千葉医学会 The Chiba Medical Society
千葉大学 千葉大学大学院医学研究院→
千葉大学附属病院→
千葉医学会 The Chiba Medical Society HOME 千葉医学会の紹介 お知らせ Chiba Medical Journal 千葉医学雑誌 医学雑誌関連情報


千葉医学雑誌

千葉医学雑誌一覧
 
千葉医学 74 (3) :145-241, 1998

原著
BlA法による身体構成成分測定の基礎的研究とその臨床応用
 児玉多曜
 
実験的肺転移マウスメラノーマ腫瘍に浸潤するリンパ球機能の解析
 黒須昭博

インスリン非依存型糖尿病における血管平滑筋細胞の形質の変化とその機序
  田村 憲

20MHz細径超音波プローブによる表在食道癌深達度診断の基礎的、臨床的検討
 森川丘道

門脈圧亢進症における胃静脈瘤X線分類の臨床的意義
 白戸寿男

腰椎前方固定術後における性機能障害
 高橋和久 山縣正庸 守屋秀繁

卒前臨床教育の変革に関する検討(第二報):第二内科におけるベッドサイドラーニング
 高林克日己 岩本逸夫 齋藤 康

海外だより
ハーパード大学医学部・ブリガム アンド ウーマン病院
 中郡聡夫

学会
第11回千葉県重症患者管理研究会
第961回千葉医学会例会、第22回放射線医学教室例会
第962回千葉医学会例会、第32回肺癌研究施設例会
第969回千葉医学会例会、第20回千葉大学第三内科懇話会

編集後記

 
   
  BlA法による身体構成成分測定の基礎的研究とその臨床応用
児玉多曜 千葉大学医学部外科学第二講座


BIA(bioelectrica1 impedance analysis)による身体構成成分測定の育用性を、ラットを用いて基礎的に検討した。また、小児の身体構成成分測定に応用し、臨床的意義を検討した。  4週齢SD系雄性ラット(n=36)で、高脂肪食群(n=13)、普通食群(n=13)、Kwashiorkor群(n=5)、Marasmus群(n=5)の4群を14週間飼育後、体重(W)、体長(L)、生体抵抗(R)を測定後、クロロホルムメタノール法にて、直接脂肪を抽出し体脂肪率(%BF)を測定したところ、異なる身体構成成分のラットが作成できた。%BFとW,BMI;bodymass index(W/L^2)、BIA法の原理からの%BFパラメーター(WR/L^2)との相関係数を、BMI平均以上群と以下群で検討すると、平均以上群では相関は向上したが、以下群では低下し、BIA法は肥満群で有用である特性を持つことが明らかになった。  そこで、143人の小児を対象として、BIA法の原理からの%BFパラメーター(WR/L^2)、Deurenbergの推定式から算出した%BF、肥満度、BMI、ローレル指数と血圧、血糖、総コレステロール、トリグセライト、GOT、GPT、Ch−Eとの相関を求め、臨床的意義を検討した。その緒果WR/L^2と臨床的パラメーターの相関はDeurenbergの推定式から算出した%BFと同等であり、推定式を介さないBIA法の原理からのWR/L^2も有用な%BFパラメーターであることが示唆された。    
 
   
  実験的肺転移マウスメラノーマ腫瘍に浸潤するリンパ球機能の解析
黒須昭博  千葉大学医学部附属高次機能制御研究センター免疫機能分野


腫瘍浸潤リンパ球(TIL)は腫瘍免疫に重要な役割を果たすことが知られている。本論文では、実験的肺転移メラノーマ腫瘍巣より回収したTILのサイトカイン産生および細胞傷害活性を解析し、TILの免疫学的な役割を調べた。C57BL/6の尾静脈よりB16メラノーマを静注し実験的肺転移腫瘍を作成した。この動物に抗Vα3.2抗体を投与すると肺転移巣の数が減少した。このことよりVα3+T細胞はメラノーマ細胞に対する細胞傷害活性に抑制的に働くことが分かった。また腫瘍より分離した細胞群からVα3+T細胞を取り除いた群では細胞傷害活性は上昇し、再度Vα3+ T細胞を加えた群では細胞傷害活性が低下した。これらの緒果よりVα3+T細胞はin vitroにおいても細胞傷害活性抑制作用を育することが判明した。しかしEL−4マウスリンパ腫細胞に対するキラ-T細胞の機能には影響を与えなかった。このことはVα3+T細胞の抑制作用に抗原特異性があることを示唆している。このVα3+T細胞のサイトカイン産生パターンをRT−PCR法およびサザンブロット法にて調べたところ、IL−2、IL−4は発現していないものの、IL−10、TGF一β、IFN一γは発現しており、このことはVα3+T細胞が従来のTh1/Th2の分類に属さない型のT細胞であることを示唆している。さらにin vitroで抗B16メラノーマキラーT細胞にTGF一βを投与したところ、B16メラノーマに対する細胞傷害活性が低下することが判明した。このことから、Vα3+T細胞の細胞傷害活性に対する抑制作用にTGF一βが重要な役割を担っている可能性があることが示唆された。
 
