千葉医学会 The Chiba Medical Society
千葉大学 千葉大学大学院医学研究院→
千葉大学附属病院→
千葉医学会 The Chiba Medical Society HOME 千葉医学会の紹介 お知らせ Chiba Medical Journal 千葉医学雑誌 医学雑誌関連情報


千葉医学雑誌

千葉医学雑誌一覧
 
千葉医学 74 (2) :83-143, 1998

原著
わが国のLeigh脳症におけるミトコンドリアDNA変異の検討
 牧野道子
 
Haemophilus influenzae健常小児鼻咽腔由来株並びに不気道感染症由来株の莢膜血清型の検討
 佐藤さゆり 石川信奉 杉岡竜也 黒木泰郎 上原すゞ子 新美仁男

内視鏡下超音波ドップラー法を用いた内視鏡的食道静脈瘤硬化療法効果判定
 田中 元

哺乳類のポリコームグループ(PcG)遺伝子群はB細胞において抗IgM抗体刺激後の初期応答に関与する
 長谷川正行

膵蛋白合成能測定による移植膵のViability評価法に関する研究
 宮内英聡 浅野武秀 植松武央 中郡聡夫 長谷川正行 丸山通宏 岩下 力 磯野可一

学会
第923回千葉医学会例会、第11回磯野外科例会
第939回千葉医学会例会、第12回磯野外科例会

編集後記

 
   
  わが国のLeigh脳症におけるミトコンドリアDNA変異の検討
牧野道子 千葉大学医学部小児科学講座


 Leigh脳症80例について、ミトコンドリアDNA変異を検討した。11例はこれまでにも報告の多い8993番での変異を有した。それに加えて、3例でわが国ではまだ報告のない9176番でのT→C変異を認めた。この9176変異はこれまでに米国から家族性両側線状体壊死症の1兄弟例ならびにスペインからLeigh脳症1例の報告があるのみである。今回3例で本変異が検出されたことより、8993変異と同様にLeigh脳症の一因として位置づけることができると考えられた。
 
   
  Haemophilus influenzae健常小児鼻咽腔由来株並びに不気道感染症由来株の莢膜血清型の検討
佐藤さゆり 石川信奉 杉岡竜也 黒木泰郎 上原すゞ子 新美仁男 千葉大学医学部小児科学講座


 Haemophilus influenzae (H. influenzae)標準株を用いて、3社の抗血清とCounterimmunoelectropphoresis (CIE)での基礎的検討を行ったうえで、健常小児鼻咽腔より検出されたH. influenzae株と、当科における下気道感染症由来株について血清型の検討を行った。小学4年生154名中19名の鼻咽腔からH. influenzaeが分離された。これより5名のHaemophilus influenzae type b (Hib)保菌者を除いた14名14株(1症例1株)のうち、nontypeable 13株、不明1株であった。同様に0〜3歳児342名中27名からH. influenzaeが分離され、このうちHib保菌者は3名、残りの24名24株のうちnontypeable 22株、type e1株、不明1株であった。1996年1月から12月までに洗浄喀痰より有意に分離された下気道感染症由来H. influenzae 208株から、等しい生物型を持つ同一症例由来株を除いた116株について型別を行った。莢膜株は8株あり、type b 3株、type d 1株、type f 4株であった。莢膜株8株のうち、5歳と6歳児に由来したtype f 2株を除く6株は砥γグロブリン血症を有する慢性気管支炎症例(8〜28歳)由来であった。不気道感染症由来株はnontypeableが大部分を占め、莢膜株は少数に過ぎなかったが、慢性気管支炎を呈する比較的高年齢の低γグロブリン血症患者より検出される傾向にあった。
 
   
  内視鏡下超音波ドップラー法を用いた内視鏡的食道静脈瘤硬化療法効果判定
田中 元 千葉大学医学部外科学第二講座


 食道静脈瘤に対する内視鏡的硬化療法(EIS)の効果判定に際し、治療後残存する潰瘍や粘膜浮腫が治療後早期の的確な効果判定を困難にしている。我々は独自に開発した内視鏡下超音波ドップラー法を用いて治療後早期に効果判定を行い、その後の経過を検討した。19例のEIS施行後症例において硬化療法施行後1週間後に効果判定を行い、肉眼的には明らかな静脈瘤が存在しない11症例中6症例において血流波の残存が確認された。血流が消失した症例では6ケ月以内の静脈瘤早期再発は認められなかったのに対して、血流残存例では50%(3例)の症例において静脈瘤の6ケ月以内早期再発を認めた。本法を用いた血流残存有無の判定は早期再発の予測方法として有用な方法と思われた。
 
   
  哺乳類のポリコームグループ(PcG)遺伝子群はB細胞において抗IgM抗体刺激後の初期応答に関与する
長谷川正行 千葉大学医学部外科学第二講座


 ポリコームグルーブ(PcG)遺伝子はショウジョウパエにおけるホメオボックス遺伝子発現の調節因子として最初に報告された。哺乳類の相同遺伝子として、現在までにmel-18、bmi-1、M33、rae-28の4遺伝子が代表例として知られている。これらの遺伝子は、ショウジョウパエとの類似から哺乳類のホメオボックス遺伝子発現の調節因子としてだけでなく、B細胞の分化や増殖に作用を及ぼしている。本研究では、これら4つの哺乳類のPcG遺伝子がB細胞において抗原刺激後の初期に誘導されることを示した。哺乳類のPcG遺伝子が初期応答に関与している可能性があり、B細胞活性化の調節機構の研究にとって、意義深いものとなると考えられる。
 
   
  膵蛋白合成能測定による移植膵のViability評価法に関する研究
宮内英聡 浅野武秀 植松武央 中郡聡夫 長谷川正行 丸山通宏 岩下 力 磯野可一 千葉大学医学部外科学第二講座


 膵移植成績向上のために移植膵のviability評価はきわめて重要であるが、いまだ確実と言える方法はない。膵においては、消化酵素やホルモン等の蛋白合成が活発に行われており、移植前の膵蛋白合成能はグラフトのviabilityを反映するものと思われる。この観点より、簡便な方法によるviability assyを考案し、検討した。膵蛋白合成能(Pancreatic Protein Synthesis Rate: PPS)は、生検により得た膵組織を3H標識したアミノ酸とともに37℃にて30分間インキュベートし、これを取り込んだ後の放射活性の測定により、組織蛋白重量当たりの標識アミ酸量として算出した。実験には雄性WKAHラットを用い、頚部への同種膵体尾部移植を施行した。移植直前に、種々の温阻血時間を負荷した摘出膵グラフトより生検し、PPSを測定した。移植後連日血糖値を測定し、7日目に経静派的糖負荷試験(IVGTT)を施行後、グラフトを摘出し組織像を検討した。その結果、PPSは温阻血時間の長い群ほど低値となり生着率も低かった。PPSは移植後7日目のIVGTTより求めた血糖消失率K値と有意に正の相関を示した(r:0.7)。7日目膵組織像の視察にてはPPSの高いものほどラ島細胞が良好に保たれている傾向を認めた。さらに移植膵機能群は移植前PPSが全例1.5以上であるのに対し、無機能群では全て1.5未満であった。以上よりPPSは短時間で簡便に測定でき、移植前の測定により、primary non-functionに陥るべき不良膵を排除しうることが期待され、viability asseyとして有用であると考えられた。
 
   
  お問い合わせ e-mail : info@c-med.org  

Copyright (C) 2002 The Chiba Medical Society. All Rights Reserved.