千葉医学会 The Chiba Medical Society
千葉大学 千葉大学大学院医学研究院→
千葉大学附属病院→
千葉医学会 The Chiba Medical Society HOME 千葉医学会の紹介 お知らせ Chiba Medical Journal 千葉医学雑誌 医学雑誌関連情報


千葉医学雑誌

千葉医学雑誌一覧
 
千葉医学 71 (2) :97-188, 1995

講座
台所の生化学:その2 癌になりやすい食品となりにくい食品
 三浦義彰 斉田直美 橋本洋子
 
原著
60Co遠隔操作式高線量率膣内照射装置を用いた気管・気菅支腔内照射
 宇野 隆 伊丹 純 有賀守代 荒木 仁 有水 昇 藤沢武彦 山口 豊

ヒト骨格筋・肝臓におけるグリコーゲン代謝の検討:13C‐MRSを用いて
 西川 悟 池平博夫

肝細胞癌のMRI診断:診断能と信号パターンの検討
 加藤 敬 江原正明 大藤正雄 山崎一人

小肝紬胞癌におけるウイルスマーカーと背景因子からみた臨床像ならびに予後に関する検討:HBV陽性肝細胞癌とHCV陽性肝細胞癌の比較
 神谷尚志

膵癌診断における造影X線CTの有用性に関する臨床的研究:特に腫瘤形成型膵炎との鑑別および小膵癌診断のための新たなCT所見の検討
 松浦直孝 税所宏光 山口武人 大藤正雄

症例
胆嚢炎を繰り返し腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した小児胆石症の1例
 越部 融 村松俊範 田中寿一 土屋俊一 山口敏広

海外だより
グラスゴーにて
 児玉和宏

学会
第831回千葉医学会例会,第15回千葉大学放射線医学教室例会
第860回千葉医学会例会,第16回千葉大学放射線医学教室例会
第879回千葉医学会例会,第17回千葉大学放射線医学教室例会

編集後記

 
   
  台所の生化学:その2 癌になりやすい食品となりにくい食品
三浦義彰 斉田直美1) 橋本洋子2) 千葉大学名誉教授 1)佐々木研究所附属杏雲堂医院 2)フリー管理栄養士


魚や肉を高熱にあてた部分には癌原性のあるアミンが生じる。この化合物はDNAと結合して変異をおこす可能性がある。一方,日常の食品の中でも発癌を抑制するものが知られている。ブロッコリー,緑茶,食物繊維などは安全性の高い食品であるが,緑黄色野菜中のβカロチンの発癌抑制効呆は見直され始めたし,ニンニクに含まれる有機硫黄化合物群は発癌抑制作用があるといわれていたが,逆に癌細胞の増殖を促す作用物質もあるという報告もある。これらについての最近の見解を述べた。
 
   
  60Co遠隔操作式高線量率膣内照射装置を用いた気管・気菅支腔内照射
宇野 隆 伊丹 純 有賀守代 荒木 仁 有水 昇 藤沢武彦1) 山口 豊1)  千葉大学医学部放射線医学講座 1)同・附属肺癌研究施設第一臨床研究部門


Co‐60遠隔操作式腔内照射装置を用いた腔内照射(60Co‐HDR)が施行された患者について,局所効果ならびに臨床症状の変化から,本法の気道狭窄,喀血などに対する有用性について検討した。対象は悪性腫瘍による気道狭窄,喀血などを呈した16症例であり,いずれも姑息的治療であった。60Co‐HDRにより,主として線源移動軸外側1cmを線量評価点としたうえで,1回500‐800cGy最低1週間以上の間隔にて計600一2250cGyを投与した。外部照射の併用が11例,レーザー照射併用例と化学療法併用例がそれぞれ5例および3例であった。症状緩和についての奏効率は,喀血が83%(6/7),呼吸苦が38%(3/8),咳嗾が23%(3/13)であった。腔内照射の局所効果は,気菅支鏡所見では評価可能8症例中CR2例,PR5例であり,CTで判定した2例はPRであった。致死的喀血,穿孔などの重篤な副障害はみられなかった。本法は悪性腫瘍による気道狭窄,喀血に対して安全かつきわめて有効な治療法であると考えられた。
 
