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千葉医学 77 (3) :113-205, 2001

原著
Gated SPECTにおける収縮末期像を用いての虚血診断精度の検討
 三上雄路  桑原洋一 松野公紀  黒田 徹  藤井清孝 増田善昭
 
ヘリカル CT 搭載検診車による冠動脈石灰化の検出:出現頻度と冠危険因子および冠動脈疾患との関係
 伊谷寧崇 渡辺 滋 増田善昭 花村和久 朝倉和浩 曽根脩輔 角南祐子 志村昭光 宮本忠昭

経胸壁的カラードプラ法を用いた冠血流予備能計測による冠動脈病変の非侵襲的診断:ドブタミン負荷とジピリダモール負荷の比較検討
 長谷川 玲  伏島堅二  鈴木 将  桑原洋一  増田善昭

清涼飲料水がおよぼす歯の脱灰作用
 甲原玄秋 堀江 弘

植物エストロゲンおよび内分泌攪乱物質の精子形成への影響評価に対する DNA マイクロアレイを用いた判定法の開発
 足達哲也 櫻井健一 深田秀樹 小宮山政敏 芝山孝子 井口泰泉 森 千里

千葉大学第 2 外科と関連病院における胃癌の外科治療成績
 鈴木孝雄 落合武徳 軍司祥雄 堀 誠司 林 秀樹

話題
第5回千葉大学医学部チュータ養成ワークショップ
 田邊政裕

学会
第21回千葉県胆膵研究会
第992回千葉医学会例会・第24回放射線科例会
第1001回千葉医学会例会・整形外科例会
第1010回千葉医学会例会・第25回放射線科例会
第1021回千葉医学会例会・第23回千葉大学第 3 内科例会

編集後記

 
   
  Gated SPECTにおける収縮末期像を用いての虚血診断精度の検討
三上雄路  桑原洋一 松野公紀  黒田 徹  藤井清孝 増田善昭  千葉大学医学部内科学第三講座


99mTc-Tetrofosmin 心電図同期心筋SPECT像を応用し、 その収縮末期像を用いて虚血診断精度が上がるかどうかを検討した。 方法として冠動脈正常例17例及び75%以上の狭窄を持つ冠動脈疾患例81例に負荷時99mTc-Tetrofosmin740MBq静注後、心電図同期心筋SPECTを撮像。 正常ファイル20例より求めた正常値をもとにし、extent、severity scoreを収縮末期像、拡張末期像、非同期像それぞれの時相において算出、その値を比較した。ついで正常群のextent、severityscoreの95%信頼間隔を正常上限として冠動脈疾患検出に対するsensitivityも算出、 比較検討した。 結果は、 冠動脈正常例ではextent、severity scoreとも差を認めなかったのに対し、冠動脈疾患例ではextent、severity scoreとも収縮末期像、非同期像、拡張末期像の順であり、 有意差を認めた。 冠動脈疾患検出に対するsensitivityも算出し、 比較検討したところextent scoreでは拡張末期像60.5%、非同期像75.3%、収縮末期像91.4%、severity scoreでは拡張末期像67.9%、非同期像85.2%、収縮末期像91.4%と有意に収縮末期像で高かった。以上より99mTc-Tetrofosmin心電図同期心筋SPECT像を応用し、 収縮末期像を用いて定量的診断をすることにより、specificityを下げずにsensitivityが上がり虚血診断精度が向上すると考えられた。    
 
   
  ヘリカル CT 搭載検診車による冠動脈石灰化の検出:出現頻度と冠危険因子および冠動脈疾患との関係
伊谷寧崇 渡辺 滋 増田善昭 花村和久1) 朝倉和浩1) 曽根脩輔1,2) 角南祐子3) 志村昭光3) 宮本忠昭4)
千葉大学医学部内科学第三講座 1)通信放送機構・松本リサーチセンター 2)信州大学医学部放射線科 3)結核予防会千葉県支部 4)放射線医学総合研究所


