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千葉医学雑誌

千葉医学雑誌一覧
  千葉医学 千葉医学 90(1) :1-38, 2014
総説
ロコモティブシンドローム(ロコモ)
 岸田俊二 高橋和久(和文・PDF)
単孔式腹腔鏡補助下に切除した狭窄型虚血性小腸炎の1例
 山本悠司 丸山尚嗣 田中 元 松崎弘志 夏目俊之
  宮崎彰成 佐藤やよい 太田拓実 水藤 広
  相川瑞穂 大塚亮太 柳原章寿 清水辰一郎(和文/PDF)
研究紹介
心臓血管外科学教室における臨床,基礎研究
 松宮護郎(和文/PDF)
話題
ゲッティンゲン大学における私の神経生理学講義(3)
 野光司(和文・PDF)
第五回千葉医学会奨励賞
家族性ALSの原因遺伝子FUS/TLSに対する新規治療薬の可能性
 藤井早紀子(和文・PDF)
学会
第1257回千葉医学会例会・千葉大学大学院医学研究院消化器・腎臓内科学例会(和文・PDF)
OAP要旨
腰部脊柱管狭窄症に対する高気圧酸素療法の安全性と有効性の検討
 −前向きオープンラベル症例対照研究−
 鈴木 都 中村順一 江口 和 重村知徳
 井上 玄 折田純久 宮城正行 石川哲大
 山内かづ代 高橋和久 大鳥精司(和文・PDF)
編集後記(和文・PDF)

 
   
  ロコモティブシンドローム(ロコモ)
 岸田俊二 高橋和久
千葉大学大学院医学研究院整形外科学


 日本は世界一の長寿大国であり,高齢者数はさらに増加することが確実視されている。それと同時に変形性脊椎症,変形性関節症,骨粗鬆症に伴う骨折など,加齢に伴う運動器の変性疾患や外傷が増加している。2007年に日本整形外科学会はロコモティブシンドロームを提唱した。潜在的なロコモ人口は4,700万人と推定される。国民に広くロコモの啓発と予防が必要である。
 
   
  単孔式腹腔鏡補助下に切除した狭窄型虚血性小腸炎の1例
 山本悠司1) 丸山尚嗣1) 田中 元1) 松崎弘志1) 夏目俊之1)
  宮崎彰成1) 佐藤やよい1) 太田拓実1) 水藤 広1)
  相川瑞穂1) 大塚亮太1) 柳原章寿1) 清水辰一郎2)
1)船橋市立医療センター外科,2)病理


 症例は65歳女性。下腹部痛を主訴に来院し腸閉塞と診断。保存的に軽快し退院。手術歴はなく外来で精査予定であったが,退院翌日に腸閉塞が再燃し再入院とした。CT上,右下腹部回腸に狭窄部位があったが,原因は明らかではなかった。短期間に繰り返す腸閉塞に対し,単孔式腹腔鏡補助下小腸部分切除術を行った。右骨盤壁に回腸が癒着しており,腸閉塞の原因であった。癒着を剥離した後,臍部より小腸を体外に誘導し,小腸を部分切除した。病理検査では腸間膜内・粘膜下層に血栓・塞栓の形成を認め,クローン病や他の特異的炎症所見あるいは悪性所見なく,狭窄型虚血性小腸炎と診断した。小腸は側副血行路に富んでおり,虚血性病変は稀である。虚血性小腸炎の本邦報告例において腹腔鏡補助下の手術経験は数件のみあり,単孔式で切除した報告は本邦初である。腹腔鏡補助下の手術は低侵襲であるだけでなく良好な視野が得られ,他疾患の鑑別にも有用と思われた。
 
   
  〔第五回千葉医学会奨励賞〕家族性ALSの原因遺伝子FUS/TLSに対する新規治療薬の可能性
 藤井早紀子
千葉大学医学部6年


 筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral sclerosis; ALS)は上位・下位の運動ニューロンが変性する神経変性疾患であり,発症後3−5年には呼吸筋の麻痺によって死に至る重篤な疾患である。いまだ原因など病態の解明や有効な治療法の開発には至っていない。大部分が孤発例であるが,約10%は家族性であり,我々の研究グループは家族性ALSの原因遺伝子のひとつであるFused in sarcoma/Translocated in liposarcoma(FUS/TLS)に着目して機能解析を行った。FUS/TLSはRNA/DNA結合蛋白質であり,RNA代謝機能を有していることから,FUS/TLSの変異によって生じるRNA代謝の異常がALS発症に関与している可能性が考えられている。  FUS/TLSを原因遺伝子に持つ家族性ALS患者では,核移行シグナル(Nuclear localization signal; NLS)が存在するC端の遺伝子変異が数多く報告されており,FUS/TLS変異体が細胞質に凝集体を形成していることが知られている。この凝集体が毒性であるのか単なる副産物であるかは不明であるが,細胞質への偏移とその結果としての凝集体形成を抑制することがALS の新規治療法となる仮説が立てられる。まず,我々の研究グループはYeast two hybrid法を用いてFUS/TLSの結合因子であるアルギニンメチル化酵素PRMT1 (Protein arginine N-methyltransferase 1)を同定し,PRMT1によるFUS/TLSのアルギニンメチル化がFUS/TLSの核-細胞質間輸送に関与するという結果を得た。さらに,メチル化阻害剤投与によってFUS/TLS 変異体における細胞質の凝集体形成が抑制できた。これらの知見によりメチル化阻害剤は,FUS/TLSのC端に遺伝子異常を持つ家族性ALS患者に対して新規治療薬となる可能性が示唆される。
 
   
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