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千葉医学雑誌一覧
 
千葉医学 88 (2) :97-154, 2012

学術大会
第88回千葉医学会学術大会(和文・PDF)
特別講演:千葉大学医学部(母校)への感謝
 永野俊雄(和文・PDF)
招待講演:生殖細胞の分化と受精/初期発生: 制御機構と不妊症治療への応用研究
 年森清隆(和文・PDF)
症例
心不全症状を呈した巨大食道裂孔ヘルニアの1例
 姫野雄司 大森敏生 柴田陽一 横溝十誠(和文・PDF)
海外だより
米国の救急卒後教育・シミュレーション
 志賀 隆(和文・PDF
学会
第1235回千葉医学会例会・臓器制御外科学教室談話会(和文・PDF
OAP要旨
一般大衆への放射線関連  がんリスクの情報伝達について
 ロバート・ピーター・ゲイル オーウェン・ホフマン(和文・PDF)
後頭葉における代謝物質のMRスペクトロスコピーによる測定−加齢と性別による影響−
 下山一郎 浅野由美 村田 淳 樋口佳則 内山智之 島田 斉 大内 洋 高橋和久 桑原 聡(和文・PDF)
心不全症状を呈した巨大食道裂孔ヘルニアの1例
 伊藤(清水)里美 前野正登 簗島謙二 山本修一(和文・PDF)
編集後記 (和文・PDF


 
   
  心不全症状を呈した巨大食道裂孔ヘルニアの1例
姫野雄司 大森敏生 柴田陽一 横溝十誠
いすみ医療センター外科


 症例は64歳女性,胸部不快,動悸,咳嗽を伴う喘息様呼吸困難を訴え来院。胸部レントゲンで縦隔内に消化管ガス像の所見および肺野のうっ血所見を認めた。胸部CTでは胃および十二指腸が縦隔内に陥入し,心臓及び肺を圧迫していた。  上部消化管造影では胃角上部から十二指腸球部が縦隔内へ脱出しており,CTの所見と一致した。上部消化管内視鏡検査は食道潰瘍と胃のヘルニア嚢内への陥入を認めた。側弯を合併した巨大食道裂孔ヘルニアで,ヘルニア内に陥入した胃・十二指腸が心臓と肺を圧迫しているための心不全様症状と考えられた。気管支拡張剤や吸入ステロイド剤等の内科的治療に全く反応せず,開腹手術施行した。用手的に胃及び十二指腸を還納,ヘルニア門を閉鎖し,Toupet手術にて後壁噴門形成を施行した。術後狭窄もなく経過良好で,術後より喘鳴等の心不全症状は全く消失した。  側弯症を合併した傍食道型の巨大食道裂孔ヘルニアに胃・十二指腸が陥入し,心臓及び肺を圧迫したため咳嗽や喘鳴を有する心不全症状を呈した1治験例を経験したので報告する。
 
 
   
  一般大衆への放射線関連がんリスクの情報伝達について
ロバート・ピーター・ゲイル1)  オーウェン・ホフマン2)
1) イギリス ロンドン 帝国大学医学部実験医学血液部門客員教授
2) 米国 テネシー州オークリッジ(原子力研究センター所在地)オークリッジ社リスク分析センター会長
連絡先: 王 伯銘 社会保険診療報酬支払基金千葉支部医療顧問


 チェルノブイル原発事故だけでなく,東海村の臨界事故の際も被曝障害治療専門家の第一人者として活躍されたゲイル先生は昨年の福島原発事故に強い関心を持ち,東日本大震災発生直後に来日し,記者会見で効果的に原発事故を対処するには政策決定,公衆教育,医療的な介入を含めた多面的な戦略が必要と力説し,大きな反響を呼んでいます。昨年5月千葉県ゐのはな会招聘講演(演題名: 原発事故と医療者の対応)を行なってから,国会,震災地など,日本各地から講演を依頼され,高い評価を受けています。私自身も医療者の一人として福島原発事故発生後の放射線被ばく問題に強い関心をもっており,友人のゲイル先生と緊密に連絡をとっている関係上,現在話題となっている原発事故におけるリスク・コミュニケーションについて論文を書かれていることを知り,野田公俊編集委員長に紹介したところ,特別寄稿という形で掲載することになりました。

