|
千葉医学雑誌一覧 |
|
|
千葉医学 77
(6) :383-447, 2001
■原著
人工股関節置換術後のosteolysisに対する組織学的検討
赤松利信 原田義忠 守屋秀繁
教室における術後イレウス症例の検討
松崎弘志 岡住慎一 高山 亘 竹田明彦 福長 徹 岩崎好太郎 首藤潔彦 青山博道 篠藤浩一 今関英男 浅野武秀 鈴木孝雄 落合武徳
日本の児童における呼吸器症状と血清プロテアーゼ・インヒビター濃度の関連についての追跡研究
鈴木仁一 島 正之 安達元明
■症例
フェイトイン長期過量投与による軸素型多発ニューロパチー
吉川由利子 桑原 聡 三澤園子 新井公人 服部孝道
胸部大動脈瘤ステントグラフト内挿術 3 例の経験
ピアス洋子 林田直樹 村山博和 松尾浩三 浅野宗一 大橋幸雄 黄野皓木 半田武巳 龍野勝彦 川口 聡 島崎太郎 横井良彦 石丸 新
■らいぶらりい
Evidence-Based Diagnosis
野村文夫
■研究報告書
平成12年度猪鼻奨学会研究補助金による研究報告書
■学会
第1009回千葉医学会例会・第21回歯科口腔外科例会
第1014回千葉医学会例会・第35回肺癌研究施設例会
第1022回千葉医学会例会・第 1 内科教室同門会例会
■編集後記
|
|
|
|
|
|
●人工股関節置換術後のosteolysisに対する組織学的検討
赤松利信 原田義忠 守屋秀繁 千葉大学医学部整形外科学講座
[目的] 人工股関節置換術 (THA) 後の implant 周囲骨融解 (osteolysis) の機序として, 摩耗粉に対する異物反応および破骨細胞性骨吸収が主に考えられている。 polyethylene particle (PE) と,その貪食や骨吸収に携わるとされる多核巨細胞に注目し, 再置換術施行症例の病理組織学的検討を行った。
[方法] THA 施行後, osteolysis を認めた41症例の implant 周囲膜様組織を, @臼蓋底A大腿骨近位部B大腿骨遠位部の部位別に採取した。 TRAP (酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ) 染色を行い, 組織所見とX線所見に関し, 評価を行った。
[結果] osteolysis 組織中の PE 数と TRAP 陽性多核巨細胞数は, どの部位間の比較においても有意差を認めなかった。 X 線上の線摩耗量と組織中の PE 数の間には, 全ての部位において有意な相関関係を認めた。 一方, PE 数と TRAP 陽性多核巨細胞数の関係を部位別に見ると, 臼蓋側では, 有意な相関を認めるものの, 大腿骨側では相関を認めなかった。
[考察および結論] 今回の検討から, THA 後の osteolysis 症例において, PE は臼蓋, 大腿骨近位, 大腿骨遠位のどの部位にも均等に流入していること, それぞれの部位での骨吸収反応の程度にも差がないことが示唆された。 しかしその一方で, 臼蓋側では PE と骨吸収の密接な関連が示唆されるものの, 大腿骨側では, PE と骨吸収の直接の関連は否定的であった。 つまり, 臼蓋側の骨吸収には PE の流入が重要であるが, 大腿骨側では, 骨吸収は PE の流入のみでは起こりえないことが示唆された。 THA においては, mechanical stress が臼蓋側と比べ大腿骨側でより多彩であり, それが骨吸収反応にも反映されるのではないかと考えられた。
|
|
|
|
|
|
●教室における術後イレウス症例の検討
松崎弘志 岡住慎一 高山 亘 竹田明彦 福長 徹 岩崎好太郎 首藤潔彦 青山博道 篠藤浩一 今関英男 浅野武秀 鈴木孝雄 落合武徳 千葉大学大学院医学研究院先端応用外科学
1986年から95年までに経験した術後イレウス症例237例について検討した。 イレウスのため入院した213例を晩期イレウス症例とし, 腹部手術後在院中にイレウスで再手術を行った24例を早期イレウス症例とした。 初回手術部位では胃・十二指腸が111例と最も多かった。 単純性イレウスが87.3%, 複雑性が4.6%であった。 悪性腫瘍の再発によるイレウスは全体の 8.0%を占めた。 長期保存群と待機手術群のイレウス管平均流出量は, 手術群では 5 日目で556mlであるのに対し, 保存群では48mlと減少しており, 5 日目までの流出量が手術適応を決定する一助になりうると思われた。 早期イレウス症例では, 再手術までの期間が14〜21日間の症例で手術時間が長く, 出血量も多かった。 癒着性イレウス治療後の再発率は保存群より手術群の方が有意に低く, 手術を選択することが結果的に患者の QOL の向上につながることが少なくないと考えられた。
