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千葉医学 77 (4) :207-299, 2001

原著
再灌流療法を施行した心筋梗塞早期におけるdipyridamole負荷Tc-99m心筋SPECTの臨床的意義の検討:その経過および123I-BMIPP心筋SPECTとの比較
 木ノ下敬彦 桑原洋一 鹿間 毅 松野公紀 黒田 徹 粟生田輝 藤井清孝 小宮山伸之 増田善昭
 
左鎖骨下動脈遮断を要する胸部大動脈瘤手術における椎骨動脈潅流不全の防止について
 武内重康 中島伸之 沖本光典 安藤太三

ジピリダモール負荷ポジトロン CT を用いた心基部から心尖部にかけての長軸方向の血流解析による瀰漫性冠動脈硬化の評価
 中川優子

血清thrombomodulin濃度は冠動脈病変進展と逆相関し、tumornecrosisfactorα、ホモシステイン、およびVCAM-1濃度とは正の相関がある
 山本雅史 渡邉 滋 小宮山伸之 宮崎 彰 増田善昭

高周波カテーテルアブレーションのペースメーカーに対する影響:通電中にペースメーカーリードに生ずる高周波電圧の測定から
 石川隆尉 増田善昭

症例
硬膜との結合がみられない馬尾発生の明細胞髄膜腫の2例
 銅冶英雄 三枝 修 斎藤正仁 喜多恒次 小泉 渉 小林照久 村上正純

話題
磯野可一学長 日本医師会医学賞受賞(1998年)
 落合武徳
安達惠美子教授 日本医師会医学賞受賞(2000年)
 川村純一
Stanford 大学医学部 General Internal Medicine (GIM) を見学して
 田川まさみ

らいぶらりい
Hughes syndrome
 倉沢和宏

学会
第14回千葉県重症患者管理研究会
第978回千葉医学会例会・平成10年度千葉大学第二外科例会
第994回千葉医学会例会・平成11年度千葉大学第二外科例会
第1011回千葉医学会例会・平成12年度千葉大学第二外科例会

編集後記

 
   
  再灌流療法を施行した心筋梗塞早期におけるdipyridamole負荷Tc-99m心筋SPECTの臨床的意義の検討:
その経過および123I-BMIPP心筋SPECTとの比較
木ノ下敬彦 桑原洋一 鹿間 毅 松野公紀 黒田 徹 粟生田輝 藤井清孝 小宮山伸之 増田善昭
千葉大学医学部内科学第三講座


【目的】血行再建に成功した心筋梗塞早期にdipyridamole負荷Tc-99m心筋SPECTを施行し、可逆的集積低下出現の意義を心筋血流および脂肪酸代謝障害領域との関連および経過により検討する。 【方法】完全血行再建を施行し得た初回心筋梗塞23例を対象とした。平均3.8病日にdipyridamole負荷Tc-99m心筋SPECTを施行し、負荷時および安静時SPECT像の欠損を14領域のtotaldefectscore(TDS)にて半定量的に評価した。平均7.2病日に施行したBMIPPシンチも同様に評価した。6カ月後に血管造影で再狭窄を認めない症例の一部に対してdipyridamole負荷Tc-99m心筋SPECTを再検した。 【結果】負荷時のTDS(13.1±9.5)は安静時のTDS(9.1±8.9)より有意に大(P<0.001)であり、BMIPPのTDS(13.8±8.2)と同程度であった。6カ月後の再検を行った6症例においては、負荷時TDSは急性期11.5±2.9から慢性期8.2±4.9へと有意に低下し、安静時の慢性期TDS(6.8±6.2)と有意差は消失した。 【結語】完全血行再建を施行した急性心筋梗塞において、早期dipyridamole負荷時Tc-99m心筋SPECTの可逆的欠損領域はBMIPPの欠損領域と同等であり、急性冠血流低下による心筋障害の領域に重なることが示された。またこの領域は経過とともに著明に減少し、急性期冠血行再建療法によりsalvageされた心筋領域を描出していると考えられた。
 
   
  左鎖骨下動脈遮断を要する胸部大動脈瘤手術における椎骨動脈潅流不全の防止について
武内重康 中島伸之1) 沖本光典2) 安藤太三3)  成田赤十字病院心臓血管外科 1)千葉大学医学部外科学第一講座
2)千葉県救急医療センター心臓血管外科  3)国立循環器病センター心臓血管外科