   
  ヒト骨格筋・肝臓におけるグリコーゲン代謝の検討:13C‐MRSを用いて
西川 悟 池平博夫1) 千葉大学医学部整形外科学講座 1)同・放射線医学講座


天然13C−MRS法を用いて安全性を保ちつつ,人体からカーボンスペクトルの測定を試みた。さらに本法を用いて,ヒト肝臓,骨格筋におけるグリコーゲン代謝の食事,運動などの影響を測定し,臨床応用に向けて基礎的な検討を行った。使用装置は市販の1.5テスラMRIで,送受信には肝臓,骨格筋に合わせ13C用コイルを作製して用いた。対象は健康男子ボランティアである。ヒト肝臓において,脂肪酸アシルチェーンのスペクトルが12.4‐39.3ppmに,グリセロールおよびグリコーゲン(C2‐C6)が53.8‐75.2ppm,グリコーゲン(Cl)が95.6‐l06.3ppm,脂肪酸二重結合が126.0-135.5ppm,クレアチンが158.3ppm,脂肪酸,蛋白,リン脂質などのエステル結合がl72.9ppmに見られた。グリコーゲン(Cl)スペクトルより,肝臓グリコーゲンが食事により上昇しその後除々に滅少していく経過を,また運動により早期の段階から減少する様子をとらえた。グルコース投与例においては肝臓内に取り込まれたグルコースピークを,Cl‐αは88.0,98.8ppmに,C1-βは91.9,l02.1ppmに認めた。これらグルコースから肝臓内でグリコーゲンが合成され,それが時間と共に減少していく過程を追跡できた。骨格筋においては炭水化物ローディング法を用いて,グリコーゲン量の変化が測定可能であった。蛋白中心の食事と激しい運動により一時的に減少するものの,その後の高炭水化物食の投与で除々に増加し,第7日目には施行前の約130%を呈していた。13C一MRS法を用いて,骨格筋および肝臓内グリコーゲンの細胞レベルでの代謝や調節過程を,瞬時にしかも無侵襲に測定できる可能性が示唆された。
 
   
  肝細胞癌のMRI診断:診断能と信号パターンの検討
加藤 敬 江原正明 大藤正雄 山崎一人1)  千葉大学医学部内科学第一講座 1)同・病理学第二講座


 病理組織学的に診断された腫瘍径50mm以下の肝細胞癌76病巣についてMRIの診断能を明らかにし,肝細胞描の信号パターンと関連する要因について検討した。MRIによる肝細胞癌の検出率は,造影CTと差はなく,腫瘍径20 mm以上でほぼl00%であった。MRIによる確定診断能は,全体としては,造影CTとほぼ同等であったが,腫瘍径20 mm以下ではMRIが優れる傾向にあった。T1強調像で高信号パターンを呈する肝細胞癌は,癌部の脂肪化や淡明化,Cu含有量が非癌部に比較して有意に多く,関連が認められた。特に,Cu含有量については,従来金属染色による報告のため,結論がはっきりしなかったが,PIXE分析装置により定量し,信号パターンとの関連を明らかにした。T2強調像の信号パターンは造影CTにおける血行動態や癌の分化度と関連していた。
 
   
  小肝紬胞癌におけるウイルスマーカーと背景因子からみた臨床像ならびに予後に関する検討:HBV陽性肝細胞癌とHCV陽性肝細胞癌の比較
神谷尚志  千葉大学医学部内科学第一講座


