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千葉医学雑誌

千葉医学雑誌一覧
 
千葉医学 83 (6) :217-264, 2007

総説
腰椎椎間板障害
 高橋和久(和文・PDF

原著
Western blottingを用いたV型コラーゲン分泌減少の検出: そのvascular Ehlers-Danlos syndromeのスクリーニングにおける有用性
 溝口雅子 百田 豊 小林孝志 松江弘之 新海 浤 宇谷厚志(英文・PDF/HTML

口腔癌におけるcathepsin B遺伝子の発現亢進
 吉田成秀 椎葉正史 野村仁美 遠藤洋右 小野可苗 小河原克訓 武川寛樹 横江秀隆 鵜澤一弘 丹沢秀樹(英文・PDF/HTML

話題
『長尾文庫』のこと
 樋口誠太郎(和文・PDF

らいぶらりい
焼かれる前に語れ ― 司法解剖医が聴いた哀しき「遺体の声」―
 石出猛史 (和文・PDF
海外だより
アメリカ研究生活7年目を迎えて
 栃木祐樹 (和文・PDF
UCLAに学ぶ
 大野 泉 (和文・PDF
  学会
第1137回千葉医学会例会・平成18年度細胞治療学例会(和文・PDF
第1144回千葉医学会例会・第16回千葉泌尿器科同門会学術総会(和文・PDF

雑報
胸部単純X線読影の名人芸
 関根郁夫(和文・PDF
編集後記(和文・PDF
83巻総目次・索引

 
   
  腰椎椎間板障害
 高橋和久  千葉大学大学院医学研究院整形外科学


 多くの腰痛は重篤なものではないが,一般人口における頻度は極めて高い。腰痛は原因が明らかな特異的腰痛と,原因が不明な非特異的腰痛とに分類されるが,後者が全体の80〜90%と多数を占める。従来,椎間板は非特異的腰痛の原因部位と考えられてきた。しかしながら,X線像やMRIなどの各種画像検査にて椎間板の異常がみられても,腰痛を生ずるとは限らず,その病態には不明な点も多く残されている。本稿では,腰椎椎間板障害に関連した,椎間板のバイオメカニクス,主として教室にて行われてきた椎間板性疼痛に関する基礎的研究,椎間板障害の臨床,将来の展望について述べた。今後,腰椎椎間板障害に関する基礎的・臨床的な研究の進歩により,腰痛に対する予防や治療に新たな道が開かれることを期待する。
 
   
  Western blottingを用いたV型コラーゲン分泌減少の検出: そのvascular Ehlers-Danlos syndromeのスクリーニングにおける有用性
 溝口雅子1) 百田 豊1) 小林孝志1) 松江弘之1) 新海 浤1) 宇谷厚志1,2)  
 1) 千葉大学大学院医学薬学府先端生命科学専攻基質代謝学 2) 京都大学大学院医学研究科皮膚科学


 血管型Ehlers-Danlos syndrome(EDS)は,動脈の破裂などにより突然死が多く,非常に予後が不良な病型であり,早期の診断が望まれるが,臨床症状が軽度のため診断が困難な場合が多い。同症が疑われる患者の線維芽細胞より分泌されたV型コラーゲンの多寡をWestern blottingを用いて検出することがスクリーニングに役立てられるか検討した。  患者23例及び健常者皮膚より得た線維芽細胞を培養し,培養上清より得た蛋白にSDS6%ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い,PVDF membraneに転写し,抗ヒトコラーゲンV型抗体を用いてV型コラーゲンを検出,T型コラーゲンについても同様に検出した。  臨床所見から積極的に血管型EDSを疑う症例は23例中14例あり,この14例中8例(57.1%)において,Western blottingでIII型コラーゲンの分泌減少が認められた。また,残りの9例中1例(11.1%)においても減少が見られた。  Western blottingでV型コラーゲンの分泌減少が明らかで無くともCOL3A1に遺伝子変異がある可能性は否定できないが,減少が明らかな場合はCOL3A1の解析を待たずとも血管型EDSとして対処することが可能と考えられた。また,血管型EDSを疑わせる異常がなくとも,Western blottingで減少を認める場合があり,EDSを疑う際は血管型の可能性を考慮し,Western blottingで蛋白質レベルでの検討を行うことは有用であると考えられた。 細胞数が多いとする既報告とはやや異なる結果であった。これらの結果の相違は地域差やデータの集計年度の差を反映している可能性が考えられた。

 
   
  口腔癌におけるcathepsin B遺伝子の発現亢進
 吉田成秀1) 椎葉正史1) 野村仁美1) 遠藤洋右2) 小野可苗2) 小河原克訓1) 武川寛樹2) 横江秀隆2),鵜澤一弘1) 丹沢秀樹1,2)
 1) 千葉大学大学院医学研究院臨床分子生物学講座 2) 千葉大学医学部附属病院歯科・顎・口腔外科


 染体色8p領域の遺伝子異常は口腔癌を含む多くの癌において重要と考えられている。特に8p22領域についてはこの領域に存在するFEZ1遺伝子の発現減弱が口腔癌で認められることをわれわれは報告してきたが,本研究では同様に8p領域に存在するcathepsin B遺伝子の発現について検索し,口腔癌症例における臨床諸指標との関連を検討した。47症例の口腔癌手術検体からmRNAを抽出して定量的リアルタイムRT-PCR法にてcathepsin BのmRNAの発現を調べた。健常組織での発現と比較してcathepsin B遺伝子の発現が亢進していたのは全47症例中で38症例(80.9%)であり,また,その発現量の比較でも舌癌と正常組織ではcathepsin B遺伝子の発現量中央値はそれぞれ2.10および0.89であり,有意にcathepsin B遺伝子の発現亢進がみられることが示された(P<0.001)。臨床諸指標とcathepsin B遺伝子発現との関連では分化度の低いもの(P=0.035),腫瘍の大きさが大きいもの(P=0.006),頸部リンパ節転移を認めるもの(P=0.009),病期が進んでいるもの(P=0.001)ほどcathepsin B遺伝子発現が亢進していることが明らかになった。本研究の結果からcathepsin B遺伝子発現の亢進が口腔癌において認められることが示され,舌癌における染色体8p22領域の重要性が示唆された。また,臨床諸指標との関連が強くみられたことからcathepsin Bタンパクを標的とした分子標的治療の可能性が見込まれる。

 
   
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