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千葉医学雑誌

千葉医学雑誌一覧
 
千葉医学 88 (3) :97-154, 2012
原著
AFP産生胃癌の臨床病理学的検討
 椎名伸充 滝口伸浩 永田松夫 山本 宏
 池田 篤 貝沼 修 早田浩明 趙 明浩
 伊丹真紀子 荒木章伸 宮崎 勝 (和文・PDF
多重折りハムストリングスを使用した陳旧性アキレス腱断裂およびアキレス腱再断裂の治療成績
 赤津頼一 森川嗣夫 平山次郎 藤田耕司
 橋本将行 土屋 敢 竹内慶雄 岩崎潤一
 中川量介 乗本将輝 佐粧孝久 (和文・PDF
症例
J字型髄内ピン固定法による小児前腕骨骨折の治療経験
 小川泰史 板寺英一 國吉一樹(和文・PDF
研究紹介
環境影響生化学 その4(最終講義編)  ―ヒトSOS生理機能の紹介と低線量放射線被曝問題への提言 ―
 鈴木信夫(和文・PDF)
話題
  ゲッティンゲンにおける講義と並行の神経生理学実習
 野光司(和文・PDF)
海外だより
  ウィスコンシン大学マディソン校への短期派遣を経て
 豊留孝仁(和文・PDF)
学会
第1234回千葉医学会例会・第29回神経内科教室例会(和文・PDF)
第1237回千葉医学会例会・第11回呼吸器内科例会第25回呼吸器内科同門会)(和文・PDF)
OAP要旨
JNJ-10198409は神経芽腫がん細胞に対し選択的に細胞障害性と細胞増殖抑制性をもつ
 藤谷真弓 Natalie Grinshtein Kristen M. Smith David R. Kaplan(和文・PDF)
Haemophilus influenzae type b髄膜炎患者より分離された髄液・血液・鼻咽頭由来株の制限酵素多型性解析
 星野 直 石和田稔彦 河野陽一(和文・PDF)
編集後記(和文・PDF)

 
   
  AFP産生胃癌の臨床病理学的検討
椎名伸充1) 滝口伸浩1) 永田松夫1) 山本 宏1) 池田 篤1) 貝沼 修1) 早田浩明1) 趙 明浩1) 伊丹真紀子2) 荒木章伸2) 宮崎 勝3)
1) 千葉県がんセンター消化器外科
2) 千葉県がんセンター臨床病理部
3) 千葉大学大学院医学研究院臓器制御外科学

 【はじめに】AFP産性胃癌は細胞増殖能や脈管侵襲が強く,肝転移の頻度が高いため,一般的に予後が悪い。当院で胃切除術を施行しAFP産性胃癌と診断された症例を臨床病理学的に検討した。
 【方法】2000年1月から2008年12月までに当院で切除術が行われたAFP産生胃癌21例を臨床病理学的に検討した。AFP産生胃癌は,胃切除標本のAFP免疫染色により陽性と診断されたものと定義した。
 【結果】年齢は平均65.9歳,男女比は19:2,腫瘍長径は平均6.3pであった。組織型は中分化型腺癌が7例で最も多かった。深達度はSSが38.1%と多く認められた。間質量ではmed 8例, int 13例,sci 0例で,浸潤増殖様式ではINFα 6例,INFβ 14例,INFγ 1例であった。ly2,ly3の症例は10例,v2,v3の症例が20例と多いのが特徴であった。予後は治癒手術を行った15例中10人(66.7%)が再発した。肝転移を認めた症例は全体の52.4%に及んだ。14人(66.7%)が死亡し,累積3年生存率は22.9%,中央生存期間は19.0ヵ月であった。
 【結語】AFP産性胃癌は,静脈侵襲が強く,高頻度で肝転移をきたし,治癒手術症後の再発例も多く見られ,予後不良である。成績向上には,早期診断法の確立とともに,化学療法剤およびレジュメの開発により,より有効な集学的治療が必要である。
 
 
   
  多重折りハムストリングスを使用した陳旧性アキレス腱断裂およびアキレス腱再断裂の治療成績
赤津頼一 森川嗣夫 平山次郎 藤田耕司 橋本将行 土屋 敢 竹内慶雄 岩崎潤一  中川量介 乗本将輝 佐粧孝久1)
千葉メディカルセンター整形外科
1) 千葉大学医学部附属病院整形外科