小肝細胞癌の臨床像および予後をウイルスマーカー別,背景因子別に検討した。対象は肝細胞癌253例で,腫瘍径3cm以下の小肝細胞癌は176例であった。全症例の平均年齢は58.8±7.6歳であり,男性218例,女性35例であった。HBs抗原をRIA法で測定し,陽性例をHBV陽性とした。HCV抗体が第2世代抗体で陽性,またはPCR法でHCV‐RNAが検出された場合をHCV陽性とした。HBV,HCV両者陽性(BC群)は6例,HBV単独陽性(B群)は26例,HCV単独陽性(C群)は199例,HBV,HCV両者陰性(NBNC群)は22例であった。B群とC群の間には診断時の臨床像,背景因子に違いがみられた。B群はC群に比べて,診断時の年齢が若く,腫瘍径の大きく,並存する肝障害の軽い症例が多かった。また小肝細胞癌に限定した検討でも,AFP値が20ng/ml以下,診断時に単発腫瘤である割合がB群はC群より多かった。男性例と女性例では背景因子に違いがみられた。男性は女性に比べて,飲酒歴,覚醒剤歴,刺青を有する例が多かったが,輸血例の割合は女性の方が多かった。HCVの感染機会としての覚醒剤歴,刺青は男性例および飲酒歴と相関しており,既往歴としての聴取が重要であると考えられた。また覚醒剤歴,刺青を有する例は輸血例と比べて感染機会から癌診断までの期間が長かった。Coxの比例ハザード‐モデルを用い,小肝細胞癌の予後の検討を行ったところ,B群および並存肝障害高度例が予後不良,B群および診断時多発例が再発の高危険群であった。B群とC群ではその臨床像ならびに予後が大きく異なっている事が明らかとなった。
 
   
  膵癌診断における造影X線CTの有用性に関する臨床的研究:特に腫瘤形成型膵炎との鑑別および小膵癌診断のための新たなCT所見の検討
松浦直孝 税所宏光 山口武人 大藤正雄  千葉大学医学部内科学第一講座


造影X線CT(CE‐CT)による膵癌(PCA)と腫瘤形成型膵炎(TFP)の鑑別において,従来の早期相での濃染パターンによる診断に加え,後期相所見および腫瘤径別所見についても検討し,新しい鑑別に有用なCE‐CT所見を明らかにした。さらに小膵癌の診断に有用なCE‐CT所見についても検討した。対象は過去11年間に当科および関連施設で経験したPCA68例とTFP39例である。早期相においてPCAでは腫瘤部が94%淡染したのに対し,TFPでは85%が等染し,腫瘤部の濃染パターンは鑑別に有用であった。しかしTFPの15%はPCA同様淡染し,鑑別困難な症例を少なからず認めた。淡染域内不染部(早期相),点状・線状濃染(早期相),帯状濃染(早期,後期相),濃染(後期相)の5所見はそれぞれspecifityが95%以上でありPCAに特異的な所見であった。これらの所見を加えることでPCAの診断はより確実となった。これら5所見のうち早期相の所見である淡染域内不染部あるいは点状・線状濃染のどちらかを認める場合が20mm以下で13%,21mm以上で80%と腫瘤が大きいほど高率にみられ,診断に有用であった。それに対し,後期相の濃染あるいは帯状濃染の何れかを認める場合が,20mm以下で71%,21mm以上で20%と腫瘤径の小さなもので高率に認められた。このことから後期相における腫瘤部濃染所見は小膵癌診断において有用なCE‐CT所見と考えられた。  
 
   
  胆嚢炎を繰り返し腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した小児胆石症の1例
越部 融 村松俊範 田中寿一1) 土屋俊一1) 山口敏広1)  君津中央病院小児外科 1)同・外科


今回,われわれは腹腔鏡下胆摘出術を施行した6歳女児の胆石症の1例を経験した。腹痛を主訴に来院し,胆石症及び胆嚢炎の診断にて内科的治療を施行した。その後同様の発作を2回繰り返したために,外科的治療の適応となり腹腔鏡下胆嚢 摘出術を施行した。気腹はopen techniqueにて行い,気腹圧は8 mmHgであった。術中特に間題は起こらず,術後病1から経口開始となり疼痛対策も特に行わずに経過した。腹腔鏡下胆嚢摘出術の小児症例への応用は,文献上も各施設で施行されており,大きな合併症は報告されてはいない。しかし,小児用の器具が開発されていないために,器具の操作性等に間題があり,今後の検討課題であると考えられた。  
 
   
  お問い合わせ e-mail : info@c-med.org  

Copyright (C) 2002 The Chiba Medical Society. All Rights Reserved.