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千葉医学雑誌

千葉医学雑誌一覧
 
千葉医学 72 (6) :365-425, 1996

展望
放射線治療における三次元集光照射
 伊東久夫
 
講座
台所の生化学:その5,筋肉を強くする食事
 三浦義彰 斉田直美 橋本洋子
 
原著
Prostate‐Specific Antigen Density and Velocity for Detection of Localized Prostate Cancer
 安原克彦 

糖尿病患者における血小板cAMP Phosphodiesterase活性の測定とその臨床的意義
 鈴木潤子

脊髄髄内病変に対する術中脊髄モニタリングの臨床的研究
 加藤大介 村上正純 後藤澄雄

研究報告書
平成7年度猪鼻奨学会研究補助金による研究報告書

学会
第933回千葉医学会例会、第一内科教室同門会例会
第8回千葉小児成長障害研究会
第12回千葉腎病理集談会

編集後記

 
   
  台所の生化学:その5,筋肉を強くする食事
三浦義彰 斉田直美1) 橋本洋子2) 千葉大学名誉教授 1)佐々木研究所附属杏雲堂病院 2)フリー管理栄養士


明治9年に来日したBaelzは,日本人学生の体格が悪いのは牛肉などの獣肉を食べず、またスポーツをしないから筋肉が発違しないのだと主張した。それ以来、日本人の間には筋肉を強くするには、動物性タンパク質に富む高タンパク食をとり、運動をするのがよいという概念が根強い。しかし、成人では窒素平衡が保たれているから、ある程度以上多量のタンパク質を食べても、体のタンパク質は増えない。筋肉を太く、強くするには筋肉の運動をしながら、糖質を主とする食亊をとって、筋肉のグリコーゲンを増すのが大切である。近年のスポーツ生理学の研究はどのような食亊のとり方が、最も効率よく筋肉グリコーゲンを増すことが出来るかということに集中している。こういった研究がオリンピック・ゲームなどの選手の強化につながる筈である。
 
   
  Prostate‐Specific Antigen Density and Velocity for Detection of Localized Prostate Cancer
安原克彦 千葉大学医学部泌尿器科


未治療の前立腺癌79例と前立腺肥大症84例を対象として血清前立腺特異抗原(PSA)の前立腺体積比(PSA density)および経時的変化率(PSA velocity)が局所に限局した前立腺癌と前立腺肥大症を鑑別する上で有用であるかどうかを検討した。局所に限局した前立腺癌における血清PSA, PSA density, PSA velocityは前立腺肥大症に比較して有意に高値であった。PSA, PSA density, PSA velocityの最高正診率とその場合のカットオフ値は各々79.5%(6.0ng/ml), 84.1%(0.21ng/ml of prostatic volume), 92.9%(l.3ng/ml/year)であった。ROC曲線(receiver operating characteristic curve)でPSAとPSAでdensityを比較した結果、前立腺癌を検出する上でPSA densityの方が有用であった。前立腺癌Stage B および Stage C のPSA density は Stage A よりも有意に高値であった。また中分化型および低分化型前立腺癌の PSA density は高分化型前立腺癌よりも有意に高値であった。前立腺癌ではPSA densityとPSA velocityが共にカットオフ値未満の症例は1例もなかった。前立腺肥大症ではPSA densityとPSA velocityの間に強い相関が認められたが、前立腺癌では認められなかった。以上よりPSA densityとPSA velocityは早期前立腺癌を診断する上で有用であると考えた。
 
   
  糖尿病患者における血小板cAMP Phosphodiesterase活性の測定とその臨床的意義
鈴木潤子 千葉大学医学部内科学第二講座

糖尿病患者では、血小板凝集能が亢進し、糖尿病合併症に影響を及ぼことが示唆されている。しかしながらcAMP濃度の調節に関与し血小板凝集能に影響を及ぼすと考えられる血小板 cAMP phosphodiesterase(以下PDE)に関する研究は少ない。そこで、本研究では血小板PDE活性を測定し、血小板凝集能及び糖尿病慢性合併症との関係について解析した。糖尿病患者40名、非糖尿病コントロール10名を対象とし、血小板PDE活性及びcAMP濃度、血小板凝集能を測定し、糖尿病慢性合併症、家族歴、年齢等の背景因子及び各種臨床検査成績等を調査し、比較検討を行った。血小板PDE活性は、3H‐cAMPを用いる既報の方法で測定し, 血小板凝集能は凝集惹起物質としてADPを使用し、最大凝集率の50%を認める濃度を求め判定した。糖尿病患者群では、コントロール群に比し血小板凝集能の亢進額向を認めた。糖尿病患者の血小板上清PDE活性は血小板凝集能と正の相関を示し、さらに血小板cAMP濃度とは負の相関を認めた。また、糖尿病性腎症合併例の血小板上清PDE活性は非合併例に比し高値を示した。血小板上清PDE活性が上昇すると、血小板cAMPは減少し、血小板凝集能が亢進することが示唆された。血小板PDE活性の上昇は糖尿病性腎症の危険因子の一つであると考えられる。
 
   
  脊髄髄内病変に対する術中脊髄モニタリングの臨床的研究
加藤大介 村上正純 後藤澄雄 千葉大学医学部整形外科学講座

脊椎・脊髄手術において、特に脊髄内操作を行う症例では術中に脊髄機能をモニターすることが極めて重要である。本研究の目的は、脊髄髄内病変を有する症例の脊髄刺激・脊髄記録による脊髄誘発蟹位(C-SpEP)の波形と神経症状の変化を再検討することにより、本法の有用性と限界について考察することである。対象は脊髄髄内腫瘍33例および脊髄空洞症l5例の計48症例である。C‐SpEPは主に下行性最大上刺激にて記録し、硬膜切開後のコントロール波形に対する振輻変化と術直後の神経学的変化を比較検討した。コントロール波形は、スパイク成分とそれに続く多相性成分が識別可能なTypeTと低振幅な多相性成分のみのTypeUおよび記録不可能なTypeVに分類ざれた。TypeTが32例、TypeUがl2例で、神経学的には後者がより重篤であり、TypeVの4例は術前よりすでに完全麻痺の症例であった。TypeT32例中9例に術後運動機能と温痛覚の悪化が認められ、スパイク成分の振幅が有意に低下していた。また、30%以上の振幅低下は重篤な神経合併発症の危険域と考えられた。さらに、TypeT l8例に後索機能の悪化を認め、これらにおいては多相性成分の振幅が有意に低下していた。TypeU症例では振幅変化と神経症状の変化との間には明らかな関係はなかった。なお、TypeT 症例のうち4例が運動機能に関してfalse negativeと考えられたが、これらは本法の限界であった。C-SpEPは脊髄髄内病変を有する易損性脊髄の術中監視においても安定した記録が可能であり極めて有用であった。しかし、今後より完全な脊髄機能の評価を行うためにはmultimodalityなモニタリングが必要である。
 
   
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