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千葉医学雑誌

千葉医学雑誌一覧
 
千葉医学 87 (2) :39-85, 2011

総説
鎖骨骨折の保存的治療 −ボデイプランからみた鎖骨の特性−
 齋藤 篤(和文・PDF)
原著
脳波と光トポグラフィの同時計測に基づく光トポグラフィを用いたアルファブロッキング診断の検討
 松代信人 下山一郎 山下弘毅 中澤 健 笠置泰史(英文・PDF/HTML)
ファージディスプレイ法を用いたGRP94タンパク質カルボキシ末端側領域に結合するペプチドの探索
 ザヘッド ムハメド 鈴木敏和 喜多和子 菅谷 茂 鈴木信夫(英文・PDF/HTML)
症例
術前S-1/CDDP療法を使用した胃癌切除例の1例
 青柳智義 高石 聡 佐久間洋一 舟波 裕 二村好憲 当間智子 飛田浩司 松村洋輔 山本義一 松原久裕(和文・PDF)
海外だより
Virginiaでの留学生活
 丸山紀史(和文・PDF
オハイオ留学記
 中西 寛(和文・PDF
学会
第1221回千葉医学会例会・第10回呼吸器内科例会(第24回呼吸器内科同門会)(和文・PDF
編集後記 (和文・PDF


 
   
  鎖骨骨折の保存的治療 −ボデイプランからみた鎖骨の特性−
齋藤 篤
都賀さいとう整形外科


  無床診療所における鎖骨骨折は,低エネルギー外傷によるものが主であり保存的治療にてほぼ満足すべき結果が得られた。鎖骨は哺乳動物のボデイプランとして線維性骨化を示し,内側骨端は20代後半まで成長し,先天性偽関節や欠損症が存在する特殊な骨である。小児鎖骨骨折については,9カ月から15歳(82例)の症例のうち0−3歳までは29例で,8−9歳には3例と減少し,13−15歳では24例と増加すると共にRobinson分類Type2Bが多くなる(odds比4.28)。遠位端骨折(平均年齢11.5歳 4例)については,フエルトパッド付鎖骨骨折固定バンドにて骨癒合が得られた。脇の下で抱くと泣く乳幼児は,鎖骨骨折が疑われた。成人鎖骨骨折は89例で平均年齢46.5歳(16−87歳)であった。外側端骨折は32例で平均年齢42.7歳であり,男性(男性25:女性7)と右側(右側22:左側10)が多かった。鎖骨中1/3骨折は55例で平均年齢36.1歳,活動性の高い男性(男性40:女性15)の青壮年層に多かった。Robinson分類のType2A1&2が24例であり,Type2B1&2は31例であった。Type2B1と比べて2B2の粉砕骨折に遷延性骨癒合が多い印象はなかった。8字固定ギプスや固定バンドによる安静固定を8−10週間施行し,変形治癒を伴ったが偽関節形成はみられなかった。鎖骨遠位端骨折は偽関節形成が多くCraig分類TypeTは14.3%であるが,特に田久保分類TypeYは偽関節形成83%(6例)が多かった。その一方では,高齢者における鎖骨遠位端骨折の偽関節形成は遺残性の肩鎖関節脱臼と同様に患者立脚型アウトカムは容認された。疼痛を伴った活動的成人男性の1症例は,鎖骨遠位端切除で対処できた。両側性偽関節を示した胸肋鎖骨異常骨化症の鎖骨中1/3病的骨折の中年女性例は,2年後の追跡にて骨癒合がみられた。女性(平均年齢49歳(3例)例の大根田分類X型である鎖骨中1/3の横骨折は遷延性仮骨形成を示した。1例は12週以降に観血的治療に移行し,2例は24週以降に仮骨形成が両骨折端に架橋して出現し,1年後には骨癒合が得られた。このことはRobinson分類Type2B1に中高年女性にみられる難治性骨折型の存在が示唆された。
 
 
   
  脳波と光トポグラフィの同時計測に基づく光トポグラフィを用いたアルファブロッキング診断の検討
 松代信人1) 下山一郎2) 山下弘毅1) 中澤 健3) 笠置泰史2)
1)千葉大学大学院医学薬学府先端生命科学専攻
2)千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター
3)千葉大学大学院医学研究院認知行動生理学彦


