千葉医学会 The Chiba Medical Society
千葉大学 千葉大学大学院医学研究院→
千葉大学附属病院→
千葉医学会 The Chiba Medical Society HOME 千葉医学会の紹介 お知らせ Chiba Medical Journal 千葉医学雑誌 医学雑誌関連情報


千葉医学雑誌

千葉医学雑誌一覧
 
千葉医学 72 (1) :1-112, 1996

総説
排尿の神経機構
 服部孝道
 
講座
台所の生化学:その4,甘味料について
 三浦義彰 斉田直美 橋本洋子
 
原著
周期的な機械的刺激特異的に発現する遺伝子のクローニング
 佐粧孝久

前立腺肥大症の尿水力学的研究
 永蔦 薫

話題
医学教育改革に関する2,3の考察
  千葉胤道

学会
第898回千葉医学会例会,第1内科教室同門会例会
第95l回千葉医学会例会第l内科教室同門会例会
第894回千葉医学会例会,第二内科例会
第868回千葉医学会例会,第8回磯野外科例会
第885回千葉医学会例会,千葉大学第二外科例会
第904画千葉医学会例会,千葉大学第二外科例会
第909回千葉医学会例会,第29回肺癌研究施設例会
第9回千葉腎病理集談会

編集後記

 
   
  排尿の神経機構
服部孝道  千葉大学医学部神経内科学講座


 下部尿路とよばれる膀胱と尿道の機能には、膀胱に尿をためる蓄尿機能とためた取を排泄する排出機能とがあり、複雑な神経系の支配下にある。末梢神経系では骨盤神経(副交感神経),下腹神経(交感神経),陰部神経(体性神経)が関与している。骨盤神経と陰部神経は仙髄から、下腹神経は胸腰髄から出ており,骨盤神経と下腹神経はほぼ拮抗的に膀胱と尿道の平滑筋を支配し、陰部神経は外尿道括約筋を支配する。すなわち骨盤神経は尿排出的に、下腹神経は蓄尿的働きをする。下部尿路からの感覚もこれらの末梢神経を上行し、脳幹の橋にある排尿中枢が排尿機能を統合している。脳幹排尿中枢はさらに前頭葉や大脳基底核、視床下部などから支配を受ける。
 
   
  台所の生化学:その4,甘味料について
三浦義彰 斉田直美1) 橋本洋子2) 千葉大学名誉教授 1)佐々木研究所附属杏雲堂医院 2)フリー管理栄養士


古代社会の甘味料は蜂蜜であった。パプアニューギニアで蔗糖が発見されたのは新石器時代のことであるが,中世になってインド経由でヨーロッパや日本にも伝来している。しかし、蔗糖の伝来以前から糖尿病は存在していた。糖尿病の患者数は文明の発達、特に砂糖の消費貴の増加に比例して増加し、南太平洋諸島では急激な食品の文明化につれて患者数は激増している。砂糖の消費の増加によってフルクトースの摂取が増し,これが肝臓で脂肪合成を促進、高脂血症をおこして糖尿病の増悪を招くものと思われる。本文では医薬品以外の食品や清涼飲料水中の糖の含量、最近の人工甘味料などについて述べ糖尿病患者への指針とした。
 
   
  周期的な機械的刺激特異的に発現する遺伝子のクローニング
佐粧孝久  千葉大学医学部整形外科学講座


我々の体内では様々な組織や細胞が伸縮,圧負荷といった物理的な刺激を受けている。物理的機械的刺激が、生体、つまるところ細胞にどのような影響を与えるかは未知の分野である。また、こうした刺激と、それに対する細胞の応答が持つ生理的な意義は未だ明かにされていない。私は、機械的刺激に対する細胞の応答を解明する端緒として機械的刺激を与えて細胞を培養した際に、刺激特異的にどのような遺伝子が発現するかを検討した。即ち、骨芽細胞系細胞MC3T3E.1に周期的に機械的刺激を与えて培養した場合と,静的に培養した場合とで発現に違いのある遺伝子をdifferential display法により捉えようとしたのである。その結果,明かに機械的刺激により発現の見られる遺伝子の断片をクローニングすることに成功した。クローニングした遺伝子断片は206ベースペアの長さであるが、塩基配列を調ベホモロジー検索したところ、現在のところ相同性のある遺伝子は存在せず、新しい遺伝子の可能性が考えられた。さらに、各組織での発現の有無を調べたところ、骨格筋で最も発現が高く、心、肺といった組織が伸張刺激に曝されていると思われる臓器で発現が見られた。しかし,脳でも発現が高く、肝、腎でも発現していた。尚,脾,精巣では発現が見られなかった。m RNAの大きさは7.0キロベースであった。機械的刺激特異的な遺伝子をクローニングし得たことは今後,機械的刺激の細胞内への伝達機構や機械的刺激に対する受容体の研究にとって意義深いものとなると考えられる。
 
   
  前立腺肥大症の尿水力学的研究
永蔦 薫


前立腺肥大症の排尿障害は, 静的因子である腺腫の機械的圧迫と動的因子である前立腺平滑筋の緊張によって起こるとされている。前立腺肥大症の排尿I障害の機序をさらに解明するため、18例の前立腺肥大症患者と前立腺肥大症のない6例の正常対照にmuti‐microtip transducer catheterを用いてpressure‐flow studyを施行し, 年齢や腺腫重量と動的因子としての交感神経α‐receptorの影響を検討した。その結果,最大尿意時の前立腺部尿道内圧は正常対照より前立腺肥大症で有意に高く、α‐receptorの関与が示唆された。また、前立腺肥大症における最大尿流時膀胱内圧は正常対照より有意に高く、腺腫重量とは正の相関を示し、年齢とは負の相関を示した。膀胱頸部開大に要する時間は腺腫重量が大きいほど長くかかるが、α- blocker投与後には腺腫重量と相関せず、膀胱頸部においてもα- receptorが関与していると思われた。前立腺肥大症の排尿障害は腺腫重量に依存した機械的圧迫、α交感神経作用による前立腺部尿道の機能的緊張および加齢による排尿筋収縮力の低下の三者によることが確認された。
 
   
  医学教育改革に関する2,3の考察
千葉胤道 千葉大学医学部解剖学第三講座


 現在、戦後最大の教育改革が大学で行われている。教養部が廃止され医学部も6年一貫教育となり、カリキュラムが改訂された。新しい枠組みにこれから内容の見直しが行われて真の改革になると思われる。情報処理科学、分子病態学などの新しい科目や、チュートリアルや小グループ学習などの新しい制度も一部に導入された。この機会に外国の医学教育システムの理念に学ぶところは何か、医学生に必要な資質とは何か、教育環境はどう整えるべきか、医学教育における評価はどの様にすべきか等、見聞し考えさせられたことと2,3の提言をのべた。
 
   
  お問い合わせ e-mail : info@c-med.org  

Copyright (C) 2002 The Chiba Medical Society. All Rights Reserved.