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千葉医学雑誌

千葉医学雑誌一覧
 
千葉医学 73 (5) :259-322, 1997

展望
腫瘍ウイルスの戦略:発がんパラダイムの変遷
 白澤 浩
 
白血病細胞におけるc-kit遺伝子発現の検討及び臨床応用
 西村美樹

経カテーテル動脈塞栓術における抗癌剤リピオドール無水懸濁液の有用性の検討
 尾崎正時

アンドロゲン除去療法について再燃した前立腺癌症例と女性ホルモン十分投与にて再燃した前立腺癌症例:2再燃症例の性質の違いについて
 脇坂正美 野村和史

口腔癌発生に重要な役割を果たしているのはどの癌抑制遺伝子か?
 丹沢秀樹

学会
第987回千葉医学会例会,第18回放射線医学教室同門会例会
第941回千葉医学会例会,第21回放射線医学教窒同門会例会
第922回千葉医学会例会,第13回千葉精神科集談会
第948回千葉医学会例会,第14回千葉精神科集談会

編集後記

 
   
  白血病細胞におけるc-kit遺伝子発現の検討及び臨床応用
西村美樹  千葉大学医学部内科学第二講座


c-kit 遺伝子は初期造血に重要な役割を果たしているレセプター型チロシンキナーゼをコードしている。このc-kit 遺伝子の発現は骨髄細胞性、巨核芽球性白血病細胞から樹立した細胞株で検出され、それらの細胞の分化とともに減少した。c-kitレセプター蛋白の発現はFlow cytometryを用いた解析で、遺伝子の発現と相関する結果が得られた。急性の造血器悪性疾患40例の細胞からRT-PCRを用いてその発現を検討したところ、未分化なタイプの白血病(FABのM1,M2)に強く検出され、リンパ球系の細胞からは検出されなかった。このように細胞におけるc-kit 遺伝子や、その蛋白の発現を検討することは、その細胞の分化段階、系統を決定するうえで有用であり、白血病の診断、予後の決定、治療法の選択等に重要な惰報となることを推測させる。
 
   
  経カテーテル動脈塞栓術における抗癌剤リピオドール無水懸濁液の有用性の検討
尾崎正時 榛原総合病院放射線科


本研究は、水分を含まないカルボプラチンとエピルビシンの、リピオドール懸濁液の作成法を考案し、末梢血中への薬剤漏出速度の測定を目的とした。まず、本法で作成した無水懸濁液と従来の含水懸濁液について、薬剤溶出率を日本薬局方パドル法にて検討した。従来の含水懸濁液は測定開始直後から、90%をこえるカルボプラチンの溶出を認めた。一方、本研究で作成した無水懸濁液は、投与後2時間で徐々に溶出した。どちらも2時間後には溶出がプラトーに達した。エピルビシンでも同様に、初期2時間の溶出率は、水分を含まないもので低かった。その後は両者ともほぼ同じ速度で徐々に溶出した。臨床例において、末梢血液中に漏出するプラチナ量を、無水懸濁液と含水懸濁液で比較したところ、前者のほうが育意に低かった。本法で作成した抗癌剤リピオドール無水懸濁液は、末梢血液中への抗癌剤の漏出が少なかった。このことは、腫瘍組織への集積が高いことを示し、従来の方法より優れていると考えられた。
 
   
  アンドロゲン除去療法について再燃した前立腺癌症例と女性ホルモン十分投与にて再燃した前立腺癌症例:2再燃症例の性質の違いについて
脇坂正美 野村和史 社会保険船橋中央病院泌尿器科


症例1は69歳の男性で、他院にて前立腺癌の診断をうけ去勢と酢酸クロールマジノンの内服を10年間行っていたが、再燃を起こした。この症例に、ジエチルスチルベステロール・2燐酸500mg/日静注にて、劇的な効果がみられた。一方、症例2は、61歳の男性で、前立腺癌(stage D2)でこれに対し、去勢せずジエチルスチルベステロール・2燐酸500mg/日30日間投与。維持療法に、エストラマスチン・フォスフェイト560mg/日、次にジエチルスチルベステロール・2燐酸300mg/日内服にて維持療法中、半年で再燃をおこした。この再燃癌に対し、ジエチルスチルベステロール・2燐酸500mg/日投与も、去勢も効果なく、又化学療法、放射線療法も無効で癌死した。これら2つの症例からアンドロゲン除去による再燃癌の性質と、女性ホルモン十分投与後の再燃癌の性質は全く違っていることが示唆された。2つの再燃様式の違いを考察し報告した。
 
   
  口腔癌発生に重要な役割を果たしているのはどの癌抑制遺伝子か?
丹沢秀樹  千葉大学医学部歯科口腔外科学講座


口腔頷域癌の遺伝子学的解析はあまり行われていないため、本稿では当科における癌抑制遺伝子異常の検索結果を用いて、口腔癌においてどの遺伝子が重要な役割を果たしているのかを検討した。試料は、口腔扁平上皮癌組織と、同一症例の正常組織を用いた。RB遺伝子とWT遺伝子についてはサザンブロッティング法により、また、APC,p53、VHL,p15,p16,p18 遺伝子についてはPCR-SSCP法および塩基配列決定法を用いて検索した。さらに、APC 遺伝子についてはエクソン11のポリモルフィズムを利用したPCR-LOH分析をあわせて行った。以下に示す結果を得た。(1)APC 遺伝子の点突然変異は8.3%、APC-LOHは“informative”症例中の72.7%に認められた。(2) p16 遺伝子と p18 遺伝子の点突然変異はそれぞれ4.0%、3.8%に認められた。 p15 遺伝子異常は認められなかった。(3)p53 遺伝子異常は7.7%に認められた。(4) WT 遺伝子の部分欠失を6.5%に認めた。(5)RB遺伝子と VHL 遺伝子の異常は認められなかった。以上の緒果から、種々の癌抑制遺伝子のうち、特にAPC遺伝子が口腔扁平上皮癌発生に重要な役割を果たしていることが示唆された。
 
   
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