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千葉医学 87 (6) :37-309, 2011

原著
食道内視鏡的粘膜下層剥離術におけるクリップ牽引法の有効性
 上里昌也 赤井 崇 堀部大輔 久保嶋麻里 松永晃直 北林宏之 加賀谷暁子
 佐塚哲太郎 竹下修由 丸山哲郎 星野 敢 阿久津泰典 河野世章 白鳥 享
 首藤潔彦 青木泰斗 宮崎信一 松原久裕(和文・PDF
症例
腰椎腫瘍に対する腫瘍脊椎骨全摘術を試みた1例 −後方,前側法アプローチの問題点−
 鈴木 都 大鳥精司 井上 玄 折田純久 江口 和 青木保親 石川哲大 宮城正行
 新井 玄 鴨田博人 佐久間詳浩 及川泰宏 久保田剛 高相晶士 豊根知明 黒岩璋光
 石坂 透 松宮護郎 高橋和久(英文・PDF/HTML
話 題
微量放射線被ばくの健康への影響
 油井信春(和文・PDF
第二回千葉医学会賞
基礎医学部門
Notchシグナルの分子機構の研究 −Mastermindを中心として−
 北川元生(和文・PDF)
臨床研究部門腰椎疾患に対する新規診断方法,薬物療法,手術療法の確立
 大鳥精司 高橋和久(和文・PDF)
第一回千葉医学会 奨励賞
BHD遺伝子異常に起因する多発性肺嚢胞疾患の病理 −反復性気胸に対する新たな洞察−
 古賀俊輔(和文・PDF
第二回千葉医学会 奨励賞
320列マルチスライスCTを用いた循環器疾患の新しい臨床診断の開発
 上原雅恵(和文・PDF
視神経脊髄炎と多発性硬化症の免疫病態の相違
 鵜沢顕之 森 雅裕 桑原 聡(和文・PDF
学会
第1218回千葉医学会例会・千葉大学大学院医学研究院腫瘍内科学例会(和文・PDF
第1225回千葉医学会例会・第44回麻酔科例会・第72回千葉麻酔懇話会(和文・PDF
第1183回千葉医学会例会・第20回千葉泌尿器科同門会学術集会(和文・PDF
研究報告書
平成22年度猪之鼻奨学会研究補助金による研究報告書(和文・PDF
編集後記(和文・PDF
第四回(2011年度)千葉医学会賞および奨励賞候補者の公募について
第5回 ちばBasic & Clinical Research Conference開催のお知らせ
87巻総目次・索引

 
   
  食道内視鏡的粘膜下層剥離術におけるクリップ牽引法の有効性
 上里昌也 赤井 崇 堀部大輔 久保嶋麻里 松永晃直 北林宏之 加賀谷暁子
 佐塚哲太郎 竹下修由 丸山哲郎 星野 敢 阿久津泰典 河野世章 白鳥 享
 首藤潔彦 青木泰斗 宮崎信一1) 松原久裕
 千葉大学大学院医学研究院先端応用外科学 1) 幕張胃腸クリニック


 リンパ節転移の可能性が極めて低い早期胃癌に対する内視鏡的治療は,内視鏡的粘膜下層剥離術の登場により飛躍的に進歩した。そして同手技は早期食道癌にも応用され,広範囲の病変でも一括切除でき,結果的に詳細な病理学的検索を可能にした。しかし,食道内視鏡的粘膜下層剥離術は時間が長くなることや,穿孔などの偶発症が生命の危険に直結するため難易度が高いとされている。  当科では,2002年に食道内視鏡的粘膜下層剥離術を導入し,2007年から先端系デバイスを採用している。その後,食道切除粘膜をクリップで牽引し良好な視野のもとに剥離することで,初心者でも短時間で偶発症なく施行できたという優良な成績を得ている。食道内視鏡的粘膜下層剥離術におけるクリップ牽引法の手術手技を中心に,その有用性も報告する。
 
