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千葉医学雑誌一覧
 
千葉医学 72 (2) :113-175, 1996

総説
臨床所見からみた小児腎生検の適応について
 宇田川淳子 松村千恵子 倉山英昭 秋草文四郎
 
講座
幕末における千葉県の医療制度に関する考察U:佐倉藩の医療制度改革3
 石出猛史

原著
網膜色素変性症患者におけるYG性格検査
 五十嵐祥了 安達惠美子

T1n0乳癌再発例の検討:乳房温存療法術後残存乳房再発に対する一考察
 宮沢幸正 朱 淙杰 吉田雅博 大渕 徹 松崎弘志 小出義雄 落合武徳 磯野可一

臨床報告
脊髄正中離閉症の診断と外科的治療
 北原 宏 南 昌平 磯辺啓二郎 中田好則

症例
著名な骨・軟骨化生を伴った乳癌の1例
 宮沢幸正 窪澤 仁 朱 淙杰 吉田雅博 大渕 徹 松崎弘志 小出義雄 落合武徳 磯野可一

学会
第902回千葉医学会例会,第15回歯科口腔外科例会
第919回千葉医学会例会,第16回歯科口腔外科例会
第6回千葉県MOF研究会
第10回千葉腎病理集談会
第7回千葉小児成長障害研究会
第13回千葉糖尿病研究会

編集後記

 
   
  臨床所見からみた小児腎生検の適応について
宇田川淳子 松村千恵子 倉山英昭 秋草文四郎1)  国立療養所千葉東病院小児科 1)千葉大学医学部病理学第二講座


近年、学校検尿などの確立により無症侯性尿異常が多く存在し,その一部に進行性腎疾患や先天性腎疾患が潜在することが明らかになってきた。小児期における腎生検は腎疾患の診断、治療方針決定にとどまらず、小児期に潜在する腎疾患を早期発見するという重要な目的を持つ検査である。特に,無症侯性尿異常の中から効果的に治療しうる腎疾患(IgA腎症,膜性増殖性腎炎など)を発見し早期治療を行えることは腎不全対策に重要な意義を持つ。本論文では臨床所見からみた小児期腎生検の適応をまとめ,その意義を言及した。また、当科5年間の腎生検576例の臨床病理学的分類を行ったのでその疾患頻度を紹介した。
 
   
  幕末における千葉県の医療制度に関する考察U:佐倉藩の医療制度改革3
石出猛史 千葉大学医学部内科学第三講座


安政2年l0月9日藩主堀田正睦は幕府老中に再任された。此度は老中上座・勝手掛(財政担当)・外国掛(外交担当)を兼ね、藩政のみならず,最高権力者として国政を綜覧することになった。正睦の幕政における医療制度の関与としては,江戸神田お玉ケ池種痘所設立の許可、長崎に開設された幕府海軍伝習所へのオランダ人医師の招聘、伝習所における医学教育の許可が挙げられる。一方佐倉藩においては、安政4年医学振興に関する達しが出され、同6年には従来の漢方医学だけではなく、蘭法医学の修得者にも家禄の増引御戻がされることになり、一層の洋化政策が推進された。
 
   
  網膜色素変性症患者におけるYG性格検査
五十嵐祥了 安達惠美子  千葉大学医学部眼科学講座


網膜色素変性症(RP)患者へのきめ細かい診療を行うため、その心理状態や性格傾向を調査した.千葉大眼科を受診し調査協力の得られた38名のRP患者に対しYG性格検査を行い,その結果を正常者20名と比較し統計的に検討した。パーソナリティ特性ではRP患者は正常者に比べ、O(客観性欠如), T(思考的外向), S(社交的外向)で有意に高かった。プロフィール分類では全体の傾向に有意差はみられないものの,全般に安定性の高い分布額向であった。RP患者の性格は正常対照と比べて空想的で細かいことにこだわらず比較的社交的な特徴を持ち、心理面でも安定傾向が強いといえる。
 
   
  T1n0乳癌再発例の検討:乳房温存療法術後残存乳房再発に対する一考察
宮沢幸正 朱 淙杰 吉田雅博 大渕 徹 松崎弘志 小出義雄 落合武徳 磯野可一  千葉大学医学部外科学第二講座