 医療診断を目的として,光を用いて生体の機能を計測する近赤外分光法(NIRS)は,最も実用化が進んでいる光診断法の一つであり,他の計測法にない幾つかの長所を有している。しかしながら,NIRSを用いた酸素動態モニター診断法は,絶対値の信頼性,計測結果の解釈について数多くの議論を残しているといる。アルファブロッキングタスクを用いた本論文の目的は,NIRSの信頼性に関するコンセンサスをステップバイステップで検証蓄積していくことにある。検証方法は,コンセンサスがとれているタスクとその計測による診断法をリファレンスとして,NIRSの信頼性を検証していく立場であり,アルファブロッキングタスクでの脳波計測をリファレンスとして,NIRSでのアルファブロッキング診断の可能性に関する考察を行った。結果として,アルファブロッキングとNIRS計測信号の変動特徴間の相関係数として0.806という高い値を得た。さらに脳波のアルファリズムやNIRSの酸素代謝の増減といった特徴パラメータ以外に,計測信号の変動の複雑さに関わる特徴パラメータ(情報量)についても考察した。その結果,神経活動にカップリングした1次信号(脳波)と2次信号すなわちNIRSの酸素代謝の複雑さの変動特徴間の相関係数として0.677が得られ,このパラメータにも,アルファブロッキングに関わる情報がある程度保存されていることが分かった。EEG計測信号の情報量の変動レベルは,NIRS計測信号の情報量の変動レベルの7.14倍であり,アルファブロッキングタスクにおいては,EEG計測信号により多くの情報が含まれていることが分かった。しかしながら相関係数の結果は,アルファブロッキング診断へのNIRS適用可能性を示している。本研究は,NIRSによる診断の信頼性に関するコンセンサス形成に寄与するものであると考えられる。
 
 
   
  ファージディスプレイ法を用いたGRP94タンパク質カルボキシ末端側領域に結合するペプチドの探索
ザヘッド ムハメド1) 鈴木敏和1,2) 喜多和子1) 菅谷 茂1) 鈴木信夫1)
1)千葉大学大学院医学研究院環境影響生化学
2)和洋女子大学生活科学系人間栄養学


【目的】癌に特異的に発現する細胞表面タンパク質に結合するペプチドを利用した,癌細胞特異的薬物輸送法が考案されている。ストレスタンパク質GRP94は,細胞の造腫瘍化に伴って,細胞表面の発現量が増加する。そこで,本研究では,ファージディスプレイ法を用い,GRP94タンパク質のカルボキシ末端領域(GRP94-C) へ結合する低分子ペプチドの探索を行った。
【方法】ランダムな7アミノ酸配列の両端をシステイン残基のジスルフィド結合で環状化したペプチド配列を持つファージディスプレイライブラリーを使用した。組換型GRP94-Cタンパク質に結合するペプチド配列の濃縮を3回繰り返した後,濃縮された任意の80クローンのアミノ酸配列を調べた。コンセンサス配列を含むクローンについて結合アッセイ,QCM解析を行った。
【結果】 3つのペプチド配列(No.6; CTLMSDPAC, No. 58; CSLVPIPAC, No. 72; CQTKPLFQC) を見出した。QCM法により3ペプチド配列のGRP94-Cタンパク質に対する結合定数を測定したところ,それぞれ,0.45,0.46,0.39 μMであった。
【考察】本研究により,GRP94-Cタンパクへ高親和性で結合するペプチド配列を見出すことが出来た。これらペプチドを利用して,細胞表面にGRP94を高発現している癌細胞特異的な薬物輸送への応用利用が期待される。

 
   
  術前S-1/CDDP療法を使用した胃癌切除例の1例
青柳智義 高石 聡 佐久間洋一 舟波 裕 二村好憲 当間智子 飛田浩司 松村洋輔 山本義一 松原久裕1)
JFE健康保険組合川鉄千葉病院外科
1) 千葉大学大学院医学研究院先端応用外科学


 症例は57歳女性。嘔気・嘔吐・食欲不振あり来院。上部内視鏡検査で胃癌の診断であった。CT検査では遠隔転移はなかったものの,腫瘍は膵臓に浸潤し,根治切除不能と考えられた。S-1/CDDPの術前化学療法を2コース行い,終了後効果判定はPRであり,膵臓の浸潤も解除されたため手術を施行した。胃全摘術R-Y再建を施行し,根治切除が可能であった。術後化学療法としてS-1投与を継続している。切除不能進行胃癌に対する治療戦略としては化学療法が第一選択となることが多いが切除不能胃癌にかかわらず最近では,術前化学療法が注目されている。根治切除不可能と考えられた症例でも,化学療法を行うことにより安全に根治切除が可能になると考えられた。

 
   
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