   
  インスリン非依存型糖尿病における血管平滑筋細胞の形質の変化とその機序
田村 憲  千葉大学医学部内科学第二講座


動脈硬化巣の形成機序においては、血管平滑筋細胞(SMC)の形質変化が重要な役割を果たしている。糖尿病における動脈硬化の発症、進展には、血糖の上昇を生じる以前より認められる代謝異常や遺伝的背景が大きく関与することが知られている。これまでインスリン依存型糖尿病(IDDM)のモデル動物では、糖尿病発症後に動脈壁中膜SMCに血小板由来増殖因子(PDGF)β受容体が過剰に発現し、内膜傷害時の内膜肥厚に促進的に働いていることが示唆されている。しかしこのようなSMCの形質変化のインスリン非依存型糖尿病(NIDDM)への関与についてはいまだ明らかではない。そこで、NIDDMのモデル動物であるOtsuka Long-Evans Tokushima Fatty(OLETF)ラットを用いて、動脈壁の上述の変化について検討した。OLETFラットの培養SMCの増殖能は、10%牛胎児血清存在下で、コントロールである Long-EvansTokushima Otsuka(LETO)ラットSMCに比べ亢進していた。その増殖亢進は、主としてPDGF-ABおよび-BBによりもたらされていると考えられた。しかも、 OLETFラットの成長の経時的観察により、SMCの増殖能は糖尿病発症以前より亢進していることが明らかとなった。さらに、LETOラットに比べ、糖尿病発症以前のOLETFラット動脈壁中膜におけるPDGFβ受容体の蛋白レベルでの過剰発現が確認された。OLETFラットでは、動脈壁中膜におけるPDGFβ受容体の過剰発現とともに、フィブロネクチン(FN)の過剰発現も認めた。またOLETFラットSMCにおいてのみ、FN産生はトランスフォーミング増殖因子(TGF)β1により刺激された。そこでTGF-β受容体について検討したところ、U型受容体蛋白が0LETFラット動脈壁中膜で過剰に発現していた。これらのことより、OLETFラットでは、糖尿病発症以前より動脈壁SMCにおけるPDGFβ受容体の過剰発現という形質変化を生じており、この変化にはTGF-β-FN系が促進的に関与している可能性が考えられた。
 
   
  20MHz細径超音波プローブによる表在食道癌深達度診断の基礎的、臨床的検討
森川丘道 千葉大学医学部外科学第二講座


通常内視鏡の鉗子孔より挿入可能な20MHz細径超音波プローブは、従来用いてきた7.5MHz超音波内視鏡(EUS)に比べ分解能が向上し、食道表在性病変の描出に優れ、表在性食道癌の深達度診断の手段として、また、内視鏡的粘膜切除術の適応を決める手段として期待が寄せられている。しかし、深達度診断を行う前段階として不可欠である層構造の解釈に関しては、今だ一致した見解が得られていない。そこで我々は、基礎的、臨床的検討、ならびに超音波の理論からの考察を行い、層構造の同定を行った。基礎的検討では、塩化ビニール板を用いて本プローブの実際の距離分解能を把握し、食道壁層内への針刺し実験を行った。臨床的検討では、表在食道癌の超音波断層像と病理組織像との正確な対応を行った。また、超音波の理論より、層と層の間に生じる境界エコーに着目し、その性質について考察を加えた。粘膜筋板(mm)は、それ自体を描出することは難しく、第3層のhigh echo層の中に含まれると解釈された。そのため、超音波像に見合った深達度分類を行う必要があると考え、表在食道癌の深達度をType A〜Cに分類した。その結果、表在食道癌切除例36例の深達度診断の正診率は86%であり、本プローブが深達度診断の手段として有効であると考えられた。
 
