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千葉医学 86 (3) :83-128, 2010
総説
骨折骨癒合研究の最近の進歩― 分子細胞生物学の視点から ―
 中島 新 山崎正志 高橋和久 (和文・PDF
原著
住民健診からみた加齢に伴うメタボリックシンドロームの特徴とその病態−市川市基本健診診査の解析 (2)−
 渡辺東也 小林靖幸 安部幹雄 岩澤秀明 浮谷勝郎 大塚智博 河内山資朗 上白土洋俊
 斉藤 彰 佐々木森雄 篠塚正彦 篠原正明 廣瀬安紀 福澤健次 土橋正彦(和文・PDF
立方体投射図形模写検査の定量的解析法の開発
 下山一郎 浅野由美 村田 淳 佐伯直勝 清水良平(英文・PDF/HTML)
症例
第5腰椎神経根から発生し巨大後腹膜腫瘤を形成した砂時計型富細胞性神経鞘腫の1例
 山本陽平 山崎正志 大河昭彦 大鳥精司 古矢丈雄 藤由崇之 川辺純子 山内友規 
 林 浩一 今牧瑞浦 東出高至 荒木千裕 谷澤 徹 梁川範幸 川名秀忠 石井 猛 高橋和久(和文・PDF)
急性四肢麻痺および呼吸麻痺により発症した頸髄神経鞘腫の1例
 加藤 啓 清水純人 佐藤正樹 染谷幸男 山崎正志(和文・PDF)
研究紹介
臓器制御外科学 肝胆膵研究室(U)
 木村文夫 清水宏明 吉留博之 大塚将之 加藤 厚 吉富秀幸 古川勝規
 竹内 男 高屋敷 吏 須田浩介 高野重紹 久保木 知 宮崎 勝(和文・PDF)
海外だより
フィラデルフィア留学記
 木村敬太(和文・PDF)
学会
第1199回千葉医学会例会・第9回千葉大学大学院医学研究院胸部外科学教室例会(和文・PDF)
編集後記(和文・PDF)

 
   
  骨折骨癒合研究の最近の進歩― 分子細胞生物学の視点から ―
中島 新 山崎正志 高橋和久 千葉大学大学院医学研究院整形外科学

  骨折治癒過程は損傷した骨組織が機械的負荷に耐えうる強度を回復するための生理反応である。主に炎症期,修復期(仮骨形成期),リモデリング期の3つのステージから成り,そのステージによって幾種かの異なる細胞群が精巧な制御の下に互いに協調しながら組織修復を行っている。近年,動物実験では骨形態形成因子(bone morphogenetic protein, BMP)など細胞成長因子の局所投与による骨折治癒促進を目指した研究が盛んに行われており,我々も塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor, bFGF)の局所投与による骨折治癒への効果を検討した。bFGFは仮骨を増大する作用があるものの,骨密度や力学強度に影響はなく,骨癒合を促進しなかった。最近,副甲状腺ホルモンの間欠投与による強力な骨形成作用が注目を浴びており,我々はPTH (1-34)の皮下投与による骨折治癒促進効果を検討した。PTHは仮骨の骨密度や力学強度を有意に増加させたが,軟骨分化には影響を及ぼさなかった。さらに,骨癒合遅延と関連の深い病態の一つである糖尿病(diabetes mellitus, DM)において遷延治癒のメカニズムを検討した。DM群ではコントロールに比して仮骨が有意に小さく,U,]型コラーゲン,オステオポンチンの発現が有意に低下していた。将来,細胞成長因子や副甲状腺ホルモンなどの全身または局所投与によって骨折治癒促進が可能になることが期待されるが,同時に効率的な使用方法が求められる。そのためには分子細胞レベルでのメカニズムの解析が重要であることを忘れてはならない。
 
 
   
  住民健診からみた加齢に伴うメタボリックシンドロームの特徴とその病態 −市川市基本健診診査の解析 (2)−
渡辺東也 小林靖幸 安部幹雄 岩澤秀明 浮谷勝郎 大塚智博 河内山資朗 上白土洋俊
斉藤 彰 佐々木森雄 篠塚正彦 篠原正明 廣瀬安紀 福澤健次 土橋正彦
市川市医師会健診検討研究会


