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千葉医学雑誌

千葉医学雑誌一覧
 
千葉医学 87 (3) :87-131, 2011
学術大会
第87回千葉医学会学術大会(和文・PDF)
総説
高齢者頸髄症の病態と治療
 橋本光宏 山崎正志 望月眞人 相庭温臣 大河昭彦 高橋和久 (和文・PDF
症例
エアーガン(圧搾空気)による大腸穿孔の1例
 木下弘壽 中森知毅(和文・PDF
胸椎脊柱管内に発生した骨軟骨腫に対し前方進入腫瘍摘出術を行った1例
 葛城 穣 山崎正志 宮下智大 古矢丈雄 萬納寺誓人 門田 領 藤由崇之 川辺純子
山内友規 林 浩一 佐久間 毅 高橋 宏 加藤 啓 木下知明 国府田正雄 大河昭彦 高橋和久 (和文・PDF)
研究紹介
環境影響生化学 その3  ―無から有を生む基礎医学研究の面白さ ―
ヒトSOS生理機能の創成 −前編−

 鈴木信夫(和文・PDF)
学会
第1212回千葉医学会例会・整形外科例会(和文・PDF)
編集後記(和文・PDF)

 
   
  高齢者頸髄症の病態と治療
橋本光宏 1)  山崎正志 1)  望月眞人2) 相庭温臣2)  大河昭彦 1)  高橋和久 1)
1) 千葉大学大学院医学研究院整形外科学
2) 沼津市立病院整形外科

  頸髄症とは加齢による脊椎症性変化により脊柱管狭窄が生じ脊髄が圧迫されることで引き起こされる頚椎部での脊髄障害の総称である。四肢の痺れ,手指の巧緻運動障害,歩行障害,膀胱直腸障害などの症状を呈する。両上肢の症状から始まり四肢不全麻痺へ進行していくことが多く,静的因子,動的因子,循環障害因子の三つがその病態に関与している。高齢者における頸髄症の特徴はC3/4,C4/5椎間の椎体すべりによる動的圧迫伴った脊髄障害であり,脊柱管前後径は必ずしも狭小化していないことである。C5/6,C6/7が脊椎症性変化により椎間可動性が減少し安定化した後に,その上位であるC3/4,C4/5が代償的に障害され,罹患病変となることが多い。ふらつきや脱力を主訴とする歩行障害を呈することがあること,転倒により悪化する場合があることが知られている。急激に歩行障害が進行する場合がある。また本症の機能予後は生命予後に関与するとの報告がある。術式は前方法,後方法があるが上記に述べた本症の病態を踏まえて選択すべきである。加齢による膝関節疾患や腰椎疾患の合併や加齢による脊髄可塑性低下が治療成績評価の上で問題となることがある。超高齢化社会を迎えた本邦で今後ますます増加が予想される疾患である。脊椎脊髄病医のみならず,高齢者のプライマリーケアに関わる医師が本疾患について正しい知識を持ち,早期診断の上,医療連携を図り,必要があれば時期を逃さずに手術を行えば症状の改善が期待できる。その場合は高齢者特有の呼吸器,循環器などの合併症対策を含めた厳密な全身管理が必要となる。
 
 
   
  エアーガン(圧搾空気)による大腸穿孔の1例
木下弘壽 中森知毅
横浜労災病院 救急センター

  エアーガン(圧搾空気)は,塗装や,洗車,洗車後の水滴を除去するのに使用されるが,今回われわれは,エアーガンによる大腸穿孔例を経験したので報告する。症例は,54歳男性。仕事中同僚に作業着の上からエアーガンを肛門に当てられ,空気を入れられた。その後排便,排ガス,排尿がなく,腹部膨満感が続いているということで,当院救急外来を独歩受診した。腹満を認めるが,反跳痛軽度で筋性防禦はみられなかった。直腸診で血液の付着を認め,立位胸部X線検査で多量のfree airを認めたため大腸穿孔の診断で緊急手術をおこなった。手術では,S状結腸に4p大の穿孔と,その肛門側に漿膜筋層の断裂を認め,腹腔内の汚染も高度なため,ハルトマン手術を施行した。術後経過は良好で,入院17日目に退院した。6ヵ月後に人工肛門閉鎖術を施行した。圧搾空気使用者と医療従事者は,圧搾空気の使用によって,重大な合併症が起こりうることを十分認識する必要がある。
 
   
  立方体投射図形模写検査の定量的解析法の開発
葛城 穣1) 山崎正志1) 宮下智大1) 古矢丈雄1) 萬納寺誓人1) 門田 領1) 藤由崇之1) 川辺純子1)
山内友規1) 林 浩一1) 佐久間 毅1) 高橋 宏1) 加藤 啓1) 木下知明2) 国府田正雄1) 大河昭彦1) 高橋和久1)
1)千葉大学大学院医学研究院整形外科学
2) 習志野第一病院整形外科

  症例は39歳男性。歩行障害を主訴とし,両下肢の著しい痙性と体幹・下肢の感覚鈍麻を認めた。画像診断では,T7椎体後上縁から脊柱管内に腫瘤が伸展し,脊髄を前方から圧迫していた。右開胸による前方進入にて腫瘍摘出を行い,術後の神経症状の改善は良好であった。病理診断は骨軟骨腫であった。胸椎椎体から脊柱管内に発生する骨軟骨者は稀な疾患である。本例の経験から,前方進入腫瘍摘出術の選択が望ましいと考えられる。
 
   
  〔研究紹介 ― 環境影響生化学 その3 ―〕
― 無から有を生む基礎医学研究の面白さ ―
ヒトSOS生理機能の創成 −前編−
鈴木信夫
千葉大学大学院医学研究院環境影響生化学


  即効を促す科学・技術の風潮などの様々な要因により,基礎医学の存続とその理念の継承が危ぶまれております。せめて,科学精神の神髄は刻印されるべき時のようです。そこで,そのような懸念と対策に適うか否かは後世の判断に委ねるとして,また,亥鼻台にて40数年間の学究活動をさせていただいた感謝の意を込めて,千葉医学へ過去に掲載した記事の補足をすることとします。  ワトソンの著書を読破した医学生時代に始まり,生化学第二講座(現 環境影響生化学)と微生物学講座(現 分子ウイルス学)での月火水木金金金の生活記録です。生命現象の神秘さに魅了され,無目的心境からスタートした大腸菌を用いた研究体験を踏まえて,ヒト個体には“突然”変異を“必然”変異とする新規の生理機能(SOS応答)があることを予感する悪戦苦闘の記録でもあります。前編では,その苦闘の末開発した培養ヒト細胞実験システムを紹介します。後編では,SOS応答探しの実証実験の過程を紹介します。将来,先天性疾患やがん,あるいはウイルス感染症などの変異に基づく様々な疾病が根本から絶滅されることを夢見ながら,ヒトの過去と未来を宇宙レベルから問う“宇宙進化医学”とでも称すべき基礎医学の開花を願うこととします。
 
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