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千葉医学雑誌

千葉医学雑誌一覧
 
千葉医学 77 (1) :1-65, 2001

講座
江戸の病と信仰
 石出猛史
 
原著
術前出血時間測定の問題点
 石井 浩 森 重彦 中村広志 枡谷佳生 室谷典義 西島 浩

拡張型心筋症患者の左室壁運動改善の予測におけるポジトロンCT代謝画像
 中尾元栄

事象関連電位による音声言語の処理過程の解析
 伊藤寿彦 下山一郎 柴田忠彦 Dilshat Abla 岩佐博人 古関啓二郎 佐藤甫夫 中島祥夫

Primary PTCA 施行AMI症例における99mTc-MIBI SPECTの経時的変化及び左室造影との対比
 石橋 巌 宮崎義也 酒井芳昭 角田興一 増田善昭

学会
第986回千葉医学会・整形外科例会

雑報
110 Jahre Tetanus-Forschung in Goettingen: ゲッティンゲン大学における最終講義
 高野光司

編集後記

 
   
  江戸の病と信仰
石出猛史 千葉大学医学部内科学第三講座


洋の東西を問わず、古来より医療と呪術・信仰とは密接な関わりを持ってきた。これは形を変えて現在でも存続している。時代が進むに連れて、疾病の本態の究明 ・治療に解析的な手法が導入されるようになると、それまで経験的におこなわれてき たことから、有効な機序を見出し、それを診療に還元する方法がとられてきた。しか しとられた方法の実効性を検証するためには、多くの場合長期の予後の追跡を必要と する。 この部分についてはやはり経験医学である。ここに医学領域における歴史学的 思考法の重要性がある。現存する生物は、地球における生命誕生以来というより、地 球誕生以来のエッセンスと考えるべきであろう。 新たに開発される医療技術は、あら ゆる意味において生命予後を改善すべきものでなくてはならない。本稿では、江戸時 代当時の人々に身近にあった疾病を対象として、その取り組みについて触れる。
 
   
  術前出血時間測定の問題点
石井 浩 森 重彦1) 中村広志 桝谷佳生 室谷典義2) 西島 浩3) 千葉社会保険病院内科、1)臨床検査部、2)外科・透 析、3) 外科


腎不全例、 透析例を対象とした観血的処置を多く取り扱う当施設において、 術 前の出血時間測定は出血傾向のスクリーニング検査として妥当であるかを検討した。 過去 8 ヶ月間に術前出血時間を測定した834例を対象とし、 出血時間延長値の出現頻 度、 感度、 特異度、 陽性反応的中度を求めた。 また、 複数回検査例では測定値の再現 性を検討した。延長値の出現頻度は2.4%であった。 周術期の異常出血は7例にみられ、 5 例が真陽 性、 2 例が疑陰性であった。 出血時間の感度、 特異度、 陽性反応的中度はそれぞれ7 1%、 98%、 26%であった。 複数回検査例 (91例) では48%の例で測定値はほぼ一致し たが、 11%の例で 4 分30秒以上の測定値の乖離がみられた。 周術期異常出血例は 7 例すべてが腎機能障害例であり、 腎生検例、 透析例以外の例 で異常出血例はなく出血時間延長の頻度も低率であった。 以上より、 少なくとも術前 ルーチン検査として漫然と現行の出血時間検査を行うべきではないと考える。 また、 出血リスク例は問診、 診察でスクリーニングし、 必要性の高い例に出血時間その他の追加検査を実施することを提案する。
 
   
  拡張型心筋症患者の左室壁運動改善の予測におけるポジトロンCT代謝画像
中尾元栄 千葉大学医学部内科学第三講座


虚血性心疾患に関しては、 現在までにFDG-PETを用いた左室壁運動改善の可能性の予測について報告されてきた。 しかしながら拡張型心筋症の左室機能の改善と 心筋糖代謝との関係は議論されていない。 心臓超音波検査にて左室駆出率の低下している拡張型心筋症20症例(平均左室駆出率34.1±10.4%) に経口による糖負荷FDG-PETを施行した。さらにそれぞれの症例で心筋糖代謝率とその不均一性の指標として変動係数 (CV)を算出した。その中央値0.128をこえる変動係数を示す群 (高 CV 群: 10例)とそれ以下の群(低CV群:10例)の2群に分割し、 薬物治療後に再び心臓超音波検査を施行してそれぞれの群における心機能の変化を検討した (平均3.5ヶ月後)。低CV群は平均左室駆出率が平均で30.7%から50.6%と有意に改善を認めた一方、 高CV群は平均で37.6%から35.8%と改善を認めなかった。また左室駆出率の変化と 平均心筋糖代謝率の間には相関が認められないものの、左室駆出率の変化とCVとの 間には負の相関を認めた。これにより拡張型心筋症症例における左室壁運動の改善は 平均の心筋糖代謝率ではなく心筋糖代謝率の不均一性と関係している可能性が示された。 このFDG-PETを用いた左室機能改善の予測は、治療方針の選択に役立つと考えら れた。
 
