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千葉医学雑誌


千葉医学雑誌一覧
  千葉医学 84 (1) :1-52, 2008 
総説
「魅力ある大学院教育」イニシアティブ(大学院GP-Good Practice)
情報集積型医療創薬を担う若手研究者の育成」
−本教育プログラムの概要と整備−
 田村 裕(和文・PDF

講座
江戸の腑分と小塚原の仕置場
 石出猛史(和文・PDF)

原著
大腸癌に対するNo-touch Laparoscopic Anterior Resection
 牧野治文  岡住慎一 宮崎信一 林 秀樹  宮内英聡 千葉 聡 望月亮祐
 清水孝徳 遠藤正人 松井芳文  菅本祐司 落合武徳 五十嵐辰男(英文・PDF/HTML
光電容積脈波による連続血圧モニター
 近藤針次 下山一郎 吉田明夫 吉崎英清 林 文明 長尾啓一 織田成人(英文・PDF/HTML
大殿筋穿通枝皮弁による仙尾骨領域の再建
 長谷川正和 黒木知明 秋田新介 佐藤真嘉 宇田川晃一 吉本信也 一瀬正治(和文・PDF)

症例
Implantationによると思われる器械吻合部の再発をきたしたS状結腸癌の1例
 宇田川郁夫 セレスタRD 渡邊茂樹 菊地紀夫(和文・PDF)

海外だより
ケンタッキー大学留学記
 坂本信一(和文・PDF
ボストン留学記
 荻野修平(和文・PDF)
サンディエゴ留学記
 村田 亮(和文・PDF)

学会
第1139回千葉医学会例会・第24回神経内科教室例会(和文・PDF
編集後記 (和文・PDF

 
   
  江戸の腑分と小塚原の仕置場
 石出猛史
 千葉大学大学院医学研究院循環病態医科学


 旧幕時代,江戸小塚原の仕置場では磔刑・火刑および梟首が行われ,罪囚のみならず江戸市中で弊れた牛馬も埋葬されたが,処刑された罪囚の遺体を用いて度々人体解剖も行われた。小塚原の仕置場で解剖が行われた理由として,小伝馬町の牢屋敷で処刑された罪囚の埋葬地であったことから,遺体の管理をする上で好都合であったためと考えられる。明和8年に杉田玄白らが関った解剖は医学史上特筆されている。その理由として,実見した人体の内部構造と比較して,ドイツの解剖学書をオランダ語に訳した“Taffel Anatomia”の記述が正確であることを確認し,同志と共にその解剖学書の日本語訳を行い,これを出版したこと。さらにこの事業が後の蘭学研究の隆盛をもたらしたことが挙げられる。『蘭学事始』の記述から,岡田養仙・藤本立泉ら,幕府の医師が早くから解剖に立ち合ってきたことは明かである。また幕末には,幕府種痘所の医師たちが解剖を行った記録も残されている。しかし幕府の医師たちによる解剖の観察記録は見出されていない。幕府の非公開主義によるものであろうか。従って『臓志』を著した山脇東洋以前に,解剖を行った医師がいないとは断定できない。

 
   
  大腸癌に対するNo-touch Laparoscopic Anterior Resection
 牧野治文1) 岡住慎一2) 宮崎信一2) 林 秀樹1) 宮内英聡2)
 千葉 聡5) 望月亮祐2) 清水孝徳2) 遠藤正人3) 松井芳文4) 菅本祐司6) 落合武徳2) 五十嵐辰男1)
 1) 千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター手術・生体機能支援機器研究部門
 2) 千葉大学大学院医学研究院先端応用外科学 3) 熊谷総合病院外科
 4) 清水厚生病院外科 5) 成東病院外科 6) 沼津市立病院外科学


【目的】大腸癌治療においてNo-touch Isolation Techniqueの概念に基づき,No-touch Laparoscopic Anterior Resectionを行い,その有用性を検討する。
 【対象】2002年7月より2003年12月までに,腹腔鏡下前方切除術を内側アプローチおよびNo-Touch Isolation Techniqueを用いて手術を行った,S状結腸癌および上部直腸癌,男性16例,女性7例の23例。年齢: 50〜80歳(平均年齢64.0歳)
 【方法】腹腔鏡下にて内側アプローチを用いS状結腸および直腸を受動した後,術中の腫瘍細胞の播種を予防するため,腫瘍の流入流出血管の結紮・切離と腫瘍の肛門側の腸管の遮断を行った。
 【結果】平均手術時間204分(110〜310分)。術中偶発症および開腹移行例0例。平均術後在院日数9.0日(7〜14日)。平均出血量61.5ml(0〜350ml)。平均郭清リンパ節数18.9個(5〜48個)。と良好な結果を得た。
 【考察】大腸癌治療におけるNo-touch Laparoscopic Anterior Resectionの安全性と有用性が示唆された。また,No-touch Laparoscopic Anterior Resectionは術中の腫瘍細胞の播種を防ぐ可能性があり,今後長期の経過観察が必要と考えられた。
 
