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千葉医学雑誌

千葉医学雑誌一覧
 
千葉医学 84 (6) :261-315, 2008

原著
KAI1遺伝子の舌扁平上皮癌の進展・転移への関与
 本澤慶憲 鵜澤一弘 小野可苗 上杉尚子 倉澤良典 吉田成秀 小河原克訓 椎葉正史 武川寛樹 横江秀隆 丹沢秀樹(英文・PDF/HTML

後十字靱帯温存型人工膝関節の運動様式は長期成績に影響を与えない
 玉井 浩 鈴木昌彦 常泉吉一 付岡 正 Scott A, Banks 守屋秀繁 高橋和久(英文・PDF/HTML

症例
白内障手術後に眼虚血症候群を発症した1例
 白戸 勝 塙 勝博 永田博史 安達惠美子 山本修一(英文・PDF/HTML

海外だより
米国National Institutes of Health 滞在13年を経過して
 木野智重 (和文・PDF

学会
第1157回千葉医学会例会・第25回神経内科教室例会(和文・PDF
第1160回千葉医学会例会・細胞治療学例会(和文・PDF
第1162回千葉医学会例会・千葉大学大学院医学研究院腫瘍内科学例会(和文・PDF

雑報
癌臨床試験のデザインと倫理−第U相試験
 関根郁夫 石塚直樹 田村友秀(和文・PDF
編集後記(和文・PDF
84巻総目次・索引

 
   
  遺伝子の舌扁平上皮癌の進展・転移への関与
 本澤慶憲 鵜澤一弘 小野可苗 上杉尚子 倉澤良典 吉田成秀 小河原克訓 椎葉正史 武川寛樹 横江秀隆 丹沢秀樹
 千葉大学大学院医学研究院臨床分子生物学


 KAI1遺伝子は前立腺癌において転移抑制遺伝子として発見され,多くの種類の腫瘍でKAI1発現が高頻度に抑制されていることが報告されている。本研究の目的はKAI1の減弱が舌扁平上皮癌の進展や転移に関与しているかどうかを調べることである。われわれは舌扁平上皮癌(前癌病変25例,舌癌原発巣41例,リンパ節転移腫瘍15例)において,KAI1遺伝子の変異状態,mRNA発現レベル,およびKAI1タンパク発現レベルを分析した。PCR-SSCP法ではKAI1遺伝子の変異は認めなかったが免疫染色では転移癌(100%)のみならず原発巣(85%),前癌病変(44%)でもKAI1タンパクの減弱が高率に認められた。そして,KAI1タンパクの減弱と原発巣のリンパ節転移との間には強い相関(P=0.044)が認められた。さらに癌の進展(正常の舌から原発癌や転移癌まで)にともなってKAI1タンパクの発現が有意に(P<0.01)減弱することが明らかになった。われわれのデータは,KAI1タンパクの発現抑制が原発癌のリンパ節転移に関与しており,また,KAI1の発現減弱は癌の進展にも関与していることを示唆している。
 
   
  後十字靱帯温存型人工膝関節の運動様式は長期成績に影響を与えない
 玉井 浩1) 鈴木昌彦2) 常泉吉一3) 付岡 正4) Scott A, Banks5) 守屋秀繁1) 高橋和久2)
   
 1)鹿島労災病院整形外科学  2)千葉大学大学院医学研究院整形外科学
 3)上都賀総合病院整形外科  4)金沢病院整形外科  5)フロリダ大学整形外科

 
 人工膝関節術後の膝関節透視下動作解析による研究では,anterior paradoxical movementを示す人工膝関節はポリエチレンの摩耗や破損を加速し長期成績が不良となると報告されている。本研究では後十字靱帯温存型人工膝関節手術後の患者が階段を昇るときの運動様式を評価して10年後の臨床成績と比較検討した。22症例29関節で動作解析を行ったが,10年のfollow-upが可能だったのは14症例16関節だった。16関節は透視下動作解析により2グループに分かれ,medial pivot groupが8関節,lateral pivot (anterior paradoxical movement) groupが8関節だった。10年経過では,knee scoreの平均はlateral pivotグループで82.9±6.9点,medial pivotグループで85.8±6.3点だった。Function scoreの平均はlateral pivotグループで59.4±14.6点,medial pivotグループで57.0±11.6だった。平均屈曲角度はlateral pivotグループで108.8±10.9°,medial pivotグループで113.3±7.1°だった。Medial pivotグループとlateral pivotグループではknee score,function score,屈曲角度に有意差はなく,人工関節の緩みやポリエチレンの破壊により再置換術となった症例もないことから,後十字靱帯温存型人工膝関節の運動様式は長期成績に影響を与えないと考えられた。

 
   
  白内障手術後に眼虚血症候群を発症した1例
白戸 勝1,3)  塙 勝博1)  永田博史2) 安達惠美子1)  山本修一3)
1)山王病院感覚器病センター眼科 2)山王病院感覚器病センター耳鼻咽喉科 3)千葉大学大学院医学研究院眼科学


 5歳男性,両内頚動脈狭窄,右眼白内障,眼内レンズ挿入術施行1ヵ月後,術眼に眼虚血症候群が生じた症例を報告した。両上耳側,鼻側の2本の中心動脈の閉塞が眼底像で認められ,蛍光眼底造影にてこの2本の細動脈の著しい血流遅延および周辺網膜に無血管野が示された。網膜電図は陰性型を呈した。MRIにて両側の内頚動脈の狭窄,頚部のドップラーエコーグラムでも両内頚動脈の血流遅延を認めた。右眼の無血管野にレーザー光凝固を施行し,その後視機能の増悪はみられていない。内頚動脈狭窄がある場合,白内障手術が眼虚血症候群を発症させる起因となることについて考按した。

 
   
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