   
  腰椎腫瘍に対する腫瘍脊椎骨全摘術を試みた1例 −後方,前側法アプローチの問題点−
 鈴木 都 大鳥精司 井上 玄 折田純久 江口 和 青木保親 石川哲大 宮城正行
 新井 玄 鴨田博人 佐久間詳浩 及川泰宏 久保田剛 高相晶士 豊根知明 黒岩璋光
 石坂 透1) 松宮護郎1)高橋和久
千葉大学大学院医学研究院整形外科学 1) 千葉大学大学院医学研究院心臓血管外科学

 
 72歳男性,第3腰椎への腎癌の転移に対する腫瘍脊椎骨全摘術を試みた1例を経験した。腫瘍は第3腰椎に限局しており,下肢麻痺を呈していたため,後方−側法侵入による腫瘍摘出とインストゥルメンテーションによる固定術を施行した。術前麻痺にて歩行困難であったが,術後独歩可能となった。今回前方からの腎癌摘出の既往から癒着を懸念し,正中アプローチを選択しなかった。しかしながら,側方アプローチでは反対側の分節動脈の処置が困難であり,前方部の健常椎体が一部残存した。腰椎部の腫瘍脊椎骨全摘術を試みる場合の前方アプローチは,前正中よりのアプローチがより望ましいと考えられた。

 
   
  微量放射線被ばくの健康への影響
 油井信春
前千葉県がんセンター核医学診療部長


 本文は平成23年6月22日に開催された昭和37年卒いのはな同窓会の冒頭で行った微量被ばくの基礎と健康障害についての談話を文書化したものです。放射線医学や被ばくについての解説はすでに無数の出版や報道がありますが,放射線を専門としない医師にとっては理解しがたいところがあると思われます。実際に放射線を利用して日常診療を行っている医師でも用語はなじみが薄く,患者に説明を求められて応対に窮することもあると考えます。そこで同級生を対象に頻出する言葉を平易に解説するとともに自分自身の被ばくへの考えを加えてスピーチを試みました。当日の会では時間の制約で意を尽くせなかった話を文書化しメールで送信したところ,安達惠美子眼科学名誉教授より千葉医学雑誌に掲載して多くの先生方に読んで頂くよう勧められました。その結果,安達先生の仲介で編集部から許可を頂きここに本文を掲載させて頂くことになりました。新たな知見を披歴することでも放射線医学の総合的な解説書でもなく,あくまで現時点での問題点に限定した談話ですので気軽にお読み頂ければ幸いです。
 
   
  〔第二回千葉医学会賞:基礎医学部門〕
Notchシグナルの分子機構の研究 −Mastermindを中心として−
 北川元生
千葉大学大学院医学研究腫瘍病理学

 
 notchシグナルは様々な細胞の分化制御において重要な役割を果たす。ヒトにおいては,多数の遺伝性疾患および悪性腫瘍においてNotchシグナル系の異常がその原因となることが報告されている。我々はヒトMastermind遺伝子/タンパク質群を見いだし,そのNotchシグナル系における生化学的な機能を解明した。さらにこれらが生体におけるNotchシグナル伝達において必須の役割を持つことを示した。また最近,Mastermindの異常がヒト疾患で見いだされ始めている。

 
   
  〔第二回千葉医学会賞:臨床研究部門〕
腰椎疾患に対する新規診断方法,薬物療法,手術療法の確立
 大鳥精司 高橋和久
千葉大学大学院医学研究院整形外科学

 
 本稿では,過去の研究から導き出された,腰椎疾患に対する新規診断方法,薬物療法,手術方法について記載する。具体的には,最近神経系に導入されているMRIを用いた,拡散強調画像による痛み診断,抗サイトカン,オピオイド遺伝子を用いた疼痛治療,多血小板血漿を用いた脊椎固定術を中心とした手術療法について述べる。

 
   
  〔第一回千葉医学会奨励賞〕
BHD遺伝子異常に起因する多発性肺嚢胞疾患の病理 −反復性気胸に対する新たな洞察−
 古賀俊輔1,2,3)
1) 千葉大学大学院医学研究院診断病理学,2) 神経生物学,3)神経内科学

