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千葉医学雑誌一覧
 
千葉医学 71 (4) :261-329, 1995

総説
尿道下裂の手術術式
 伊藤晴夫

講座
クスリの使い方:その1 クスリの物語 一昔の民間薬一
 若新政史

高分化型肝細胞癌の穿刺吸引細胞診:細胞学的診断にかんする診断基準について
 今野暁男 佐藤恒信 長尾俊孝 近藤福雄

筋萎縮性側索硬化症の頸髄肉眼的形態変化について:造影CT像と病理標本像との比較
 菅宮 斉 得丸幸夫 新井公人 平山恵造

びまん性肺疾息のHigh Resolution CT撮像および表示の適性条件の検討
 松迫正樹

外科侵襲の大きさによる骨格筋蛋白の全身蛋白分解に占める割合
 田代亜彦 山森秀夫 高木一也 森島友一 中島伸之

短報
最近の肥厚性幽門狭窄症の臨床像と治療について
 江東孝夫 真家雅彦 吉野 薫 末吉智博

海外だより
モーターシティーより
 藤本尚也

らいぶらりい
Cardiopulmonary Bypass‐Principles and Techniques of Extracorporeal Circulation
 中島伸之
Extracorporeal Circulation
 高橋和久

学会
第14回千葉県胆膵研究会
第15回千葉県胆膵研究会

編集後記

 
   
  尿道下裂の手術術式
伊藤晴夫  千葉大学医学部泌尿器科学講座


 尿道下裂はその程度が軽度のものから高度のものまであり,また,索の程度,亀頭の形,皮膚の厚さなど千差万別である。本症に対しては数多くの手術術式が発衣されている。最近では一期的に手術することが薦められるようになってきた。そこで,本稿では,まず,尿道下裂の程度と、術式の選択について著者の考えを示した。すなわち,外尿道口がglanularの場合にはMAGPI;coronalあるいはsubcoronalの場合にはMathieu; distal shaft,proximal shaftあるいはpenoscrotalの場合にはparameata1foreskin flap法;scrotal,perineaIあるいはpenoscrotalで陰茎の湾曲が高度なものは二期的手術である。つづいて,著者の考案した尿道板を広範に剥離・温存して,その上にparameatal foreskin flapをonlayするparameatal foreskin flap法の変法について述べた。
 
   
  クスリの使い方:その1 クスリの物語 一昔の民間薬一
若新政史  千葉大学医学部附属病院卒後・生涯教育臨床研修部


クスリには古くから使われているものがある。その中にはジギタリスのように使い方のこつをのみこめば大きな戦力となるもの,金剤のようにその副作用が明らかになりながらも慢性関節リウマチの治療にとって手放すことができないでいるもの,また誰にでも安全に使えるものなど様々ある。いずれにしても,薬剤の作用は表舞台での作用と,裏舞台での作用ともいえる副作用があることを忘れてはならない。例えば金剤はリウマチを治すべくして,実験腎炎を行ってしまうジレンマも持っている。しかも毒も制するのが名医でもあり,クスリを良く知って上手に使うことをすすめる。
 
   
  高分化型肝細胞癌の穿刺吸引細胞診:細胞学的診断にかんする診断基準について
今野暁男 佐藤恒信 長尾俊孝 近藤福雄  千葉労災病院 病理部


高分化型肝細胞癌(以下・高分化型肝癌)の細胞診での診断基準の設定を行った。穿刺吸引生検より得られた20例の高分化型肝癌と,対照用として非癌部肝組織の生検組織診像と,同時に作製した捺印細胞診像を比較対比し,種々の細胞学的異型要素を検討した。高分化型肝癌に出現する異型要素として,N/C比の増大,核の大きさの均一性,核小体の明瞭化、クロマチンの不均等分布,不整索状構造,小腺管形成,細胞境界の不鮮明化および異型裸核細胞の出現の8項目を設定し,それぞれの出現頻度と診断上の意義を検討した。その結呆,異型要素中重視されるのは,N/C比の増大,核の大きさの均一性,不整索状構造および小腺管形成の4項目で,これらを高分化型肝癌の四主徴と判断した。このうち3項目が陽性ならば高分化型肝癌の診断は可能と考えた。その結果,生検組織診との一致率は61.1%(11/18)となった。また,肝癌細胞診の有用性と診断率向上に関して考察を加えた。
 
   
  筋萎縮性側索硬化症の頸髄肉眼的形態変化について:造影CT像と病理標本像との比較
菅宮 斉 得丸幸夫 新井公人 平山恵造  千葉大学医学部神経内科学講座


 病理学的に確診された筋萎縮性側索硬化症5例における頸髄肉眼的形態変化を生前の造影CT像と剖検による病理標本像とで比較検討した。造影CT像は病理標本像とともに以下の特徴を有した。(1)全経過1年未満の2例では造影CT像と病理標本像の両者において肉眼的形態変化の異常は認められなかった。(2)全経過1年以上の3例では造影CT像と病理標本像の両者とも頸髄の扁平化あるいは後外側溝部の陥凹などの肉眼的形態変化を認め,下位レベルほど強く,上肢筋萎縮,下肢錐体路徴候の強い症例ほど著明であった。臨床症状の左右差は肉眼的形態変化としてはとらえられなかった。以上から,本症の造影CT像はその病理像を反映して頸髄の扁平化と後外側溝部の陥凹を呈しうるが,経過の長短を考慮すべきものと思われた。
 