1985年1月から1999年12月までに、術中左鎖骨下動脈の遮断を要した胸部大動脈瘤手術症例中、119例に術前DSAによる脳血管造影を施行した。その内訳は、男女比91:28、平均年齢61.4歳 (28〜80歳) で、解離性大動脈瘤43例 (Stanford A 型2 7例、 B 型16例)、真性大動脈瘤74例 (上行11例、 弓部43例、 下行20例)、仮性動脈瘤2例であった。緊急手術例は、29例で、脳血管障害の既往を12例に認めた。施行した術式は、人工血管置換103例、パッチ閉鎖15例、試験開胸1例であった。病院死亡を12例 (10.1%) に認めた。術前の DSA による脳血管造影所見では、左椎骨動脈優位型を3 3例 (27.7%) に認め、うち12例 (10.1%) は著しく左側優位であった。椎骨動脈の左右の交通性を認めない例を 8 例 (6.7%)、他の閉塞性病変も3例に認めた。術前の脳血管造影所見に基づき、119例中22例 (18.5%) に術中左鎖骨下動脈遮断中、左椎骨動脈に潅流を追加し、血行の維持に努めた。術中の左椎骨動脈潅流法は、脳分離体外循環を使用した例が16例、左心バイパス法 3 例、一時バイパス法3例であった。術後脳脊髄障害を17例 (14.3%) に認めたが、術中の左鎖骨下動脈遮断による椎骨脳底動脈系の潅流不全が原因と思われる症例は無かった。術中左鎖骨下動脈の遮断を要する胸部大動脈瘤手術症例では、術前脳血管造影による評価を行い、左鎖骨下動脈遮断の安全性を確認し、術中椎骨動脈の血行を維持することにより、椎骨動脈の血流低下が原因となる脳脊髄障害を防止することができると思われた。
 
   
  ジピリダモール負荷ポジトロン CT を用いた心基部から心尖部にかけての長軸方向の血流解析による瀰漫性冠動脈硬化の評価
中川優子 千葉大学医学部内科学第三講座


瀰漫性冠動脈硬化は通常限局性狭窄に伴うと考えられるが、現行の非侵襲的検査や冠動脈造影では捉え難い。そこで正常群(17名)と冠動脈造影で狭窄を有する患者群(30名)にジピリダモール負荷N-13アンモニアポジトロンCTを行い心基部から心尖部への長軸的血流分布を評価した。心血流像を心長軸沿に25短軸像にわけ、各短軸像を前壁、左室中隔、左室側壁、後壁にわけた。各側面で各短軸像の相対血流値を長軸方向にグラフ表示し3次式近似を行った。中等度血流欠損群(20名)は左室中隔以外で心尖部で血流低下を認め、高度血流欠損群(10名)は、全側面で左室中央部から高度な血流低下を認めた。一枝及び二枝疾患患者12名は、冠動脈造影上狭窄を認めない領域で血流欠損像を認めた。限局性冠動脈病変を有する患者で、ジピリダモール負荷ポジトロンCTで心臓長軸方向で血流分布の低下を認め、瀰漫性冠動脈硬化が示唆された。冠動脈造影で認め難い瀰漫性冠動脈硬化を、ポジトロンCTの血流分布で捉えられると思われた。
 
   
  血清thrombomodulin濃度は冠動脈病変進展と逆相関し、tumornecrosisfactorα、ホモシステイン、およびVCAM-1濃度とは正の相関がある
山本雅史 渡邉 滋 小宮山伸之 宮崎 彰 増田善昭  千葉大学医学部内科学第三講座


