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千葉医学雑誌

千葉医学雑誌一覧
 
千葉医学 85 (5) :233-287,2009

展望
地域医療における乳腺専門医の意義
 唐司則之 永野耕士 長谷川 純 升田吉雄(和文・PDF
肉眼解剖実習に提供される解剖体のCT画像撮影の試みと期待される教育効果
 松野義晴 山本正二 宮宗秀伸 太田昌彦 鈴木崇根 小宮山政敏 森 千里(和文・PDF

原著
動的姿勢制御機能における加齢変化−立位から膝屈曲・屈曲保持・伸展−
 浅野由美 下山一郎 村田 淳(英文・PDF/HTML

研究紹介
右鎖骨下動脈起始異常を伴う食道癌の1例
 菅原岳史 山本修一 平松彩子 小片一葉 萩原 章(和文・PDF
腰痛研究の最先端 −椎間板内の感覚神経に着目して−
 大鳥精司 高橋和久(和文・PDF
救急集中治療医学
 服部憲幸 織田成人(和文・PDF
食道癌に対する免疫療法の開発への取り組みと将来
 阿久津泰典 松原久裕(和文・PDF

学会
第1181回千葉医学会例会・第8回呼吸器内科例会(第22回呼吸器内科同門会)(和文・PDF
第1186回千葉医学会例会・第26回千葉精神科集談会(和文・PDF

雑報
小児喘息発作即時改善の経験
 長谷川正博(和文・PDF

編集後記(和文・PDF
 
   
  地域医療における乳腺専門医の意義
唐司則之1,2)  永野耕士2)  長谷川 純2)  升田吉雄3)
1) 船橋市立医療センター外科,2) 船橋市医師会乳がん検診委員会,3) ますだ乳腺・甲状腺クリニック


 わが国における乳がんは増加傾向にあり,早期発見による死亡率の減少が重要な目標になっている。1997年に日本乳癌学会による乳腺専門医制度が発足し,乳がんの予防・診断・治療の進歩を通し,専門医による医療活動が行われている。さらに2004年10月に厚生労働省により,乳腺専門医が広告のできる専門医として認可された。船橋市立医療センターは2007年1月に地域がん診療連携拠点病院に指定されており,地域医療における乳腺専門医の役割として,市民への乳がん情報提供,受診率の向上,要精査率の低下および精度管理の向上などを目標とする市乳がん検診,関連施設との連携,乳がんチーム医療,研修医教育などを積極的に実施している。チーム医療では特にコメディカルの役割が重要となっている。今後の課題は,関連施設との連携パス(化療レジメンなど)の作成,市に未整備の精検機器(ステレオガイド下マンモトーム生検装置)の導入,30歳代の超音波検査併用による市乳がん検診,専門資格取得によるチーム医療の確立,がん診療相談支援システムの強化,緩和医療の充実などである。
 
   
  肉眼解剖実習に提供される解剖体のCT画像撮影の試みと期待される教育効果
松野義晴1) 山本正二2) 宮宗秀伸1) 太田昌彦1) 鈴木崇根1) 小宮山政敏1) 森 千里1)
1) 千葉大学大学院医学研究院環境生命医学, 2) 千葉大学医学部附属病院放射線科


 千葉大学では,基礎医学と臨床医学を関連付ける新たな統合的カリキュラムの基盤整備に着手しようとしています。これは,実習前に解剖体(ご遺体)へのCT画像撮影を施し,三次元再構築画像による体内情報(疾患部位等)について,実習を行う医学生に提供するものです。これには,疾患と形態変化の関連性を医学生に意識させる目的が挙げられます。本論では,試験的に行った女性の一例について紹介します。本例では解剖前のCTによって,片側の乳房組織の欠損を示唆する所見が得られました。この画像データをもとに,胸部の解剖を進めていくと,大胸筋の一部が切除されていることが明らかとなりました。このように,あらかじめCT画像撮影を行うことは,体内の状態を予測しながら解剖を進められるため,解剖する側にとって有用な方法といえます。また将来的には,得られたデータを医学生の解剖学教育に用いるだけではなく,医学研究,さらにヒトを対象とした他の研究領域へと汎用性を広げることで,学際的な意義はさらに高まるといえます。
 
   
  動的姿勢制御機能における加齢変化−立位から膝屈曲・屈曲保持・伸展−
浅野由美1) 下山一郎2) 村田 淳1)
1) 千葉大学医学部附属病院リハビリテーション部
2) 千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター脳機能計測解析研究部門


 日常外来における姿勢制御機能検査は直立起立位で開眼閉眼負荷をおこなう静的な検査で主流であったが,最近,ダイナミック姿勢制御について報告され始めた。研究所内でヒトの載った重心動揺計などの装置の角度を突然変化させるなど,立位健康人へ外乱を与える報告が多く,臨床における高齢者に施行するには困難な方法が多い。さらに受動的外乱が多く反射的な立ち直り機能を解析している。自から運動始める能動的運動によるダイナミック姿勢制御機能の報告は非常にすくない。膝屈曲伸展運動の報告はこれまで見当たらない。31から92歳(平均70.7標準偏差11.0)の高血圧・高コレステロール血症で内服加療中の95ボランティアから研究の趣旨を説明後,同意を得て,立位5秒→中腰位9.5秒→立位5秒の運動中の足底圧中心を計測し,その変位とスペクトル解析結果と,年齢・体重・身長との相関を検討した。課題は統一し「できる範囲で膝を90度くらいに曲げてください」とした。被検者の平均体重は56Kg(±10.3)で,平均身長は155p(±8.0)で,既往歴にメニエール・前庭神経炎・良性頭位変換眩暈はない。足底圧中心を水平面内前後方向・左右側方と,鉛直方向の信号として20Hz, 12bitで収集し。足圧中心の変位と,5秒間のフーリエ解析によるパワーの年齢・体重・身長との相関係数を求め,スピアマン検定で有意な係数を検討した。左右側方の変位は年齢に有意に相関して大きくなった。前後の変位は膝屈曲運動により年齢に相関して小さくなった。屈曲位保持時の揺れは年齢に相関して大きくなった。鉛直方向の揺れは年齢との相関は見られなかった。鉛直方向の揺れは体重と相関が認められ,膝屈曲運動では前後方向の揺れと体重にも相関が認められた。膝屈曲運動変位は身長は前後方向にも鉛直方向にも相関が認められた。膝屈曲位保持により水平面内の前後方向左右側方向に特徴的な周波数増加はみられないが,鉛直方向に2Hz付近の振動が増加した。静的のみならず動的負荷することにより多くの情報が得られ,リハビリテーションの評価などに応用したい。
 
   
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