   
  びまん性肺疾息のHigh Resolution CT撮像および表示の適性条件の検討
松迫正樹  千葉大学医学部放射線医学講座


びまん性肺疾患の画像診断に際して,二次小葉レペルの微細な病変の評価にはHigh Resolution CT(HRCT)が不可欠となってくる。このHRCTの種々の要素について,適性な条件を検討した。方法は,JISファントムに加えて,今回新たに考案・作製したいくつかのファントムにより,主にcollimation,reconstruction algorithm,targeted reconstruction,kVp/mAの4つの要素について,実験的・客観的検討を行った。さらに,臨床例や病理標本を用いて撮像条件に加えて表示条件の比較検討も行った。 HRCTの適性な条件は以下のように考える。CT装置の公示スライス厚は実際より薄くなっているが,適性スライス厚は実効スライス厚で2mm前後と考える。再構成関数については,高空問周波数アルゴリズムを用いる。ただし、CT装置によって再構成関数の特性が異なるので、その特性を把握することが重要である。FOVを小さくすること(targeting)は必ずしも必要ない。むしろ,1つ1つの画像を大きく表示し,1画像内に両肺を含めた方が病変の拡がりもみやすい。thin collimationで撮像することによる小結節性病変の見落としを避ける意味では,ルーチン撮影の後HRCTをいくつかの部位で追加するのがよいが,急性病変では,はじめからHRCTでもよい。その際の被曝量はルーチンCTよりかなり少なくなる。ウィンドウ幅は,1500〜2000HUと広くとり、レベルを-500〜-650HUに設定すれば,診断に適さない画像が作製されることはまずないと考えられる。
 
   
  外科侵襲の大きさによる骨格筋蛋白の全身蛋白分解に占める割合
田代亜彦 山森秀夫 高木一也 森島友一 中島伸之  千葉大学医学部外科学第一講座


 外科侵襲下における全身蛋白及び骨格筋蛋白分解速度および骨格筋の全身蛋白分解に占める割合を検討した。65歳以下の男性成人息者35名を対象にし,食道癌手術施行群(E群,n=13),胃{および大腸癌手術施行群(GC群,n=22)の2群に分けた。術前,術後3,10病日15N glycineの定速静注法により全身蛋白分解速度を測定した。尿中3-methylhistidine排泄量を測定し,Bilmazesらの式を用いて骨格筋蛋白分解量を算出した。また尿中総カテコールアミン及び総窒素排出量を連日測定した。検索期間中は術前より絶食とし,アミノ酸1.5g/kg/day,40kcal/kg/day投与する高カロリー輸液により管理した。全身蛋白分解はE群,GC群共術後第3病日に有意に増加し(E群で<0.01,GC群で<0.05),E群の増加はGC群より有意に高かった(<0.01)。骨格筋蛋白分解は術前値0.54g/kg/day程度からは術後有意に増加し,術後3病日でE群l.57±0.08g/kg/dayに(M±SE,<0.01),GC群で0.93±0.03g/kg/day(<0.01)となった。3病日での増加はE群でGC群より有意に高かった(<0.01)。骨格筋蛋白分解が全身蛋白分解に占める割合は術前の22%稚度から3病日ではE群40.7±l.5%(<0.01),GC群32.6±l.8%(<0.05)と有意に増加し,E詳ではGC群より有意に高かった(<0.05)。以上,外科手術後は,全身蛋白分解,骨格筋蛋白分解共に有意に増加し,骨格筋の全身蛋白分解に占める比率は侵襲が大きいほど高かった。
 
   
  最近の肥厚性幽門狭窄症の臨床像と治療について
江東孝夫 真家雅彦 吉野 薫 末吉智博  千葉県こども病院外科


88年10月開院以来,6年4カ月の間に肥厚性幽門狭窄症(以下本症)60例を加療した。男児45例,女児15例であった。全症例が噴水状の嘔吐を呈して来院した。血清電解質ではNa,K値は正常範囲であった。一方C1値は90mEq/l以下が10例あったが、平均では97.6±9.64mEq/lとさほど低クロール値を示さなかった。また血液ガスではpHが7.712、base exess(BE): 25.3と高いアルカローシスを括弧示す症例もあったが,平均ではpH:7.45±10.08,BE:4.11±6.59であった。本症の診断法として,上部消化管造影で幽門腫瘤を呈するstring sign或いはumbrella signが用いられるが,近頃では,侵襲の少ない超音波像を第一検索法としており.長軸像の幽門腫瘤のshoulder signと横断像の厚い幽門筋層の腫瘤が描出される。最近は主として,腹部触診でのオリーブ様腫瘤触知と超音波検査で行なっている。近年,小児科医の本疾患に対する認識の向上に伴い早期に紹介される例が多く従来の様な重症な低クロール性代謝性アルカローシス症例は少なく,Ramstedt手術後は症状も軽快し順調な体重増加が得られ,入院期問も7.4日と短く本症は患児のQOLの面からも外科的加療で良好な成績が得られた
 
   
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