冠動脈の動脈硬化の進展と各種動脈硬化促進因子の血清濃度との関係を調べ、第一にトロンボモデュリン(TM)が、冠動脈硬化の進展に比例して上昇するのではなく、内皮機能障害が進むことでTM産生能も低下する仮説を調べた。第二に、TM、VCAM-1、ホモシステイン(HC)、TNF-αが相互に作用しあっている可能性の傍証として各種分子の血清濃度の相関関係を検討した。経皮経管冠動脈形成術(PTCA)を施行した48例(男性36例、女性12例、平均年齢59±8歳)に対し、空腹時の動脈血採血をヘパリン注射前に行った。冠動脈硬化の進展の指標として、1)病変枝数、2)Gensiniscore、および3)Coronaryextentscoreを用いた。 病変枝数で群分けした場合では、いずれの物質の血清濃度も群間で有意差は認められなかった。Gensiniscoreが40未満の群と40以上の群で分けた場合では、Gensiniscoreが40以上の群でHbA1cは有意に高く、TMは有意に低かった。Coronaryextentscore(狭窄箇所数)が1箇所の群と、2〜4箇所の群および5箇所以上の群で分けた場合では、群間有意差を認めた物質はTMのみであり、狭窄箇所数の増加に連れて血清濃度が低下する傾向にあった。また、TM、VCAM-1、HC、TNF-αの間には、互いに強い相関が認められた。 この結果の説明として、病変の進展とともに血管内皮機能が障害されてTM産生が低下したと考えられる。また、HCとTMの間の強い相関は、HCが血管内皮細胞にダメージを与えてTMの遊離や発現を促している可能性を示唆している。同様に、HCがVCAM-1の発現に関与している可能性や、TNF-αが血管内皮細胞におけるTMの発現を促している可能性が考えられた。
 
   
  高周波カテーテルアブレーションのペースメーカーに対する影響:通電中にペースメーカーリードに生ずる高周波電圧の測定から
石川隆尉 増田善昭1)   千葉県循環器病センター 1)千葉大学医学部内科学第三講座


高周波カテーテルアブレーション(RFCA)のペースメーカー(PM)に対する影響を検討するため、高周波(RF)通電中にペースメーカーリード(PML)に生ずるRF電圧を測定した。 【基礎検討】生理食塩水中のブタ心臓に、RFCA用カテーテルと通常の電極カテーテルを留置し、両者の距離を様々に変化させ、RFCA用カテーテルより通電した。通常の電極カテーテルで測定されるRF電圧は、両者の距離が小さくなる程大きくなり、接触時は35.6Vp-pであった。 【臨床検討】対象は、上室性頻拍性不整脈を有しRFCAを行った20例、A型WPW症候群7例、B型WPW症候群1例、房室結節回帰性頻拍11例、右房起源心房頻拍1例、男12例、女8例、平均年齢49.4±13.9才。方法:RFCA時に、鎖骨下静脈からPMLを右室心尖部に挿入し、通電中にPMLに生ずるRF電圧をオシロスコープにて測定した。15例では、通電出力を同時測定した。結果:20例に対する67回の通電で、PMLに生ずるRF電圧は、93.0±44.4mVp-p、最大228mVp-p、最小18.4mVp-pであった。15例に対する59回の通電で、通電出力は、38.8±11.7Wであった。通電出力を1Wと仮定した場合にPMLに生ずるRF電圧は14.5±6.0mVp-pであった。結論:基礎検討では、電極の接触時に大きな電圧が発生した。しかし臨床検討では、PMLに生ずるRF電圧は、通電した電圧に比較してかなり小さく、カテーテルの位置に注意を払えば、PM植え込み患者に対するRFCAは安全と思われた。
 
   
  1硬膜との結合がみられない馬尾発生の明細胞髄膜腫の2例
銅冶英雄 三枝 修 斎藤正仁 喜多恒次 小泉 渉 小林照久 村上正純 1)
成田赤十字病院整形外科   1)千葉大学医学部整形外科学講座


 腰椎部に発生する髄膜腫は稀であるが、そのなかでも多くは硬膜に接して発生し、馬尾から発生するものはきわめて稀である。今回われわれは、下肢の疼痛および筋力低下で発症した馬尾発生の明細胞髄膜腫の 2 例を経験し報告した。症例 1 は23歳男性、症例 2 は 5 歳女性で術前診断はいずれも MRI にて馬尾に発生した神経鞘腫か神経上衣腫と思われたが、組織学的には両者とも髄膜腫であり、WHO の脳腫瘍新分類によるサブタイプでは明細胞髄膜腫と診断された。くも膜と硬膜はあわせて髄膜とよばれ、 髄膜腫はくも膜細胞由来であるため、通常は硬膜に強固に結合している。馬尾には髄膜が存在しないため今回の2 症例は一種の過誤腫的性格をもつものではないかと思われた。われわれが渉猟しえた範囲では、馬尾に発生した髄膜腫は今までに 4 例が報告されており、サブタイプはすべて明細胞髄膜腫であった。
 
   
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