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千葉医学雑誌一覧
 
千葉医学 86 (5) :167-211,2010

総説
中心性頸髄損傷の病態と治療
 林 浩一 山崎正志 大河昭彦 国府田正雄 橋本将行 高橋和久(和文・PDF
 症例
急性脊髄損傷に対して顆粒球コロニー刺激因子(Granulocyte colony-stimulating factor: G-CSF)
投与による神経保護療法を施行した6症例

 高橋 宏 山崎正志 大河昭彦 国府田正雄 橋本将行 橋本光宏
 林 浩一 佐久間 毅 川辺純子 藤由崇之 古矢丈雄 山内友規
 門田 領 宮下智大 萬納寺誓人 染谷幸男 西尾 豊 鎌田尊人
 腰塚周平 池田 修 喜多恒次 青木保親 吉永勝訓 村田 淳
 高橋和久(和文・PDF
脊柱靱帯骨化症に伴う脊髄障害性疼痛に対し
顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)が著効した2例

 佐久間 毅 山崎正志 国府田正雄 高橋 宏 加藤 啓 林 浩一
橋本将行 橋本光宏 大河昭彦 高橋和久(和文・PDF
胃粘膜下腫瘍に対する単孔式内視鏡手術の安全な導入に向けて
−術前3Dシミュレーション画像と今後の展望−

 夏目俊之 首藤潔彦 青山博道 松崎弘志 河野世章 大平 学
 当間雄之 早野康一 斎藤洋茂 梁川範幸 赤井 崇 堀部大輔
 阿久津泰典 川平 洋 林 秀樹 松原久裕(和文・PDF

学会
第1194回千葉医学会例会・第27回千葉精神科集談会(和文・PDF
第1200回千葉医学会例会・第9回呼吸器内科例会(第23回呼吸器内科同門会)(和文・PDF
第1205回千葉医学会例会・第22回千葉泌尿器科同門会学術集会(和文・PDF

編集後記(和文・PDF
 
   
  中心性頸髄損傷の病態と治療
林 浩一 山崎正志 大河昭彦 国府田正雄 橋本将行 高橋和久
千葉大学大学院医学研究院整形外科学


 1954年Schneiderらによって提唱された急性中心性頸髄損傷は,外傷性頸髄不全損傷のなかで,神経症候学的に下肢よりも上肢に強い運動障害,感覚障害をきたす症候群であり,脱臼や骨折を伴わない非骨傷性頸髄損傷の多くを占める。病理学的には,頸髄横断面での中心部の損傷,すなわち灰白質および白質の内層が主に損傷された病態として捉えられている。近年の分子生物学的研究手法の進歩に伴い,脊髄損傷後の1次損傷,2次損傷および瘢痕形成にいたる局所での組織反応が明らかにされつつある。受傷後早期のMRI診断で,麻痺の予後予測がある程度可能になっており,T1等信号/T2等信号が良好で,T1低信号/T2高信号が一般に不良である。薬物療法として,メチルプレドニゾロン大量療法が行われてきたが,近年,その効果を疑問視する報告が相次ぎ,呼吸器・消化器合併症などの副作用の報告も多い。新たな薬物療法の開発を目的として,顆粒球コロニー刺激因子投与の臨床試験も開始された。脊髄圧迫がない例では,一般に保存治療が選択されるが,脊柱管狭窄を伴う脊髄圧迫例で麻痺が重度,あるいは麻痺の増悪を認める場合は除圧術が考慮される。しかし,保存療法と手術療法を比較した質の高い研究は少なく,手術適応については議論の余地が多い。保存療法と手術療法の多施設前向き無作為共同研究が本邦で開始されており,今後のさらなる検討が期待される。
 
   
  急性脊髄損傷に対して顆粒球コロニー刺激因子(Granulocyte colony-stimulating factor: G-CSF)
投与による神経保護療法を施行した6症例
高橋 宏 山崎正志 大河昭彦 国府田正雄 橋本将行 橋本光宏
林 浩一 佐久間 毅 川辺純子 藤由崇之 古矢丈雄 山内友規
門田 領 宮下智大 萬納寺誓人 染谷幸男 西尾 豊 鎌田尊人
腰塚周平 池田 修 喜多恒次1) 青木保親2) 吉永勝訓3) 村田 淳4) 高橋和久

千葉大学大学院医学研究院整形外科学
1) 成田赤十字病院,2) 千葉労災病院
3) 千葉リハビリテーションセンター,4) 千葉大学医学部附属病院リハビリテーション部