 
 Birt-Hogg-Dube (BHD)症候群は皮膚線維毛包腫,腎腫瘍,肺嚢胞及び気胸を主な症状として呈する常染色体優性遺伝性疾患である。本研究では,家族歴の明らかでない反復性気胸を呈した症例に対し,胸部画像及び病理組織学的特徴からBHD症候群を疑い,BHD遺伝子解析を施行し遺伝子変異を同定した。胸部CTでは下葉縦隔側に多発する肺嚢胞を認め,病理組織学的にはその壁の一部を小葉間隔壁と共有し,嚢胞壁内側には肺胞上皮が一層配列する上皮性嚢胞であった。  BHD症候群における肺病変は予後良好であり,予後規定因子となりうるのは腎病変であることが知られている。しかし,肺病変は腎病変に先駆けて発症することが多く,肺病変を呈した時点で診断を確定させることは予後の向上につながりうると考えられる。  BHD症候群の肺病変に関する詳細な病理学的検討は今日までほとんど報告がなされていない。本稿ではBHD症候群の疾患概念と病理組織像,特に肺嚢胞性変化の病理像について自験例を交えて概説する。

 
   
  〔第二回千葉医学会奨励賞〕
320列マルチスライスCTを用いた循環器疾患の新しい臨床診断の開発
 上原雅恵
千葉大学大学院医学研究院循環病態医科学

 
 マルチスライスCTは近年,進歩が著しく,心電図同期撮影を組み合わせる事で,ぶれのない明瞭な心臓画像が容易に得られるようになった。そして64列CTの時代になってからは,侵襲的冠動脈造影に替わる,非侵襲的な冠動脈評価法として,CTは多くの施設で一般的に使用されている。当院では2008年12月に,現在でも最多の検出列を持つ320列CTが導入された。このCTは最大16pの体軸方向へのcoverageを有することで,1回のスキャンで心臓全体の画像収集が可能である。我々はその特徴を生かし,これまでに撮影が困難であった不整脈の症例を含めた,様々な症例に対して冠動脈,心筋性状,心機能,その他の解剖異常,血栓の有無などの評価を行ってきた。当院の冠動脈CT血管造影を用いた有意狭窄の診断精度は,撮影方法,画像再構成法に独自に工夫を行うことで,評価が難しいとされる不整脈症例や冠動脈石灰化を有する症例を含めても,これらを含めない世界的な多施設研究の診断精度と同等の成績が得られている。本稿では320列CTの特徴的な機能,撮影,再構成方法,及び当院での不整脈症例を含む冠動脈評価の診断精度について述べる。

 
   
  〔第二回千葉医学会奨励賞〕
視神経脊髄炎と多発性硬化症の免疫病態の相違
 鵜沢顕之 森 雅裕 桑原 聡
千葉大学大学院医学研究院神経内科学

 
 近年,多発性硬化症(multiple sclerosis: MS)から分離独立した疾患である視神経脊髄炎(neuromyelitis optica: NMO)は,視神経と脊髄を中心に中枢神経系に重度の炎症性病変を生じる疾患で,2004年にNMO患者の血清中の疾患特異マーカーであるNMO-IgG(抗aquaporin-4抗体)が発見されて以降,両疾患の相違が注目されるようになり,世界中で多くの研究がなされてきている。今回,我々はサイトカインプロファイルに注目し,NMOとMSの異同を検討し,両疾患の髄液中のサイトカインプロファイルの明らかな相違を見いだし,NMOではTh17系・Th2系,MSではTh1系のサイトカインが上昇していること,さらに,上昇しているサイトカインの中では,IL-6がNMOの臨床パラメーターと最も強く相関していることを見出した。また,これとは別にMSの再発予防として使用されているインターフェロンβ治療への両疾患の治療反応性の相違,両疾患の血液脳関門の破綻の程度の相違及びNMOにおける血液脳関門破綻の病態への関与など,両疾患の免疫学的背景の相違を明らかとしてきた。NMOの病態において抗aquaporin-4抗体が中枢神経内で病原性を発揮するためには,血液脳関門の破綻をベースにIL-6が重要な役割を果たしているものと考えられた。これらの研究結果はNMOの病態解明や治療法の開発の一助に成りうる可能性がある。

 
   
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