   
  光電容積脈波による連続血圧モニター
 近藤針次1,2) 下山一郎1) 吉田明夫1) 吉崎英清1) 林 文明1) 長尾啓一1,3) 織田成人1,4) 
 1)千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター
 2)株式会社ケーアンドエス 3)千葉大学総合安全衛生管理機構
 4) 千葉大学医学研究院救急集中治療医学


 連続血圧モニターは重症患者に必須で血圧低下を適切に診断することは重症患者の予後まで左右する。動脈穿刺と留置カテーテルによるAラインがもっとも信頼され集中治療管理では主流であるが,血管穿刺手技・疼痛・感染の危険性・コネクターからの漏出事故などの注意を要する。連続血圧モニターの侵襲を極力すくなくするために,光電容積脈波からの連続血圧推測アルゴリズムを提案する。カフと聴診器による伝統的なRiva-Rocci/Korotkoff法からオシロメトリック法の普及,さらには指尖に装着するFinapres®の出現によりAラインの合併症からかなり開放されたが,指尖遠位部のうっ血の問題がのこり連続30分が限度とされる。倫理委員会ならびに2協力者からの研究同意承諾後,Finapres®Rと光電容積脈波からの血圧連続推定の同時計測1名,橈骨動脈Aラインと他側の橈骨動脈光電容積脈波推定の同時計測1名施行した。Finapres®Rと光電容積脈波推定との収縮期圧の相関係数は0.45,拡張期圧の相関係数は0.56であり,橈骨Aラインと他側橈骨光電容積脈波推定では収縮期圧相関係数0.90,拡張期圧0.83であった。Aライン法ならびにカフによる血圧測定はその部分の動脈圧を示すが,Finapres®Rも光電容積脈波を利用しているために100%動脈圧を反映していない。本法も光電容積脈波をオシロメトリックによる血圧から推定のためプローベにおける透過光すべてを反映するため毛細血管におけるヘモグロビン動態も反映される。これらを考慮すると計測する組織に特化した値と限定されるが呼吸循環機能を反映した1計測法として提案する。
 
   
  大殿筋穿通枝皮弁による仙尾骨領域の再建
  長谷川正和1)  黒木知明1)  秋田新介1)  佐藤真嘉1)  宇田川晃一2)  吉本信也2)  一瀬正治2)
 1) 成田赤十字病院形成外科 2) 千葉大学大学院医学研究院形成外科学


 大殿筋穿通枝皮弁は,大殿筋を穿通する皮膚穿通枝のみを栄養血管とする皮弁であり,皮弁に大殿筋を含めない。  今回当科では,2005年10月から2007年8月までの1年10ヶ月間に7例(仙骨部褥瘡,尾骨部褥瘡,尾骨部放射線潰瘍)の仙尾骨領域の再建に本法を施行した。挙上した皮弁の大きさは最小で6×4p,最大で24×10pと15×9pの双葉皮弁であった。本法による皮弁の移動の自由度は高く,栄養血管を中心に180°回転させることも可能であった。全例で皮弁は完全生着し,血行は安定しており,現在再発症例は認めていない。  本皮弁は,筋体を含まないため,大殿筋機能を温存可能であること,筋皮弁と比較し術中出血量が少ないこと,などの利点があり,仙尾骨領域の再建法として有用であると思われた。
 
   
  Implantationによると思われる器械吻合部の再発をきたしたS状結腸癌の1例
 宇田川郁夫1) セレスタRD 渡邊茂樹 菊地紀夫
 国保匝瑳市民病院外科 1) 現千葉労災病院外科


 症例は59歳男性。2型S状結腸癌に対しS状結腸切除術を施行した。吻合直前に肛門より2lの生理食塩水にて腸管内洗浄を行い器械吻合を行った。病理診断は中分化腺癌でssγ,ly1,v3,no,aw(−),ow(−),stageUであった。術後2年目の定期大腸内視鏡検査で吻合部のすぐ肛門側に再発を認めた。また,肝S6に転移を認め,腹会陰式直腸切断術+肝S6亜区域切除術を施行した。直腸・結腸癌に対する器械機吻合は安全で優れた吻合法であるが,implantationに対する局所再発の予防としての腸管内洗浄はその方法及び洗浄液に更なる工夫が必要であると思われた。
 
   
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