X線CT による 冠動脈石灰化の検出と冠動脈疾患との間には強い関連があることはよく知られている。   しかし、 日常生活を送っている一般住民の冠動脈石灰化の実態については知られていない。 そのため、 われわれはヘリカルCT搭載検診車によるマススクリーニングにおける冠動脈石灰化の出現頻度ならびに 冠動脈石灰化と年齢、 性別、 冠危険因子、 冠動脈疾患との関係について検討した。 対象は千葉、 長野両県に在住する10,008例 (男性5,321例、 女性4,687例、 平均年齢58.5±12.5歳) で、 ヘリカルCT 搭載検診車による肺癌検診を受診した。 CT撮影は120kV、 50mA、 連続 10mmスライス厚で行い、 肺尖部から横隔膜まで行った。 冠動脈のCT値を測定したが、 +110HU 以上を冠動脈石灰化の診断閾値とした。 冠動脈石灰化の頻度は男性が女性より有意に高頻度であり (20.6% vs 10.7%, P<0.0001)、 男女とも加齢に 伴って増加した。 分枝別では左前下行枝 (LAD) が最も頻度が高かった。 冠動脈石灰化と冠危険因子との関係では、 高血圧と糖尿病が有意に関係した。 喫煙歴は男性でのみ関係した。 冠動脈疾患との関係では、 男性において有意 な関係が見られたが、 特に60歳未満でオッズ比が最も高く、 また、 男女とも冠動脈石灰化に冠危険因子が増えるに従い、 冠動脈疾患のオッズ比は増加した。 これらの結果より冠動脈石灰化は60歳未満の男性群、 または冠危険因子を多く持つ男女 冠動脈疾患と強く関係すると考えられた。
 
   
  経胸壁的カラードプラ法を用いた冠血流予備能計測による冠動脈病変の非侵襲的診断:ドブタミン負荷とジピリダモール負荷の比較検討
長谷川 玲  伏島堅二  鈴木 将  桑原洋一  増田善昭  千葉大学医学部内科学第三講座


ドブタミン(DOB)に対する冠血流速度の反応を明らかにするためにDOBを負荷し経胸壁カラードプラ法を用いて 左前下行枝 (LAD) の血流速度を計測し、 検出率、血流速度変化率をジピリダモール (DIP) 負荷した場合と比較した。 血流速度変化率によるLAD狭窄病変の診断について感度、 特異度を両薬剤で比較し、 更に狭窄病変の診断に必要なDOBの 最低負荷量を検討した。対象は狭心症58例。 DOB は最高40γまで投与し負荷前、 20、 40γ時にLAD血流速度を計測した。 血流波形より拡張期最高流速 (PDV)、 拡張期平均流速 (MDV) を計測し、 負荷後値を負荷前値で除して冠血流速度変化率 (CFVR) を算出した。 DIP は0.56m g/kgを 4 分間で投与し、 2 分毎に LAD 血流速度を計測し同様に冠血流予備能 (CF R) を算出した。血流検出率はPER負荷89%、 DOB負荷75%であった。 冠動脈造影より70%以上の有意狭窄例21例 (A群) と70%未満の 非有意狭窄例23例 (B群) に分類した。 DOB、 DIP負荷ともA群では血流速度の増加は軽度であったが、 B群では著明に増加した。 A群のCFR、 CFVRはB群より有意に小さかった。 CFR<2.0を基準とするとLAD70%狭窄に対する感度 95%、 特異度91%であった。 CFVR<2.0を基準とするとDOB20γでは感度100%、 特異度78%で、 DOB40γでは感度84%、 特異度85%であった。 DIPとDOB20、 40γの狭窄病変診断の間に感度、 特異度の有意差は認めなかった。 経胸壁的カラードプラ法を用いたLADの 血流速度計測はDOB負荷時にも十分可能であった。 DOB負荷は検出率ではDIP負荷に劣るが、 狭窄病変の診断については同等 であった。 狭窄病変の診断はDOB20γまでの比較的低負荷量でも十分可能であった。
 