  日本人男性にはメタボリックシンドロームが高頻度でみられるが,加齢に伴う病態の変化は不明である。本研究は各年代別の病態の特徴を検討することを目的とした。市川市住民健診男性受診者4,117名をメタボリックシンドロームとノンメタボリックシンドロームの二群に分けて年代別に比較検討した。40歳代,50歳代,60歳代,70歳以上の各年代で,メタボリックシンドローム群は,診断項目であるウエスト周囲径,収縮期及び拡張期血圧,中性脂肪,血糖が有意に高く,HDL−コレステロールが有意に低かった。各年代においてメタボリックシンドローム群で尿酸が有意に高かった。メタボリックシンドローム群では,40歳代より尿蛋白陽性を有意に多く,60歳代と70歳以上で慢性腎臓病(CKD)を有意に多く認めた。以上の結果から,メタボリックシンドロームでは尿酸代謝異常・CKDの合併に注意をする必要があると思われた。
 
   
  立方体投射図形模写検査の定量的解析法の開発
下山一郎1) 浅野由美2) 村田 淳2) 佐伯直勝3) 清水良平4)
1) 千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター脳機能計測解析研究部門
2) 千葉大学医学部附属病院リハビリテーション部
3) 千葉大学大学院医学研究院脳神経外科学
4) 清水脳神経外科


  図形の模写や指まね検査は,構成失行の簡便な検査として古くから利用されてきたが,その判定基準は定性的で主観が混入する。高齢社会の今日,正常な加齢現象か認知症など初期症候の一部なのか早期に客観的に診断する必要がある。そのために立方体模写検査について数値解析を提案し,高齢者群と正常対照群について試行した。解析方法は図形をデジタイザーで電子化し,正規化し2値化して2次元の相関係数を求めた。相関係数は6要素についておこない,第1に手本の図形と書かれた図形の相関係数をもとめ,第2に書かれた図形の点対称性を調べた相関係数を求め,第3に,書かれた図形を左右に2分して,左右の相関係数を求めた。第4に書かれた図形の上下2分した相関係数を求めた。第5・6に上下左右に4等分した対角線上の2図形の相関係数をそれぞれ求めた(MatLabR, R2007b, Math Works, USA)。対象は著者の病院外来を受診した患者さんに研究の説明後同意を得て検討した。高齢者群は,記憶低下または認知症を懸念した68〜92歳の19名,対照群は,軽度頭部打撲またはめまいを主訴で来院し神経学的検査で異常の認められなかった21〜60歳の9名とした。分散分析にてこの2群に有意差が認められ,高齢者のほうが有意に対称性は低値であった。なお高齢者群は改訂長谷川式簡易知能評価スケールを施行し平均値は21.1点で標準偏差は7.1点であった。対照群のCTスキャンは正常範囲で異常は認められなかったが,高齢者群のCTスキャンでは無症候性梗塞や皮質萎縮や脳室拡大が認められた。今後さらに改良を重ね詳細に分類していきたい。
 
   
  第5腰椎神経根から発生し巨大後腹膜腫瘤を形成した砂時計型富細胞性神経鞘腫の1例
山本陽平1)  山崎正志1)  大河昭彦1)  大鳥精司1)  古矢丈雄1)  藤由崇之1)  川辺純子1)  山内友規1)  林 浩一1)
今牧瑞浦2) 東出高至3) 荒木千裕4)  谷澤 徹5)  梁川範幸,6)  川名秀忠7)  石井 猛8)  高橋和久1)
1) 千葉大学大学院医学研究院整形外科学
千葉大学医学部附属病院 2) 心臓血管外科,3) 放射線科,4) 泌尿器科,5) 病理部,6) 放射線部
7) 千葉大学大学院医学研究院腫瘍病理学 8) 千葉県がんセンター整形外科


  症例は56歳女性。左下肢痛を主訴とし,MRIにて腰仙椎から後腹膜におよぶ巨大な砂時計腫が確認され,針生検にて富細胞性神経鞘腫と診断された。術前の画像診断で,腫瘍の発生部位,脊柱への浸潤,腫瘍と大血管・尿管の位置関係を詳細に把握することができた。手術に際しては,複数の診療科と連携し,栄養動脈塞栓術,尿管カテーテル留置,大血管との剥離を施行することで,合併症を生じることなく腫瘍摘出および腰仙椎再建が可能であった。
 
   
  急性四肢麻痺および呼吸麻痺により発症した頸髄神経鞘腫の1例
加藤 啓 清水純人 佐藤正樹 染谷幸男 山崎正志1)
国保小見川総合病院整形外科 1) 千葉大学大学院医学研究院整形外科学


  症例は27歳男性。約2年前から持続していた頸部痛が増悪し,その後急激に完全四肢麻痺,呼吸麻痺となった。MRIで頸椎部硬膜内髄外に占拠性病変が確認され,緊急手術にて摘出した。術中所見で右第4頸神経根発生の神経鞘腫の腫瘍内出血が疑われ,病理所見で確定診断された。頸髄神経鞘腫の診療に際しては,麻痺の急性発症・増悪の可能性を念頭におく必要がある。
 
   
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