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千葉医学雑誌

千葉医学雑誌一覧
 
千葉医学 73 (3) :133-199, 1997

総説
臓器移植における拒絶反応の抑制
 落合武徳 磯野可一
 
原著
口腔悪性腫瘍手術後の構音機能の検討
 大木保秀 丹沢秀樹
 
FRTL−5細胞の増殖とくにGl/S期移行に不可欠なメバロン酸代謝産物の同定とその分子機構:
geranylgeranylpyrophosphateによる癌抑制遺伝子p27の分解促進とCdk2活性化作用

 中村 晋

早期前立腺癌に対する去勢をしない新内分泌療法の治療成績:奏効した全6症例の報告
  脇坂正美 野村和史

同種骨髄移植後の血小板数の回復遅延に関する臨床的研究
 池上智康

HPVl6型E6/E7遺伝子発現誘導が正常ヒト線維芽細胞に及ぼす影讐の検討
 黄田光博 清水久美子 白澤 浩 清水文七 磯野可一

話題
「患者本位」の医療改革めざして 変えるべきもの・ベからざるもの
 藤田眞一

らいぶらりい
Muscle Imaging in Health and Disase
 当間 忍

編集後記

 
   
  口腔悪性腫瘍手術後の構音機能の検討
大木保秀 丹沢秀樹 千葉大学医学部歯科口腔外科学講座


口腔領域の悪性腫瘍手術後患者67名の構音機能障害について,発語明瞭度検査法を用いて検討した。術前の発語明瞭度の平均は86.3%(28名)であった。術後の明瞭度は@術前値に近い85%以上の症例群,A85%から60%付近までの軽度障害群,B60%から40%付近までの中等度障害群,C40%未満の高度障害群に分類可能であった。@は軽度侵襲症例に,Cは全て舌亜全摘ないし舌全摘の症例で,頬部,下顎,口底の症例では40%未満はなかった。部位別に評価をすると,舌切除では切除量に比例して緩やかなS字状に発語明瞭度が低下し,舌l/3切除縫縮群とl/2以下の切徐再建群ではl00音の明瞭度に差が認められず,再建手術の有用性が確認できた。舌l/2を越える切除では母音は大胸筋皮弁群の方が比較的良好であり,/i/や/e/も発音できたが,軟口蓋音では三角胸皮弁群の方が良好であった。しかし100音では両者の違いは明らかではなかった。舌亜全摘,全摘は母昔/o/,口蓋音および嚥下機能が著明に低下し,このため再建術式の考案応用が必要と考えられた。頬部切除後は軽度障害群に相当し,口峡部や口角を含まない頬部のみの症例では,各構音点でその明ト度に差が無く,ほぼ80%近くあった。しかし/e/が構音できない症例があった。下顎切除後は正常発語群から軽度障害群に分別され,区域切除や半側切除でも構音機能は低下していなかった。口底切除は舌切除に近い特徴を持ち軽度から中等度障害群に相当し,やや障害が大きかった。    
 
   
  FRTL−5細胞の増殖とくにGl/S期移行に不可欠なメバロン酸代謝産物の同定とその分子機構:
geranylgeranylpyrophosphateによる癌抑制遺伝子p27の分解促進とCdk2活性化作用
中村 晋 千葉大学医学部内科学第二講座


ラット甲状腺由来のFRTL‐5細胞においては細胞増殖時にコレステロール生合成系が活性化されることが知られている。このFRTL‐5細胞の増殖時におけるコレステロール生合成経路の役割について,とくに細胞周期制御蛋白を中心に検討を加えた。FRTL‐5細胞の増殖,とくにG1からS期への移行過程では,コレステロール生合成経路のメバロン酸代謝産物であるgeranylgeranylpyrophosphateが細胞周期制御蛋白であるp27の減少を介してcyclin-dependent kinase2を活性化し細胞周期の進行に不可欠であることがはじめて明らかになった。
 
   
  早期前立腺癌に対する去勢をしない新内分泌療法の治療成績:奏効した全6症例の報告
脇坂正美 野村和史  社会保健船橋中央病院泌尿器科


社会保険船橘中央病院で,l988年4月からl996年3月までの間に発見された早期前立腺癌,stage T2bNXMOは全部で6例であった。この6例を対象に,今迄とは違った新しい内分泌療法を行った。全例去勢は行わず,始めにdiethylstilbestrol diphosphateを300〜500mg/日,9〜30日間投与した。次に,1例を除き,estramustine phosphate 420〜560mg/日をl5日から6ケ月投与した。湿疹,食欲不振や,悪心等の副作用のため,全例投与を途中で中止し,次に,酢酸クロールマジノンや,luteinizing hormone‐releasing hormoneアゴニスト投与にて継続した。観察期間は短いが,全例再燃なく,生存中である。著者らのこの新しい内分泌療法は早期前立腺癌に対して今後試みられる治療法として価値あるものと考える。
 
   
  同種骨髄移植後の血小板数の回復遅延に関する臨床的研究
池上智康 千葉大学医学部内科学第二講座


1986年6月から1996年3月まで同種骨髄移植を施行した76例を対象とし,同種骨髄移植後の血小板数の回復遅延とそれに関与する因子について検討を行った。移植後60日を経過後,血小板数がl0×l04/μlに満たない症例を血小板数の回復遅延群とした。回復遅延群の頻度は25/76(33%)であり,生存率は非遅延群に比べ,遅延群において有意に低く,5年生存率は前者で60%,後者で約35%と後者で不良であった(P<0.05)。臨床背景として,移植時の年齢30歳以上,再移植例,移植細胞数3.0×l08/kg未満の症例,grade V以上の重症の急性移植片対宿主反応病(GVHD)合併例で,それぞれ対象に比較して有意に血小板数の回復連延が見られた(P<0.05)。また血小板数の回復連遅延例(3例)と非遅延例(3例)について,移植前後の血中thrombopoietin(TPO)を検討すると,移植後全例で血中TPOは高値を示し,非遅延例では血小板数の回復につれて血清中のTPOは低下しほぼ正常範囲まで低下したが,回復遅延例では高値が持続したことから,血小板数の回復遅延例では血中TPOの産生は障害されておらず,むしろ冗進していると考えられた。ドナー血小板に対する同種R体陽性例では血小板回復が有意に遅延していた(P<0.05)。以上より,同種骨髄移植後の血小板数の回復遅延例の予後は不良であることが明らかとなり,その背景因子として,年齢,移植回数,移植細胞数およびドナー血小板に対する同種抗体が関与することが明らかになった。
 
   
  HPVl6型E6/E7遺伝子発現誘導が正常ヒト線維芽細胞に及ぼす影讐の検討
黄田光博1) 清水久美子2) 白澤 浩3) 清水文七3) 磯野可一1)  1)千葉大学医学部外科学第二講座 2)同・産科婦人科学講座 3)同・微生物学第一講座

HPVl6型E6/E7遺伝子発現を亜鉛により誘導可能な正常ヒト線椎芽細胞を樹立し,HPV16型E6/E7がヒト線維芽細胞に及ぼす影響を細胞学的及び分子生物学的に検討した。HPVl6型E6/E7の発現誘導による正常ヒト線維芽細胞の形態変化は観察されなかったが,E6/E7の発現誘導により,細胞飽和密度の上昇が観察された。またマウスl0T1/2細胞で観察されるE6のHMG‐I(Y)発現への影讐は,ヒト線維芽細胞では見いだされなかったが,E6/E7によりc‐ myc の発現が誘導されうることが明らかになった。この結果はE6/E7の細胞不死化に及ぼす過程を究明する上で有用であると考えられる。
 
   
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