千葉医学会 The Chiba Medical Society
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千葉医学雑誌

千葉医学雑誌一覧
 
千葉医学 84 (5) :221-259,2008

講座
江戸幕府による腑分の禁制
  石出猛史(和文・PDF
腹腔鏡下アカラシア手術の実際
  阿久津泰典 林 秀樹 川平 洋 首藤潔彦 上里昌也 星野 敢
  鍋谷圭宏 夏目俊之 宮内英聡 坂田治人 大平 学 松原久裕(和文・PDF

原著
千葉県下における頭痛診療の実態: 医師を対象としたアンケート調査
 朝比奈正人 服部孝道(和文・PDF

症例
右鎖骨下動脈起始異常を伴う食道癌の1例
 森嶋友一 豊田康義 里見大介 青木靖雄 田沢洋一 白松一安 小林 純 鈴木一郎(英文・PDF/HTML

らいぶらりい
医学・生物学研究者のためのうまい研究発表のコツ
 鈴木信夫(和文・PDF

学会
第1161回千葉医学会例会・第7回呼吸器内科例会(第21回呼吸器内科同門会)(和文・PDF

雑報
癌臨床試験のデザインと倫理−第T相試験
 関根郁夫 石塚直樹 田村友秀(和文・PDF

編集後記(和文・PDF

 
   
  江戸幕府による腑分の禁制
石出猛史
千葉大学大学院医学研究院循環病態医科学


   本邦においては古来より近世に至るまで,医学研究としての人体解剖が禁止されていたということが,定説化している。しかしいずれの時代においても,解剖の禁止を明文化した条文は見出されていない。近世の徳川幕政下においては,『御定書百箇条』によって,処刑後の罪因の処置について,処刑方法に応じて細く規定されていた。幕府の刑罰には,処刑後に遺体を解体するという付加刑は存在していなかった。山田浅右衛門で知られる様し斬りは,刑死体に刃を入れることが公認されていた唯一の付加刑である。腑分は様し斬りに準じて許可されたことが推定される。従って腑分は当初から様し斬りと競合する関係にあったのだろう。様し斬りに関る刀剣の鑑定などを収入源にしていた山田浅右衛門家にとって,刑死体を多数腑分に供されることは,死活問題であったのだろう。徳川幕府統治下の日本は法治国家である。本邦における腑分の歴史を検討する時,法制度からの観点が必要ではないであろうか。江戸幕府の法制度上,腑分の禁止条項があったとは考えられない。
 
   
  千葉県下における頭痛診療の実態:医師を対象としたアンケート調査
朝比奈正人 服部孝道
千葉大学大学院医学研究院神経内科学


   【目的】頭痛の分類・診断の国際基準の確立やトリプタン系薬剤の開発は頭痛の診療を大きく変えたが,頭痛がプライマリー医師の対応を必要とする症候であることに変わりはない。我々は千葉県下における頭痛診療の実態を明らかにするために,千葉県在住の医師を対象にアンケート調査を行った。
   【方法】対象は千葉県に在住する千葉県医師会会員の医師2,363人。診療している頭痛患者数に関する質問と片頭痛に対する意識に関する質問からなるアンケート用紙を郵送し,ファックスで回答してもらった。
   【結果】アンケートの有効回答数は369(15.6%)であった。1人の医師が年間に診療する頭痛患者数は平均194±334人/年で,科別でみると脳外科が567±574人/年と最も多く,最も少ない科は産婦人科の88±49人/年であった。診療している頭痛の内訳は,緊張性頭痛が52.3%と最も頻度が高く,片頭痛は43.7%,群発性頭痛は0.5%であった。片頭痛の比率は小児科(57.0%)と産婦人科(52.6%)で高かった。頭痛の診断および治療に関する意識調査では,科による大きな偏りはなく,多くの医師が頭痛の診断・治療に対して十分な認識を持っていた。
   【結論】千葉県下ではいずれの科の医師も多くの頭痛患者を診療していた。片頭痛に対してはいずれの科の医師も共通の認識を示し,適切な頭痛診療が行われていることが推測された。
 
   
  右鎖骨下動脈起始異常を伴う食道癌の1例
森嶋友一 豊田康義 里見大介 青木靖雄 田沢洋一 白松一安 小林 純 鈴木一郎
国立病院機構千葉医療センター外科


  右鎖骨下動脈起始異常を伴う食道癌の1例を経験した。症例は74歳男性。食物つかえ感を主訴に来院。T3N3M0の胸部進行食道癌の診断のもと,右開胸開腹食道亜全摘,胃管による右胸腔内吻合術を行った。開胸時,食道背測の異常な右鎖骨下動脈を認めた。また右反回神経を同定できないまま,手術を終了した。術前評価で心肺機能の低下や頚部リンパ節腫脹のないことから,頚部リンパ節郭清は行わないことに決めていた。術後は肺炎以外の合併症もなく,軽快退院となった。  右鎖骨下動脈起始異常は大動脈弓部の先天性の奇形で,いわゆる血管輪の一つに数えられ,1%前後の頻度で発生する。この血管奇形はそれ自身が食道を圧迫し,dysphagia lusoriaを呈することもあるが,食道外科医にとって重要なことは,右反回神経が反回せず,頚部で迷走神経より直線的に分岐することである。また右静脈角に流入する胸管を合併することも多い。これらの解剖学的奇形は術前の造影CTによって診断が可能である。自戒を込めて,稀な血管異常を伴う食道癌の1例を報告した。
 
   
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