   
  清涼飲料水がおよぼす歯の脱灰作用
甲原玄秋 堀江 弘1)   千葉県こども病院歯科、1)病理科


近年、 清涼飲料水による歯の脱灰作用に関し種々の報告がある。 そこで、 今回清涼飲料水による脱灰作用を検討した。 1) 清涼飲料水は炭酸飲料 A、 炭酸飲料 B、 乳酸菌飲料、 スポーツドリンク、 ウーロン茶の 5 種を選択し pH を測定した。 ウーロン茶の6.03を除き他の飲料は2.48から3.46と強い酸性を示した。 2) 交換期のため脱落したウ蝕の無い乳歯を清涼飲料水に浸漬し、 経時的に観察した。 歯の一部はロウで覆い、 同部を同一歯の対照と した。 1日後は炭酸飲料A、Bでエナメル質に白濁を生じ、3 日後にはウーロン茶を除いた飲料水においてエナメル質全体が白濁した。 これらは 7 日後にはエナメル質は脱灰し、 象牙質が露出した。 ウーロン茶は10日間経過後もエナメル質に変化はなかった。 3) 走査電子顕微鏡にて歯の表面を観察した。 ウーロン茶を除いた飲料ではエナメル質が消失し、 象牙質が露出し、 その表面は疎造で あった。 ロウで覆った部分はエナメル質が残存し、 ロウで覆われていない部との移行部はエナメル質の断面が明瞭に確認された。 本実験の浸漬時間と通常の飲用では飲料水が歯に接触する時間は異なる。 しかし、 乳幼児期に哺乳瓶でこれらの清涼飲料水を頻回 に摂取すると歯の脱灰を生じることが推測される。 従って、 乳幼児期に哺乳瓶でのこれらの清涼飲料水の投与には注意を要する。
 
   
  植物エストロゲンおよび内分泌攪乱物質の精子形成への影響評価に対する DNA マイクロアレイを用いた判定法の開発
足達哲也1,2) 櫻井健一2) 深田秀樹3) 小宮山政敏2) 芝山孝子1,2) 井口泰泉1,4) 森 千里1,2 )
1)科学技術振興事業団戦略的基礎研究推進事業(内分泌かく乱物質研究グループ)
2)千葉大学医学部解剖学第一講座 3)深田生命科学研究所  4)岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所統合バイオサイエンスセンター


植物エストロゲンであるゲニステイン (Gen)、合成女性ホルモンであるジエチルスチルべステロール (DES)、 または容器コーティング剤として用いられる Bisphenol A (BPA) をマウス新生仔期に投与することによって、 生殖能を有する時期での精巣において発現が変化する遺伝子を cDNA マイクロアレイ法を用いて検索した。また同時に従来の精巣機能 および精子形成評価を合わせて行った。 DESを50μg/mouse/day、 Genを1mg/mouse/day、またはBPAを0.2mg/mouse/day を、生後すぐから ICR 雄性マウスに 5 日間皮下投与を行った。 3 か月後に体重、精子数、精子運動能、精巣重量を測定した。また精巣からRNAを調製し、 cDNAマイクロアレイ法にて非投与群に対して発現に差のあるものを検索した。DES 投与群において精子数、精子運動能、精巣相対重量は 対照群に比して有意に低値を示した。 またBPA投与群では精子数、精子運動能が有意に低値を示した。 しかしながら、Gen 投与群では 精子数、精子運動能、精巣相対重量に対照群に比して有意な差は認めなかった。各化学物質曝露によって精巣で発現に差の生じた遺伝子は、 マウス cDNA クローン約8800種のうち、DESでは34種、Genでは38種、BPAでは 12種が見い出された。これら結果から、内分泌攪乱物質曝露 によって発現変化を引き起こす遺伝子をcDNAマイクロアレイ法を用い多数の遺伝子について一挙に解析することができた。 Genでは従来の 判定法で変化を認めないにも関わらず、発現変化する遺伝子が存在することが明らかとなった。このことからこれらの遺伝子を内分泌攪乱 物質曝露のマーカーとして利用することができると考えている。
 
   
  千葉大学第 2 外科と関連病院における胃癌の外科治療成績
鈴木孝雄 落合武徳 軍司祥雄 堀 誠司 林 秀樹  千葉大学医学部外科学第二講座


千葉大学の外科の再編を前にして、 第 2 外科の今までの外科治療を総括する作業の一つとして関連病院における 胃癌の外科治療成績に関してアンケート調査を行った。 その結果、1)手術の安全性を示す直接死亡率はほぼ満足の得られる成績で、 第 2 外科の胃癌の外科治療についてのコンセプトが関連病院に十分に浸透していた。 2)胃癌の再発が含まれる在院死亡率では病院の 地域による格差が見られた。3)進行程度別に見た予後は良好であった。今後、外科の手術を evidence based で行うために、術式を 評価する共同研究を積極的に進めることが望まれた。
 
   
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