 
   
  後頭葉における代謝物質のMRスペクトロスコピーによる測定−加齢と性別による影響−
 下山一郎1) 浅野由美2) 村田 淳2) 樋口佳則3) 内山智之4) 島田 斉5) 大内 洋6,7) 高橋和久7) 桑原 聡4)
1) 千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター
2) 千葉大学医学部附属病院リハビリテーション部
3) 千葉大学大学院医学研究院脳神経外科学
4) 千葉大学大学院医学研究院神経内科学
5) 放射線医学総合研究所
6) 亀田メディカルセンタースポーツ医学科
7) 千葉大学大学院医学研究院整形外科学



 高齢者の転倒は重篤な予後の原因となる。筋力・骨格の形態的加齢のみならず視・聴・平衡機能などの感覚さらには固有知覚を包括した反応時間などの機能的加齢との統合的原因と考えられている。そのため開閉眼のみの静止起立位の重心動揺検査では検討内容に限度があった。本報告では頚部と躯幹の固有知覚と眼球の関与を検討した。対象は30〜63歳の7名の健常人で研究目的を説明し同意を得て記録した。[頭部のみ反復回転運動 vs. 頚部は出来るだけ動かさない頭部・胸郭同期反復回転運動]の2種の運動指示(M1/2)と,[被験者自身の運動に同期したレーザー投影像注視 vs. 正面固視点注視 vs. 閉眼]の3種の眼球指示(E1/2/3)と,[被験者自身の最適なペース vs. その2割早いペース vs. 2割遅いペース]の反復運動ペース指示(P1/2/3)の3指示の組み合わせを各20秒行ってもらった。照明,温度環境は一般の病院に準じ,眼前1.2mのスクリーン前に設置した重心動揺計で足圧を計測し,レーザーポインターと無線小型3軸加速度計を設置した帽子をかぶり頭位を計測した。回転巾は±30度とし特性・感度はすべて一定で記録解析した。信号は高速フーリエ演算しパワー値を求めた。頭部信号のピーク周波数における足圧信号のパワー値を検討した。分散分析にてM2がM1より有意におおきかった。M1横揺れではE3P1が大きくM1前後揺れではE3P3が大きかった。M2では横・前後揺れともにE2P2が大きい傾向が見られた。質量や自由度の問題もあるが,頚部の固有知覚の関与のほうが胸郭以下の固有知覚の関与より大きいことが示唆された。
 
 
   
  心不全症状を呈した巨大食道裂孔ヘルニアの1例
伊藤(清水)里美 前野正登 簗島謙二 山本修一
1) 国立成育医療研究センター眼科
2) 千葉大学大学院医学研究院眼科学
3) 国立障害者リハビリテーションセンター 放射線科
4) やなしまクリニック



MRスペクトロスコピーにより正常人の後頭葉における代謝物質(N-アセチルアスパルテイト (NAA), クレアチン(Cr), and コリン(Cho))を測定し,加齢と性別による影響について検討した。  症例は,69例(男性37例,女性32例)で,平均年齢は44.0±18.1歳(20〜83歳)であった。各代謝物質(NAA, Cr, Cho)は,1.5テスラのMRIシステムにて測定し,年齢,性別に分類したグループでの平均値の比較を行った。  男女共に60歳以上の年齢群では,20−39歳群(P<0.001)や40−59歳群(P=0.001)と比べ有意にNAAは低かった。性別間では,3種類の代謝物質すべてにおいて女性(NAA, 57.01±6.48; Cr, 33.77±4.45; and Cho, 16.33±3.24)は,男性 (NAA, 47.44±6.19, P<0.001; Cr, 27.55±5.24, P<0.001; and Cho 12.99±3.38, P<0.001)よりも有意に高かった。しかし,各年齢,性別群間の代謝物質の比には明らかな有意差はなかった。  MRスペクトロスコピーによる後頭葉の測定では,年齢や性別の因子を考慮するべきである。

 
   
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