|
|
|
|
|
|
●日本の児童における呼吸器症状と血清プロテアーゼ・インヒビター濃度の関連についての追跡研究
鈴木仁一 島 正之 安達元明 千葉大学大学院医学研究院公衆衛生学
欧米では呼吸器疾患の危険因子として血清プロテアーゼ・インヒビターの欠損が知られているが, 日本人における意義は明らかではない。 日本の児童における血清プロテアーゼ・インヒビター及びアルブミン濃度と呼吸器症状との関連について検討するため, 千葉県君津市の 3 小学校の 4 〜 3 年生 (1992年度) を対象に1992〜1995年の 4 年間の追跡調査を行った。 呼吸器・アレルギー症状と受動喫煙への曝露状況は年 1 回質問票調査により評価し, 1992, 1994, 1995年には採血を行い, 血清中α1-アンチトリプシン (α1AT), α2-マクログロブリン (α2MG) 及びアルブミン濃度を測定した。 本研究では, 1995年の質問票調査及び血液検査の結果が得られた652名 (男子327名, 女子325名) を対象に解析を行った。 血清α1AT及びα2MG濃度は, 年齢により変動が認められた。 1992年に血清α1AT濃度が低値であったものは, 1995年の喘息, 喘鳴症状及びアレルギー疾患を有する割合が有意に高かった。 血清α2MG濃度と喘息, 喘鳴, アレルギー疾患との関連はみられなかった。 1992年に喘息症状を有した女児の血清アルブミン濃度は, 症状のない女児に比べて有意に低かった。 血清α1AT及びα2MG濃度と家庭内における受動喫煙への曝露との関連は認められなかった。 以上より, 児童の血清α1AT及びアルブミン濃度は, 喘息, 喘鳴症状及びアレルギー疾患との関連があることが示された。 特に, 血清α1AT濃度が低値であることは, その後の喘息とアレルギー疾患を予測する因子となる可能性があると考えられた。
|
|
|
|
|
|
●フェイトイン長期過量投与による軸素型多発ニューロパチー
吉川由利子 桑原 聡 三澤園子 新井公人 服部孝道 千葉大学医学部神経内科学講座
フェニトインを長期間服用した場合は, 通常の用量でも軽度の末梢神経障害が生じる可能性があるが, 軽度の感覚障害が主体であり, 重篤な運動障害を呈する報告はない。 我々は, 約 2 年にわたり血中濃度が39-49μg/ml (治療域10-20μg/ml) と中毒域が続き, その結果脳症とともに高度の多発ニューロパチーを呈した症例を報告する。 症例は41歳男性で, フェニトイン300mg投与中に意識障害と顕著な筋萎縮が緩徐に進行した。 神経伝導検査では軸索変性を示し, 下肢で複合筋活動電位と感覚神経活動電位の振幅は著明に低下していた。 腓腹神経生検では大径有髄線維優位に軸索が脱落していた。 本症例では, 数年にわたりフェニトインの血中濃度が40μg/ml前後で持続すると高度の末梢神経軸索変性が生じうることが示された。
|
|
|
|
|
|
●胸部大動脈瘤ステントグラフト内挿術 3 例の経験
ピアス洋子 林田直樹 村山博和 松尾浩三 浅野宗一 大橋幸雄 黄野皓木 半田武巳 龍野勝彦 川口 聡1 ) 島崎太郎1 ) 横井良彦1 ) 石丸 新1 ) 千葉県循環器病センター心臓血管外科1 )東京医科大学第二外科
3 例の開胸手術が困難と思われる症例に対し, ステントグラフト内挿術を施行した。 1 例は外傷による肺挫傷後の大動脈峡部の仮性瘤, 2 例目は気管支喘息の既往がある Stanford B 型大動脈解離術後の中枢側吻合部瘤, 3 例目は低肺機能がある Stanford A 型大動脈解離に対し上行大動脈置換を施行後, 遠位弓部の残存解離が径 6cm以上となった症例である。 総大腿または外腸骨動脈から, tug of wire 法[2]にて20F の sheath より 4 連の self expandable Gianturco Z-stent と平織りポリエステルグラフト (UBE, thin wall) で作成されたステントグラフトを内挿した。 手術時間は 2 時間半から 3 時間で, 術後 endoleak もなく良好に経過した。 長期遠隔成績が不明な新しい治療法であり, 厳重な経過観察を必要とすると思われるが, 今まで外科治療が難しいとされたこれらの症例に対する新しいオプションとして期待される。
|
|
|
|
|
|
お問い合わせ e-mail
: info@c-med.org |
|