 1965年よりl993年に当科で手術を施行した全乳癌症例中両側乳癌を除く女子乳癌手術例で病理型のはっきりしているものは466例であり、乳頭腺管癌はl37例(29.4%)、充実腺管癌はl86例(39.9%)、硬癌はll5例(24.7%)であり、その他が23例(6.0%)であった。一方Tln0乳癌は98症例であり、乳頭腺管癌が30例(30.6%)、充実腺管癌が36例(36.7%)、硬癌が27例(27.6%), その他が5例(5.l%)と有意差はないものの硬癌、乳頭腺管癌の頻度が全乳癌に比し高い傾向が認められた。全再発乳癌症例103例の組織型別再発部位別頻度の検討では、硬癌再発例は22例に認められ、局所再発7例(32%)及び局所リンパ節再発が4例(l8%)に見られ局所再発、局所リンパ節再発が多く見られる事が他の組織型に比べ有意に特徴的であった。組織型別再発率を見ると全再発症例では充実腺管癌がl86例中52例(28%)の再発を見ており再発率が最も高かった。一方T1n0乳癌再発例では硬癌で27例中3例(11.1%)の再発を認めており、最も再発率が高く特徴的であった。再発部位別頻度ではT1n0乳癌では局所再発が3例(33%)を占め最も多く特徴的と思われた。当科における乳房温存術症例3l例のTnm分類による病期別割合では、Tln0症例が20例(64.5%)と最も多かった。また病理型別割合では硬癌が1l例で最も多かった。これらのことより以下の結論が得られた。硬癌は局所再発を来しやすい額向がある。T1n0乳癌は硬癌が多い傾向があり、硬癌の再発率も高いことより局所再発を来しやすい。乳房温存療法ではT1n0症例が多く,硬癌も多いことより局所再発発生率が高いことが予想された。乳房温存療法の残存乳房再発を防止ずる為に簡便な断端陰性の病理診断を下すための工夫が必要と考えられた。
 
   
  脊髄正中離閉症の診断と外科的治療
北原 宏1) 南 昌平2) 磯辺啓二郎2) 中田好則2)  1)千葉大学医学部附属病院中央放射線部 2)千葉大学医学部整形外科学講座


Neural spinal dysraphismの内のdiastematomyelia 8例の診断・治療法、結果につき検討した。診断には、orthopedic syndrome.cutaneous changes(hypertrichosis, skin dimple, hemangioma, tumor mass etc), 神経症状を参考に、レ線では先天性側弯症、潜在性二分脊推(spina bifida occulta)の有無を検索し、脊髄の検索には脊髄造影、CT、CT- myelography, MRIが必須である。Diastematomyeliaの手術では、先天性側弯症の変形矯正に先立ち骨性ないし線維性中隔を顕微鏡視下に切除術を施行する。術後対麻痺の危険性があり、手術治療に際しては術中脊髄モニタリング下に行う必要がある。脊柱側弯は高度変形になる例があり、早期発見により中隔切除、変形頂推部凸側の推体固定術が有効である。
 
   
  著名な骨・軟骨化生を伴った乳癌の1例
宮沢幸正 窪澤 仁1 吉田雅博 朱 淙杰 大渕 徹 松崎弘志 小出義雄 落合武徳 磯野可一
  千葉大学医学部外科学第二講座 1)千葉大学医学部病理学第二講座


骨、軟骨化生を伴う乳癌は、きわめて稀でその頻度は全乳癌の0.003〜0.l2%といわれている。今回我々は著明な骨・軟骨化生を伴う乳癌の一例を経験したので報告する。症例は6l歳、女性。約30年前より左乳房腫瘤を自覚していたが、腫瘤が急速に増大したため当院受珍となる。左乳房ABCDE領域にl0xl0cmの硬い腫瘤を認めた。TNM分類T3bNlbM0、stageVaの所見であった。マンモグラフィー、超音波検査、CTにては内部に巨大石灰化を伴う腫瘤像を認めた。骨スキャンにては、腫瘤に一致して著明な集積が認められたが、骨転移は認められなかった。穿刺吸引細胞診にてclass V、左乳癌の診断にて拡大乳房切除術及び皮膚移植術を施行した。術後7ケ月現在再発の徴侯なく、外来にてCMF療法施行中である。病理組織所見では、骨あるいはosteoidの形成が著明で、一部軟骨様組織を伴う腫瘍で、乳癌研究会分類で2b8、骨、軟骨化生を伴う乳癌の診断となった。ER, PgRは共に陰性であった。骨、軟骨化生を伴う乳癌は今回我々の調べ得た限りでは本邦においてはl971〜l995年に自験例を含めて53例の報告例を認めた。骨、軟骨化生を伴う乳癌では.急速に腫瘍が大きくなる場合がしばしばあり、また臨床病期が進んでから診断がつく場合が多く、その為5年生存率が60.69%と予後が悪いと考えられた。また骨, 軟骨化生を伴う乳癌で、骨化生を伴うものでは、骨スキャンにおける腫瘤への集積が診断の一助になるのではないかと考えられた。  
 
   
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