千葉医学会 The Chiba Medical Society
千葉大学 千葉大学大学院医学研究院→
千葉大学附属病院→
千葉医学会 The Chiba Medical Society HOME 千葉医学会の紹介 お知らせ Chiba Medical Journal 千葉医学雑誌 医学雑誌関連情報


千葉医学雑誌

千葉医学雑誌一覧
 
千葉医学 72 (3) :177-223, 1996

原著
特発性自然気胸に対する胸腔鏡下手術の成績ヒト肝癌組織における内在性ADP‐ribosylationの検討
 外川 明 宮崎 勝 中島伸之 野村文夫 盛永直子 野田公俊
 
特発性自然気胸に対する胸腔鏡下手術の成績
 由佐俊和 渋谷 潔

ヒトの抗原誘発鼻粘膜腫脹における中枢を介する神経反射の関与
  谷川博一

海外だより
ピッツバーグ便り
 永原 健

学会
第7回千葉県MOF研究会
第925回千葉医学会例会,第20回千葉大学医学部放射線医学教室同門会例会
第929回千葉医学会例会、第一外科教室談話会
第928回千葉医学会例会、第29回麻酔科例会・第57回千葉麻酔懇話会
第9l6回千葉医学会例会、第2回千葉泌尿器科同門会学術集会

編集後記

 
   
  ヒト肝癌組織における内在性ADP‐ribosylationの検討
外川 明 宮崎 勝 中島伸之 野村文夫2) 盛永直子1) 野田公俊1)
千葉大学医学部外科学第一講座 1)千葉大学医学部微生物学第二講座 2) 筑波大学臨床医学系臨床病理学


ADP‐ribosylationはNADを基質とし、そのnicotinamide基の離れた残基のADP‐riboseが蛋白に結合する反応である。しかし、ヒト癌細胞や組織におけるADP‐ribosylationの検討はなされていない。今回、千葉大学第一外科において肝切除された肝細胞癌および転移性肝癌組織を用いて、内在性ADP‐ribosylationを検討した。また非癌部組織(組織学的に確認)についても同様に検討した。肝細胞癌8例、転移性肝癌3例、正常肝6例、硬変肝5例を対象とした。肝細胞癌はEdmondson分類ではT型1例、U型5例、V型2例であり、転移性肝癌の原発部位は大腸癌2例、乳癌1例であった。肝細胞癌8例中2例はHCV抗体陰性、6例は陽性であり、硬変肝は全例陽性、正常肝、転移性肝癌は全例陰性であった。HBs抗原は全例陰性であった。肝の切除標本より癌部、非癌部の各組織のホモジネートを作製し、[32P]NAD添加後インキュベートし内在性のADP‐ribosylationの発現をSDS‐PAGE後オートラジオグラフィーにより検討した。8例全ての肝細胞癌組織においてll6kDaの位置に32Pの集積がみられ、ADP‐ribosylationの発現が示唆された。この反応は肝癌組織の分化度よりみたEdmondson分穎とは相関が見られなかった。これに対し、手術時採取された非癌部組織である肝硬変組織及び正常肝組織においてはll6kDa蛋白の32P の集積は全く認められなかった。この肝細胞癌組織ホモジネートに見られたll6kDaにおける32Pの集積の経時的推移を調べると、インキュベート開始後速やかに起こり20分で最高値に達し、以後速やかに減衰し60分後ではわずかに見られるのみであり、l20分後にはその集積は完全に消失していた。この肝細胞癌組織ホモジネートのll6kDaにおける32Pの集積に対して、コレラ、百日咳トキシンを添加した場合の影響は認められなかった。以上より、このll6kDaにおけるADP‐ribosylationは肝細胞癌に特異的に認められる反応である事が強く示唆された。    
 
   
  ヒトの抗原誘発鼻粘膜腫脹における中枢を介する神経反射の関与
由佐俊和 渋谷 潔 千葉労災病院 呼吸器外科


特発性自然気胸に対する胸腔鏡下手術を腋窩開胸による手術と比較しつつ、その治療成績について検討した。対象はl992年以降手術療法を行った特発性自然気胸症例で、胸腔鏡下手術82例、腋窩開胸l2例である。胸腔鏡下手術を企図した82例中76例(92.7%)胸腔鏡下に気腫性嚢胞の切除が可能であった。残りの6例は強度の胸膜癒着などのため開胸術に移行した。腋窩開胸との比較では、手術時間、術後胸腔ドレーン留置日数には差はなかったが、出血量、胸腔ドレーン排液量、鎮痛剤使用回数、術後在院日数はそれぞれ胸腔鏡下手術が腋窩開胸に比べ有意に少なかった。胸腔鏡下手術後の気胸再発は76例中5例(6.6%)にみられたが、手術後に胸膜癒着療法を追加した70例では再発は3例(4.3%)であった。合併症は、術後7日以上の肺漏遷延が3例あったが他にみるべきものはなかった。以上より、胸腔鏡下手術はほとんどの特発性自然気胸に対して可能であり、侵襲が小さく安全で有効な手術法であると考える。
 
   
  早期前立腺癌に対する去勢をしない新内分泌療法の治療成績:奏効した全6症例の報告
谷川博一 千葉大学医学部耳鼻咽喉科学講座


本研究では鼻アレルギーにおいて抗原誘発時にみられる鼻粘膜腫脹に中枢を介する鼻粘膜血管反射がどの程度関与するのかを明らかにするために、ハウスダストを抗原とする鼻アレルギー25症例を対象に一側抗原誘発時のくしゃみ回数、鼻汁量、鼻粘膜の抵抗血管、容積血管の反応をレーザードップラー血流計およびAcoustic Rhinometerを用いて経時的に測定し、誘発側鼻粘燦血管反応と比較した。抗原誘発時のくしゃみ回数と誘発側鼻汁分泌量、くしゃみ回数と反対側鼻汁分泌量、誘発側と反対側鼻汁分泌量の間には有意の相関を認めた。一側鼻粘膜抗原誘発後、誘発側では誘発9分でピークを示し、以降時間の経過とともに減少を示す有意な血流増加を認め、反対側では3分後にプラトーを持つほぼ同じ時間経過を示す鼻粘膜血流量増加を認めた。しかしその程度は誘発側の81.3%であった。一方、一側鼻粘膜抗原誘発時、誘発側では25例中l8例で、反対側では25例中l6例で有意な鼻粘膜腫脹が認められた。両側鼻腔容積減少例では反対側鼻粘膜腫脹の程度は誘発側の約45.3%であり、有意な変化の持続時間は誘発後12分までであった。以上より,鼻アレルギーにおいて抗原誘発時の鼻粘膜腫脹に中枢を介する神経反射による容積血管反応が一部関与するものと考えられた。
 
   
  お問い合わせ e-mail : info@c-med.org  

Copyright (C) 2002 The Chiba Medical Society. All Rights Reserved.