  アキレス腱断裂は日常しばしばみられる外傷である。新鮮例に対する治療により良好な治療成績が得られるため,陳旧例に遭遇することは稀であり治療の報告は少ない。当科においてこの9年間に15例の陳旧性アキレス腱断裂および再断裂を経験し,全例自家遊離腱移植術を施行した。ここにその成績を報告する。  対象の年齢は平均42.9歳であり性別は男性12例,女性3例であった。術式は神中法に準じたが移植腱をより強靭とするために多重折りとした方法(ハムストリングス多重法と称する)で行った。腰椎麻酔施行後,腹臥位で移植腱(半腱様筋腱14例,薄筋腱1例)を鵞足部より採取し,多重折りにしアキレス腱健常部両断端に移植腱の両端を挟み縫合した。後療法は術直後から健側同等の自然下垂位で膝下ギプス固定を施行し平均40.7日固定した。ギプス除去後は術後平均75.2日で全荷重を開始した。平均経過観察期間は48.2カ月であった。日本足の外科学会足関節・後足部判定基準は平均97.8点,健側との最大下腿周囲径の差は平均−6oであった。片側爪先立ちは平均6.1カ月で全例可能となった。陳旧性アキレス腱断裂には多くの術式があるが,神中法以外は長い皮切が必要であり筋力低下が著明になるものや繁雑なものが多い。神中法は腹臥位で膝窩部より半腱様筋腱を採取するため移植腱が短く1重で移植しているのに対し,ハムストリングス多重法の特徴は腹臥位で鵞足部より半腱様筋腱を採取することにより十分な長さの移植腱を採取することができ,それにより多重折りでの移植が可能となり,十分な強度が得られると考えられた。これにより良好な術後成績が得られているものと考えられた。
 
   
  J字型髄内ピン固定法による小児前腕骨骨折の治療経験
小川泰史 板寺英一 國吉一樹1)
鹿島労災病院整形外科 1)千葉大学大学院医学研究院整形外科学


 1939年のKüntscherによるはじめての報告以降,様々な髄内釘が長管骨骨折に対し使用されてきた。これまで我々は,中手骨骨折患者に対しJ字型髄内ピンを用い治療し,その治療成績を報告してきた。今回我々は,このJ字型髄内ピン固定法を小児前腕骨骨折患者に用いて治療した。対象は4例の小児前腕骨骨幹部骨折患者で,年齢は4〜14歳,平均年齢10.75歳であった。使用するK-wireの形状や長さは患者の骨の形状に応じ作成し,Rigidに固定することを目指した。全例において骨癒合良好であり,また関節可動域制限や合併症を認めなかった。本法は,小児前腕骨骨幹部骨折に対する手術法として有用であると考えた。
 
   
  〔研究紹介 ― 環境影響生化学 その4 (最終講義編) ―〕
― ヒトSOS生理機能の紹介と低線量放射線被曝問題への提言 ―
鈴木信夫
千葉大学大学院医学研究院環境影響生化学


  ストレス社会対応の新しい教室を15年間主宰すべく,次の基本理念の基,研究と教育およびアウトリーチ活動を行いました。即ち,「科学における創造とは,未知のものを既知化し,非常識のものを常識化する」という作業です。具体的には,私共の創造作業とは,突然変異という従来の概念を「変異には必然性有り」とする考えへと変更させるものでした。この変異の発生を調節するメカニズムの解明は,生命研究の根源的課題であります。SOS応答という基本概念での研究ストラテジーでした。但し,多くの工夫が必要でした。まずは,約20年間をかけて,培養ヒト細胞レベルとヒト個体レベルで,変異発生に関わるストレス状態に超高感度で反応する実験システムを構築しました。次に,約15年間をかけて,どのようなストレス状態が変異発生の調節,ひいてはヒトの健康長寿に最適かという難問を解き明かそうとしました。宇宙旅行時代となりつつある現代,果して,ヒトは地球圏外のストレスにも耐えられるのでしょうか。そのような疑問にも答えようとしました。言うなれば,ヒトの将来を見越す進化医学という新しい学問分野を切り開こうとしたのです。  以上のような活動の基盤としては,約35年以前にさかのぼりますが,大腸菌におけるSOS応答の実証に成功したこと,およびそのことにつながる医学生と研究生としての学究活動とがありました。SOS応答とは,モールス信号のSOSにちなんでつけられた生命の危機管理応答です。そのような仕組みを演繹することにより,危機管理医学という新しい社会学問体系も創造し,その実践利用もすることとしました。従って,「1発見から無限の貢献」を目標に,毎年わずか20数名の構成員からなる教室でしたが,多種多様な学際的創造過程での成果の社会還元にも努力しました。例えば,全国各地で官民の協力も得て,食品や環境の問題と関連させた様々な市民講座を開催しました。テロ対策上の社会ネットワーク作りもしました。言うなれば,学問の創造から新しい社会コミュニティー作りの実践への展開でした。なお,そのような講座での成果を教育現場へも還元しました。PST (Practical Self Training)と命名して,学生自らに社会の問題を発掘させ,その問題の解決を目指させるという能動型カリキュラムを構築してきました。  知恵ではなく知識や実利を重視し数値化することに終始しがちな現代社会の要求にも対処した教室としての活動でした。
 
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