 急性脊髄損傷に対する顆粒球コロニー刺激因子(Granulocyte colony-stimulating factor: G-CSF)を用いた神経保護療法について,安全性確認を主目的としたPhase I・IIa臨床試験を開始した。2008年6月から2009年9月までの期間に,急性期脊髄損傷患者6例に対して本試験を施行した。本人の自由意思による文書同意を得た後,G-CSF 5μg/kg/日を5日間点滴静注投与した。投与後に有害事象の有無を確認し,運動・感覚麻痺の推移の評価を行った。神経所見については,G-CSF投与後に,程度の差はあるものの全例で運動・感覚麻痺の改善が得られた。白血球数は投与前が7.2〜14.1 (×103/μl)であったのに対し,投与開始の翌日には25.2〜38.4 (×103/μl)に上昇し,投与期間中は17.3 (×103/μl)以上の値が維持され,投与開始後7日目には,ほぼ投与前の値に戻った。G-CSF投与期間中および投与後に有害事象の発生はなかった。
 
   
  脊柱靱帯骨化症に伴う脊髄障害性疼痛に対し顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)が著効した2例
佐久間 毅 山崎正志 国府田正雄 高橋 宏 加藤 啓 林 浩一
橋本将行 橋本光宏 大河昭彦 高橋和久
千葉大学大学院医学研究院整形外科学


 我々は,圧迫性脊髄症急性増悪例に対して顆粒球コロニー刺激因子(Granulocyte-colony stimulating factor: G-CSF)を用いた神経保護療法のPhase I/IIa臨床試験を進めている。本試験を施行中に,G-CSF投与後に脊髄障害性疼痛が軽減した2例を経験した。症例1は32歳男性。T7-10後縦靭帯骨化が脊髄を圧迫し,障害髄節に一致した側胸部痛と索路症状としての歩行障害が出現した。G-CSF 10μg/s/日を連続5日間点滴静注したところ,投与開始翌日から側胸部痛が軽減した。投与1ヵ月後にT4-12後方除圧固定術を施行した。投与後6ヵ月経過した時点で側胸部痛の再燃はなく,運動麻痺の改善も良好である。症例2は68歳男性。T11-12黄色靭帯骨化に起因する歩行障害と両大腿内側の疼痛を訴えていた。G-CSF 10μg/s/日を連続5日間点滴静注したところ,運動麻痺の改善とともに投与開始翌日から疼痛の軽減を認めた。投与1ヵ月後にT10-12椎弓切除術を施行した。大腿内側部痛は投与後3ヵ月頃から再燃傾向にあるが,投与後6ヵ月の時点においても投与前に比べて軽減した状態にある。本経験から,G-CSFが運動麻痺を改善させる作用以外に,脊髄障害性疼痛を軽減させる効力を有する可能性が示唆された。
 
   
  胃粘膜下腫瘍に対する単孔式内視鏡手術の安全な導入に向けて−術前3Dシミュレーション画像と今後の展望−
夏目俊之 首藤潔彦 青山博道 松崎弘志 河野世章 大平 学
当間雄之 早野康一 斎藤洋茂 梁川範幸1) 赤井 崇 堀部大輔  阿久津泰典 川平 洋2) 林 秀樹2) 松原久裕
千葉大学大学院医学研究院先端応用外科学
1) 千葉大学医学部附属病院放射線部
2) 千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター


 単孔式内視鏡手術が広がりをみせているが,その方法については確立していない。当科では2009年に胃粘膜下腫瘍に対して単孔式手術を導入した。導入に際しての工夫として,術前MDCTを使用した3D画像の作成,また,順次ポート数を減らしていくステップアップ法により,安全に単孔式手術を導入しえた。MDCTの撮影方法の詳細は,発泡剤を内服,非イオン造影剤注入後,動脈相,門脈相の撮影を行う。得られた画像をzio stationを使用し,撮像画像の体表,体表の透明像,胃,粘膜下腫瘍,胃周囲の血管の3D画像をレイヤーとして作成・抽出し,それぞれのレイヤーを重ね合わせて術前シミュレーション画像を作成する。今回,従来の5ポート挿入による腹腔鏡下胃局所切除術症例,単孔式手術への移行期に行った臍部ポート+追加2ポート症例,単孔式のみで行った症例を合わせた計8症例での検討を行った。部位,形体はさまざまであったが,手術時間,出血量には大きな差はなく,スムーズに単孔式手術に移行できたものと考えられた。手術手技の詳細に関しては,臍部を縦切開し,創下筋膜上の剥離をハート型に十分に行い,剥離部よりミッキー型に5oの3ポートを挿入すること。管腔外突出型においてはエンドループ○R (エチコン社)をかけ,術者左手で釣り上げた後,右上の操作用ポートを12oに交換し,60o長エンドステープラーを使用し,切離を行うこと。管腔内腔にも突出している場合は術中内視鏡を併用し,内腔からも確認を行うこと,などである。今後の課題は,切開,縫合等の方向に応じた残胃の形状を術前にシミュレーションすることなどが求められると考えられる。
 
   
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