   
  事象関連電位による音声言語の処理過程の解析
伊藤寿彦 下山一郎1) 柴田忠彦  Dilshat Abla1) 岩佐博人 古関啓二郎 佐藤甫夫  中島祥夫1)
千葉大学医学部精神医学講座、1)生理学第一講座


音声言語の経時的な処理過程の機構については、刺激条件の設定の困難さから未だ不明の点が多い。本研究では、 音声言語の持続時間を統制した刺激条件を開発し、事象関連電位の解析からその処理過程を検討した。2 音節の動詞を配した正常文と逸脱文の弁別課題を健常成人に施行し、 21chの平均加算波形を平衡頭部外基準電極に て記録した。 その結果、 逸脱文では、N100、N250、N330、P600が記録された。 分散分析の結果から、逸脱文の音韻処理あるいは意味処理には音声刺激提示後約250ms から左右両半球の神経活動が関与することが示唆された。 正常文の処理過程では、プライミング効果により言語処理が効率化されていることが推察された。
 
   
  Primary PTCA施行AMI症例における 99mTc-MIBI SPECTの経時的変化及び左室造影との対比
石橋 巌  宮崎義也 酒井芳昭  角田興一 増田善昭 1)
千葉県救急医療センター 循環器内科
1 )千葉大学医学部内科学第三講座


発症後24時間未満の急性心筋梗塞症例33例に対して、 Primary PTCA施行前後 および 1 ヶ月後の慢性期に 99mTc-MIBIによる心筋SPECTを撮像した。 撮像したSPECT像は17分割した区域でそれぞれ取り込みを0〜3まで正常から完全欠損まで算定し、 その合計をSeverity Index (S.I.)とした。 Primary PTCA施行時および3ヶ月の慢性期に右前斜30度で左室造影を施行し、Centerline法により梗塞部局所壁運動(RWM)を算定し、 急性期RWM及び慢性期RWMとした。 その結果、S.I.はPTCA前後で18.6から15.4へ改善しさらに1ヶ月後には11.7に改善を認めた。 また、S .I.改善例ではRWMは急性期−2.7±1.1から慢性期−1.6±0.8へ改善を認めたが、S .I.非改善例では、RWMに改善は認めなかった。さらに、ΔS.I.とΔRWM にはY=0 .24Xの相関関係を認め、急性期の99mTc-MIBI SPECT像が慢性期の左室機能の予後診断に有用であった。
 
   
  110 Jahre Tetanus-Forschung in Goettingen: Goettingen 大学における最終講義
高野光司 ゲッティンゲン大学医学部病態神経生理部門


著者は、 1971年 3 月24日ゲッティンゲン大学医学部終身職教授、 運動神経生理部長 (後部名改定により病態生理部長) に任官し、 1996年 3 月31日定年により 部長職を解任された。 以下は同年 4 月12日に行なわれた最終講義である。 破傷風によ り現今、 全世界で1年に百万人のヒトが死んでいる。 破傷風毒素はボツリヌス毒素 とともに地球上で人類が知っている物質のうちで、 最も毒性が高い。 ゲッティンゲン大学の若い医師 A. Nicolaier による最初の破傷風近代的研究、 同大学外科教授 J. Rosenbach の実験、 北里柴三郎による病原菌の嫌気性培養の成功、 免疫の発見、 Faber による毒素の証明など19世紀後半の破傷風研究史と Sherrington の 「抑制の興奮への変化仮説」 など20世紀前半の神経生理学的研究を概観した。 Brooks, Curtis, Eccles (1957) の脊髄運動神経細胞脱抑制説を簡単に紹介し、これ が病因解明にはならないことを説明した。 破傷風には、 局所性破傷風と全身性破傷風 がある。 脱抑制説による現在の教科書的病因論によれば、 全身性破傷風は、 局所性 破傷風の総和であるが、 著者は、 臨床破傷風は、 局所性破傷風と全身性破傷風の和 であるとする。 また救命できるような破傷風は、 主としてガンマ運動系の活動亢進であり、 ガンマ運動系を抑制する Diazepam の類が第 1 選択薬として全世界で使用さ れている理由を明解に示した。
 
   
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