの加療期間についてみると,1989年度は33日の滞在期問であったが,1993年度には6日と著しく短縮し術前,術後管理の著明な向上がみられ,これら難治療性疾患の治療過程で他科の重症症例と同様にPICUでの加療が極めて有効であった。
 
   
  千葉大学医学部附属病院に於ける卒後初期研修の間題点:卒後臨床研修に関する平成4年度医学部4年生に対するアンケート調査から
田辺政裕 高橋英世 千葉大学医学部小児外科学講座


 小児外科における卒後臨床研修プログラムを改革するために,医学生の卒後研修に対する意識をアンケート方式により調査した。卒業後の進路はプライマリー・ケアに重点を置いた家庭医を希望する学生(家庭医群)が33%(18/55),将来専門的な医療を行いたいと考えている学生(専門医群)が60%(33/55)であり,千葉大学の医学生は全国的な平均と比較して専門医志向が高かった。希望する初期研修方式は,ストレート方式11%(6/55),ローテイト方式40%(22/55),スーパーローテイト方式47%(26/55)であり,スーパーローテイトを含むローテイト方式が全体の87%を占め,卒後初期研修方式としてはローテイト方式が多くの医学生に支持されていた。この傾向は家庭医群のみならず専門医群においても認められ,専門医群の87%(29/33)がローテイト方式による卒後初期研修を希望していた。卒後,千葉人学において希望する初期研修が受けられると考えている医学生の割合はわずか49%(26/53)であり,その主な理由として千葉大学には希望する初期研修プログラムが無いことがあげられていた。この傾向は外科系希望者で顕著であり,彼等の50%はすでに千葉大学以外の施設での初期研修を考慮していた。将来的に診療,研究に必要な人材を確保する意味でも,長期的な展望にたった、医学生にとっても魅力的な卒後研修プログラムの作成が必要である。
 
   
  Dihydropyridine proischemiaに関する考察
石出猛史 豊崎哲也 依光一之 大沼徳吉 並木隆雄 増田善昭 舟波 裕1) 洪 有錫2) 沖田伸也2) 鎗田 正2)
千葉大学医学部内科学第三講座 1)千葉大学医学部外科学第二講座  2)鎗田病院


カルシウム拮抗薬で治療中の,本態性高血圧症患者3例で心筋梗塞・切迫梗塞を発症した。発症前の血圧のcontrolは,1例は良好であり,2例は不良と推定された。Coronary angiographyは2例で行われたが,1例は重症3枝病変を示したために3枝にbypass手術を,他の1例についてはpercutaneous transluminal coronary angiop1astyを施行した。近年,虚血性心疾患において,dihydropyridine系カルシウム拮抗薬で治療中に,狭心症の増悪,あるいは心筋梗塞を発症したという報告がみられる。発症機序として,血圧の低下に伴う冠血流量の減少と,反射性の心拍数の増加が考えられている。High risk群としては,重症3枝病変例,不安定狭心症例などが挙げられている。このため不安定狭心症例では,β遮断薬との併用が勧められている。自験例においても,重症3枝病変を示した不安定狭心症例がみられた。Dihydropyridine系カルシウム拮抗薬使用中の症例においては,経過中注意深い観察が必要であろう。
 
   
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