   
  門脈圧亢進症における胃静脈瘤X線分類の臨床的意義
白戸寿男 千葉大学医学部外科学第二講座


門脈圧亢進症の病態生理を側副血行路の一部である胃静脈瘤から検討する目的で、教室で経験した胃静脈瘤症例をX線的に分類し、これと出血・腹水・脾重量・門脈圧などとの関連を検索し、特に肝硬変と特発性門脈圧亢進症に分けて病態を検討した。門脈圧充進症221例中、胃静脈瘤は164例に認められ、非常に高頻度に胃静脈瘤が存在した。胃静脈瘤を胃X線的に次の2群4型に分類した。すなわち・群は胃静脈瘤が拡張蛇行しているものである。これを近位型(TA型)、遠位型(TB型)に分けた。U群は胃静脈瘤が結節数珠状を呈するものである。これを近位型(UA型)、遠位型(UB型)に分けた。TB型、UA型、およびUB型で75%以上の出血率を認めた。経腹的食道粘膜離断術後の胃静脈瘤は著明な消退を示した。胃静脈瘤X線分類は門脈圧亢進症の病態生理の解明、出血の予測、手術適応、術後推移の観察などに有用な指標であるとの知見を得た。
 
   
  腰椎前方固定術後における性機能障害
高橋和久 山縣正庸 守屋秀繁 千葉大学医学部整形外科学講座


本研究は腰椎前方固定術後の男性患者における性機能障害の頻度、手術高位や手術方との関係、予後について調査することを目的とした。対象は1981年1月から1992年9月までに、千葉大学整形外科において腰椎前方固定術を受けた手術時年齢65歳以下の男性100名である。経過が不明であったのは1名であり、残りの99名について調査した。手術時平均年齢は33歳(11−65歳)であった。診断は腰椎椎間板へルニア66例(後方法後再発ヘルニア14例)、分離症・分離すべり症18例、腰椎椎間板障害7例、その他8例である。手術法は経腹膜法70例、腹膜外路法29例である。5例(5%)が術後性機能の異常を訴えており、すべて逆行性射精(retrograde ejacu1ation)であった。5例の内3例は術後14、16、16ケ月後に自然回復をみたが、これら3例の手術時年齢はそれぞれ34,27,32歳であった。調査時回復していなかった2例は手術時年齢が42, 56歳であった。L4−L5の単椎間固定を受けた47例では1例もこの合併症はみられず、L5−S1あるいはL5−L6の単椎間固定では34例中3例(9%)、L4−5、L5−S1の2椎間固定では13例中(15%)にみられた。男性患者に腰椎前方固定術を行う際には、本合併症に関する十分なinformed consentが不可欠である。
 
   
  卒前臨床教育の変革に関する検討(第二報):第二内科におけるベッドサイドラーニング
高林克日己 岩本逸夫 齋藤 康 千葉大学医学部内科学第二講座


千葉大学第二内科におけるベッドサイドラーニング(BSL)での評価による学生能力、および評価自身の意義について検討する目的で、平成8年度の第二内科BSL開始時と終了時の、マナー、BSLに対する積極性、患者医師関係、医行為の技能、医学知識、総合評価と同学年の卒業試験成績を解析した。評価法は5段階尺度とし、第二内科のBSL開始時に、「ふつう」に達しないものはマナー(6%)、積極性(11%)、患者医師関係(9%)、技能(18%)、知識(12%)、総合評価(14%)であり、特に医技能の能力の低さが認められた。これに対して終了時はそれぞれO%、2%、2%、6%、3%、5%と減少した。卒業試験の成績とは知識、総合評価、開始時の積極性とよい相関が得られた。卒業試験成績と全般的評価は正の相関を示し、間題のある学生を検出できた。また指導教官によって学生の卒試成績が異なることは、第二内科のBSLで動機づけがなされた可能性が示唆された。結論として千葉大学医学部のBSLは診療科を越えてより統一性をもったカリキュラムの中で、教官、学生双方の評価を加えるべきであると考えられた。
 
   
  お問い合わせ e-mail : info@c-med.org  

Copyright (C) 2002 The Chiba Medical Society. All Rights Reserved.